k-takahashi's blog

個人雑記用

時砂の王

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

 小川一水の時間SF。26世紀からやってきた「メッセンジャー」は、物の怪に襲われた卑弥呼を救う。彼は時間を超えての人類の存亡をかけての戦争を戦う兵士であった。


 自分が有利になるように過去を改変しようと両勢力が兵力を送り混み合う。但し、遡及できる過去の範囲はエネルギーによって制限される、余り昔に飛ぶと全体の流れみたいなモノで修復されてしまう、そのため両勢力が干渉しあう範囲はある程度制限されるというのがSF的な設定。タイムパラドックスについては、大きなイベントがあると分岐するという解釈で、分岐先にのみ大きく依存するような存在は、その分岐が消えると消滅してしまうが、あちこちにちょっかいをだしていると大丈夫になるのだそうだ。

 この設定自体は面白いのだが、小説よりはゲーム向きの設定のような気もする。(エイリアンの設定とか自分に都合の良い未来ができるとそこから援軍が来るとかいうのも含めて)


 時間SFというのは、恋愛モノになることが多いが、本書もSF的設定を突き詰めるというよりは、そちら。ラストは少々急いだ感があるけれども、300ページ弱の長さだと思えば、ハッピーエンドだしいいんじゃないかと。卑弥呼とサヤカのキャラをもうちょっといじると、と言うと尺が伸びるし。時間SFは、複数の時代を書かねばならないが、それは分かりやすく書き上がっている。


 輸送機で地味な任務に就いているドイツ人パイロットのネタには笑った。