ランダム方式の重勝式

サッカーくじのBIGが話題になったとき、キャリーオーバーがどんどんたまって行くと期待される回収率も高くなり、ついには1.0を越えるのではないか?、などと考えていた。しかしこれが間違いであることが、稲妻NFLの下記のエントリを読んで分った。
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簡単にまとめると、BIGはランダムに買い目が選ばれるので1票が1等になる確率は常に一定でP=1/3^14である。また的中したときの配当倍率には上限があって6億円/300円=2e6倍*1である。従って1等の期待回収率の上限は、P*2e6=0.418となる。2等以下の払い戻しに全売上の10%があてられるのでそれを加えて0.518がBIGの期待回収率の上限になる、ということだ。私のように錯覚してしまう人も多いだろう。

今度始まる競輪の重勝式のランダムに買い目が選ばれる方式は、このBIGとよく似ている。ここではその期待回収率を詳しく計算してみる。

ランダム方式の重勝式とは

現在、ランダム方式の重勝式として、平塚のチャリLOTOと立川のBIGDREAMがアナウンスされている。詳しくは公式サイトを見られたい。競輪分析所に情報が良くまとまっている。特徴を並べると、

  • 買い目はランダムに選ばれる
  • キャリーオーバーあり
  • 配当額に上限がある
  • 控除率は25%
  • BIGと違って2等以下が無い。

はっきり公表されていないが、配当を決める方法は大体以下の通りと思われる。

  • 前回までのキャリーオーバーがvc票分であるとする。
  • 当発売の売上がv票のとき、まず0.25*vが控除される。
  • 的中票がn票あるとすると、配当倍率rはr=(0.75*v+vc)/nとなる。
  • ただし、配当倍率上限Rよりrが大きい場合、配当倍率はRとなり払い戻しされなかった分(0.75*v+vc-R*n)は次回のキャリーオーバーとなる。
  • また、n=0なら当発売は払い戻しが無く、0.75*v+vcが次回のキャリーオーバーとなる。

期待回収率の上限

平塚、立川での期待回収率の上限は、

的中確率 P 配当倍率上限 R 期待回収率上限 P*R
平塚 1/9^7 = 2.09e-7 12億円/200円 = 6e6倍 1.25
立川 1/((9*8/2)^4) = 5.95e-7 12億円/200円 = 6e6倍 3.57

となり、BIGと違って期待回収率が1.0を上回る可能性がある。競輪の場合別途税金がかかるので平塚は実質的に1.0に達っしないだろうが、それでも高い値である。ただし、これはあくまで理論上の上限であって実際の状況でどうなるかはさらに検討を要する。

期待回収率の計算式

キャリーオーバーがvc票分あって売上がv票のときの期待される回収率を求める。的中票が何票あるかによって場合分けして考える。i票が的中するとは、確率Pの試行をv回行いi回成功することだから、確率pの試行をn回行なってk回成功する二項分布の分布関数をdbinom(k, n, p)とすると、的中票がi票となる確率は、dbinom(i, v, P)となる。また、的中票がi票のとき、的中する確率はi/vであり、配当倍率はr=(0.75*v+vc)/iである。ただし、配当倍率には上限があるので、r>Rの場合はr=Rとなる。以上より、期待回収率は、

E(v, vc) = Σi=1~∞ [ dbinom(i, v, P) * i/v * min((0.75 * v + vc)/i, R) ]

となる。ただし、min()は引数のうち最小のものを返す関数とする。

上では同着があった場合を考慮していない。しかし同着は稀なので大きな影響は無いだろう。手元の集計で2005-2007年のデータで1着同着になったレースの割合はp=0.357%である。これより例えば7個レースに1つも同着が無い確率は(1-p)^7=97.5%になる。

売上げ-期待回収率の関係

求めたE(v, vc)を使い、平塚の条件で売上と期待回収率の関係をキャリーオーバー別にプロットすると下図になる。

まずキャリーオーバー無しの場合をみる。売上が少ないときは、1つも当たらないすなわちキャリーオーバーとなる確率が高く、回収率は低い。売上が多くなるに従って0.75に近付いて行く。キャリーオーバーがあるとその額に従って上方にシフトして行く。曲線に微妙に凹凸があるのは配当に上限があることの影響である。キャリーオーバーの額によっては、1.0は無理にしても0.75を上回る可能性がある。

次に立川をプロットする。

立川は的中確率が比較的高いのでキャリーオーバーがたまりにくいが、一旦たまると回収率の上昇が大きい。キャリーオーバーが4億円位になると回収率が1.0を上回ることが現実的に可能である。4億円/0.75=5.33億円売れて的中が無い確率は、(1-P)^(4e8/0.75/200)=0.204であるから、このくらいのキャリーオーバーが生じることは普通にある。

コメント

期待回収率が1.0を越える状態が実際に出現すれば画期的だ。しかし、(キャリーオーバー+売上げ)が小さいときはかなり悲惨な回収率であり、キャリーオーバーがある程度たまるまで非常に時間がかかるだろう。発売後の経緯を興味を持って見て行きたい。

*1:2e6 = 2*10^6、すなわち「2掛ける10の6乗」を表す