PEALOUT@下北沢Que



 PEALOUTのライヴを見るのは5年ぶりぐらいだろうか。この間はアルバムも聴いていなかったので、今の彼らがどういうことをやっているのかは全く分からないまま足を運んだ。別に嫌いになったということはなく、単に聴く機会が無いまま気が付いたら5年が過ぎていたのだが、「Roof Top」だか「Juice」だかのフリーマガジンに載っていたインタビューを読んで、今も充実した活動を続けていることを知り、久しぶりに見たくなったのだ。
 前日のShelterに続いて下北2daysの2日目だったそうで、休日ということもあり、超満員。客は20代半ば〜後半ぐらいが中心で、大ブレイクこそしないものの、熱心なファンに支持されていることを伺わせた。
 ステージに現れた3人は、この数年の変化が風貌には出ていない様子だったが、音を出した途端に成長した姿が露になった。ピアノを中心にした編成には変わりないが、演奏は以前よりずっと逞しく、骨太になっていた。わずか3人でギターがいないというロックバンドとしては変則的なスタイルにも関わらず、ギターレスとは思えない音の厚みがあり、テンポの速い曲を中心に畳み掛ける。3人中2人が座って演奏するために、普通なら視覚的に退屈しそうなものだが、ベースの岡崎がステージ上を飛び回ることでそれも回避。確かな演奏力と場数の違いが分かるステージ運びで、最初から最後まで全くだれることなく突っ走った。ピアノとヴォーカルの近藤の、やや鼻にかかった声と独自のこぶし回しが以前は少々苦手だったのだが、私の好みに近い方向へ変わったようで、この日は気にならないどころか、実に魅力的に感じられた。そういえば近藤君はこの日ギターを弾かなかった。最近は弾かないのだろうか。中途半端に編成を変えるよりは、ピアノトリオで通した方が潔いような気がするので、この路線で正解だと私は思う。
 演奏のタイトさは目を見張るほど素晴らしかったことを強調しておきたい。大半の曲は知らないものだったとはいえ、関係なく楽しめた。途中Zoobombsのパーカッショニストのピロをゲストに交えて、ルースターズの「ニュールンベルグでささやいて」をやるなど、「東京では12月までライヴが無いので…」と断っていた通り、この日のライヴに懸けるメンバーの意気込みが伝わってきた。1時間半ほどの本編終了後、アンコールでは「もうやる曲が無いから」と言って「Tequila!(Dr.Feelgood)〜Police On My Back(Clash)〜I Fought The Law(Clash)」のメドレー。さらに客電が付いた後もアンコールが止まないので、2度目のアンコールで「ラインを越えて(ブルーハーツ)」まで披露。
 武道館を満員にするようなバンドではないものの、デビューから10年を迎えて音楽的に充実した活動を続けている彼らの真骨頂を見せたようなライヴだった。下北沢界隈では中堅〜ベテランになりつつある現在、この調子で続けていけば鮎川さんとこのポジションも待っていそうだ。「とってもいかしたエモバンド」というオヤジギャグまがいのフレーズを思いついたことはここだけの内緒である。