HOMELANDシーズン1見終わった

これでもか、というほどアメリカの父性を巡る話だった(二回目)。アメリカをテロから守ろうとするのが、強くあろうとするあまりヒステリーを起こす女性が主人公という時点でもう示唆的であるが、帰還して英雄視され副大統領に立候補さえしようとしているブロディに恋に落ちてしまうのはやはりそのマッチョさに惹かれてしまったからだろうか。
あと主人公キャリーの偏執っぷりと並行的に描かれるのがブロディの家庭で、彼がテロリストであることを考えればあの家庭の描写はいかにもアメリカ的で彼の二面性が露わになる。一方で諜報員側のキャリーもソールも家族内でトラブルを抱えるという対立もある。
あと気になる箇所はかなりあったが、そういうアメリカ国家がどうこうという見方をしなくても狙撃計画のくだりの緊迫感は素晴らしかったし、ウォーカーをはじめとして面白い雰囲気をした役者が多かった。
近々シーズン2もリリースされるということで。

ウォーキングデッドシーズン2を見た

これでもか!という程のアメリカの「父性」を巡る物語。前のシーズンでリックが保安官の身なりで馬に乗ってアトランタを訪れるシーンがあったが、それを「開拓」のモチーフとすると、今シーズンは共同体を作り上げ、その内部での政治を問われるという筋だった。終盤共同体の父としての座をシェーンと争うことになるのだが、息子のカールに保安官の帽子を渡し、銃を握らせたリックが敗れるはずもなかった。
また父を巡る話でいえば、ハーシェルの「この国は我々移民が作った」(彼はアイルランド系)というセリフを韓国系のグレンに投げかけ、それを継承させるシーン。シーズン2がそのハーシェルからリックが共同体を奪った話なら、次のシーズンの鍵は間違いなくグレンだろう。
また噛まれてもいない人間がゾンビになってしまうこと。それまでゾンビを共同体の外的脅威として描いてきたのが、一変して自分たちの内部にその脅威への変動可能性を担ってしまうというのはまた次を楽しみにさせる展開だと思う。
全体的に類型的というか寓意があざとい気もしたが、かなり楽しめました。

海外ドラマ「ウォーキングデッド」第1シーズンを見たので感想をば

ゾンビというものを時間かけて扱えばかなり面白くなるんだな、と思った。全体通してかなりシリアス。主人公が昏睡から目覚めたら世界はゾンビだらけ、というのはもはやお約束。主人公は保安官なのだが、制服じゃないと嫌だったりわざわざ帽子を探したり、と緊急事態にも関わらず自分が「保安官」であるという体裁にこだわっているよう。そして見つけた馬に乗ってアトランタを探索するあたりは、開拓民と先住民というアメリカの歴史構造を想起させもする。ゾンビ=先住民なんてどんな構造だよw とは思ったけど。
あとシリアスなので、生と死に関するドラマはかなり綿密にやろうとしていた。埋葬するシーンとか。尊厳死の部分とか。
なかなかよかったです。

新作映画祭り

ジョー・カーナハン「ザ・グレイ」
狼ハンターのリーアム・ニーソンが狼および自然と戦う話。雪国の狼の恐ろしさ、自然の脅威などはかなり精密に描写されていた。自分の生活っぷりがクソで死のうと思ったが、いざ飛行機が墜落して孤立無援の状況になると、生きようとする。その源泉が、父のマッチョな詩篇の影響、ということらしい。確かに全体的にマッチョな話。

ルイス・ティーグネイビーシールズ
隊員とか銃弾とかは本物らしいが、話はいかにも作り話という感じで、真に迫る感じは言うほどなかった。しかしCIA局員の奪還作戦の緊張感は非常に良かった。偵察の場面が興味深い。あとたまに兵士のヘルメットから撮影された視点になるのだが、これはまんまFPSゲームの影響だろうと思われる。そっちの需要に引き摺られすぎか。

