k-takahashi's blog

個人雑記用

ネットで人々をとりこにする40の手口

人気のネタサイト Hagexの中の人が書いた「釣り師の見破り方」の本。
釣り師とは、ウェブに創作エピソードを投稿する人達のこと。では、なぜ、その釣り師を見破らなくてはならないのか?

ひとつは自分のネットリテラシーを強くするための、ほどよい訓練になるからだ。
インターネットには数多くの「嘘」が流れている。笑って済ませられるレベルの者から、人や社会を不安にさせるデマまである。
(中略)
「嘘の情報に騙されてはダメ!」というアドバイスは誰にでもできる。大切なのは「嘘を嘘と見破る技術」を身につけることだ。釣り師が創作したエピソードを見破る訓練は、まさに情報の真贋を見抜くトレーニングに直結している。
ふたつ目は、つりを見抜くスキルを身につければ、掲示板やWebサービスに投稿された文章を、今まで以上に楽しく読むことができる。
(中略)
インターネットに投稿された、いろいろな文章も、どこがおもしろいのか、釣りじゃ無いのか、釣りだったらどうこが変なのか?と考えながら読む方が絶対的に楽しいのである。
(はじめに、より)

ということで、ネタな一冊に見えて中身は非常にまっとう。


釣り師の動機を分類(注目されたい、ストレス解消、腕試し、金銭目的)し、動機から投稿の意図を推測する。意図が分かれば扱う題材も大体きまってくる。そういう釣り師がよく使うネタ(キーワード)が掲載(No.494)されているのだが、逆に通常の場合は炎上しやすいネタだから避けた方が無難というアドバイスまでしている。ほら、ネットリテラシーっぽい話でしょ?


マクロ(全体)から見た、釣りの見抜き方の章では、釣りネタに使いやすい「対立構造」などを紹介。人の好みのパターンを意図的に使ってくるというところが分かる。ほら、メディアリテラシーの話っぽくもある。


ミクロ(部分)から見た、釣りの見抜き方の章では、文体分析(括弧や句読点、改行、表記揺れや誤用パターンなどにも触れている。また、具体的な分析方法までしっかり書いている。いちいち分析ツールも紹介していて、知らなかったものも幾つか。)や文章構成(釣り要素のカウントの仕方)などを解説している。なんか、ライティングガイドっぽい気がしません?


後半では、「嘘を見抜くネットリテラシーの活用」としてデマを見破るポイントの話題も触れている。本書に書かれている項目を列挙すると

  • 不自然な点を探す
  • フックを見つける
  • 流行している理由を考える
  • 情報の流れを追う
  • 画像の有無をチェックする
  • まず疑う癖を付ける

と当たり前の話なのだが、「釣りを見破る」というところと繋げているところが面白い。


ふざけたようなネタで実は真面目なことを書いているという点では、『ソーシャルもうえぇねん』*1に通じるところもあるなあ、と。
分量はそれほど多くないので、軽く読めるところもよいところ。


真面目な話、類似の手法でマスコミの手口の分析もできるわけです。さすがに新聞とかになると文章のプロなのでそう簡単に尻尾は掴ませません(特にミクロの部分)が、意図を考えるとか、マクロから分析するという視点とかは共通する。ネットリテラシーだけでなくメディアリテラシーの本としても読めます。


好き嫌い分かれそうな本だとは思うので、hagex氏のページの文章のノリをどう思うかで判断すると良いと思う。あのページのブログ主の文を興味深いと思う人になら、お薦め。

*1:

ソーシャルもうええねん

ソーシャルもうええねん