レン・ワイズマントータル・リコール
都市がやっぱり中国モチーフなのは面白かった。あとブリテンとコロニー(オーストラリア)という反対側の二つの都市が舞台なのと、重力反転という要素が面白かった。縦の移動、というシーンが多く描かれていた。どっちのボスも器として微妙なのが引っ掛かったw 偽の妻との擬似三角関係もよかった。

見たやつをまとめてえ〜

リドリー・スコットG.I.ジェーン
体罰やら坊主やらでアツい今見ると、また違った味わいでした。軍隊というのが本当に特殊な集団であるということを再確認させられる、というありきたりな感想を抱いた。

ブライアン・デ・パルマカジュアリティーズ
先に「リダクテッド」見てたので、ベトナムんときでも兵士レイプ問題やってたのか、というのがまず一つ。ショーン・ペンの悪役がなかなかはまっていた。地雷で死んだ間抜けな新兵のシーンが印象的。

ジョエル・コーエン「オー・ブラザー」
脱獄囚がいろいろあって歌で社会復帰するコミカルな話なのだが、随所でかなり仕掛けてくる。ハメられたのも歌、成功したのも歌、とにかく歌の話だった。最後水没した家から指輪を探す、ってのが初め探してた宝と絡んでいいですね。

ジョエル・コーエン「未来は今」
スケープゴートでバカを社長にしたら大当たり、みたいな。時計、というか円環というのがテーマなんでしょうね。あの会社の時計台が全ての時間を司っていて、あれが止まったら時も止まる、と。それより、会社の管使って手紙届けるシーンが面白かったです。

ゾンビ週間

ザック・スナイダードーン・オブ・ザ・デッド
みんな大好きショッピングモール立てこもり。名作たるゆえんはそこかしこに見れました。狙撃手とのやり取りも味があった。

ダニー・ボイル「28日後…」
軍人の基地に着いてからはなかなか斬新な展開。「人が殺し合ってるのは一緒」という言葉が印象的。ゾンビの体液を浴びても感染する、というのは厳しい制約。ゾンビ映画の中でもかなりゾンビが強く設定されている。

ジョージ・A・ロメロ「ナイト・オブ・リビングデッド」
一軒家立てこもり。パニック状態での心理ドラマみたいな部分もあった。脱出後の人がゾンビで遊んでいる場面は興味深い。原点にして前衛だった。ゾンビがめちゃくちゃ弱い。

見たやつをまとめて

セドリック・ヒメネス「ハッキング・アイ」
少年がカメラをハッキングしまくってテロリストを追い続ける話。映像を何度も巻き戻したりズームしたりといったシーンが印象的。窃視のフェティッシュというより、そのカメラの切り替え、ズームなどを動かすフェティッシュなのかね。
ただ最後少年の窃視の目的が若い正義感だと分かって、ちょっとがっかりした。映像をコラージュして悪趣味なMAD作ったのもちょっと微妙。でもまあそこは良し悪しか。

フランシス・フォード・コッポラ「テトロ」
父殺し、兄弟殺しの話。構造自体はかなりオーソドックスだとは思うが、兄が作家であるということとか作中作とかを考えるともっと興味深いとは思うが、そこまで追いつかなかった。

トーマス・アルフレッドソン裏切りのサーカス
冷戦下のイギリス諜報部の話。かなり渋い。顔と名前が一致しなくて混乱することもあったが、カットの構図がなかなか面白くて映像だけでもあんまり退屈はしなかった。

リドリー・スコット「プロメテウス」
帝王切開のシーンがかなり印象的。グロいのはエイリアンだけじゃない的な。人が造られた意味にそんな興味あるのか、と思ったがそこは舞台が近未来なので。冒頭のムッキムキが薬飲んで死ぬシーンは何だったんだろう。あと最後のいかにもハリウッド的な特攻シーンに違和感があった。