生涯のベスト10入り確実



Children Of Nuggets: Original Artyfacts From The Second Psychedelic Era 1976-1995
 旧聞に属する話題で申し訳ない。私は知らなかったもので…。米ライノから、ナゲッツ箱シリーズの第3弾にあたる『Children Of Nuggets: Original Artyfacts From The Second Psychedelic Era 1976-1995』が9月27日に発売になっていた。
 タイトル通りナゲッツの影響下にあるバンドの1976〜95年までの音源をコンパイルした4枚組のセットである。リンク先にあるトラックリストをチェックして、私は軽い目眩を覚えた。オリジナルのナゲッツはもちろん、既発の2つのボックスセットに収録されたのは60年代の音源が中心で、世代的に後追いで聴いた曲ばかりであった。しかるに今回のボックスに収録されているのはリアルタイムで聴いていた音源がかなり多く、特にペイズリー・アンダーグラウンド・シーンに属したバンドが数多く収録されていることに感激した。
 念のため解説しておくと、ペイズリー・アンダーグラウンドというのは1982〜85年ぐらいにロサンジェルスを中心に活動していたインディー・バンドによって形成されていたシーンのことで、The Dream Syndicate、The Rain Parade、The Long Ryders、Green On Red、The Three O' Clockなどがその主要なバンドである。それぞれの音楽的傾向は異なるものの、60年代のロックの強い影響下にあり、当時既に死に絶えていたサイケデリックを標榜していた点で共通していたことから、サイケの象徴的模様であるペイズリーの名で呼ばれるようになった。このシーンに属していたバンドで最も商業的に成功したのがBangles。当時飛ぶ鳥を落としていたプリンスもこのシーンには興味を持っていたらしく、Banglesに曲を提供したり、Three O' Clockを自分のレーベルに招き入れたり、また自らサイケ・ポップのアルバム『Around The World』を作ったりした。
 この辺の話になると世代的特権を発揮して、いくらでも続けられるので早めに止めておくが、とにかく不毛の80年代(って最近は言わなくなったなぁ)にあって数少ないエキサイティングな動きだったことは確かである。Rain Paradeのファーストなんて、生涯のベスト10アルバムに入れてもいい。
 「ナゲッツの子供たち」というタイトルのコンピレーションならペイズリー・アンダーグラウンド周辺のバンドが網羅されるのは当然のことではあるが、実際のところ今ではこれらのバンドの評価は著しく低いので、これを切っ掛けに再評価の機運が高まれば嬉しい。選曲はなかなかイカシていて、前述のバンドの代表曲に加え、Banglesの前身のThe Bangs、Three O' Clockの前身のSalvation Army、Long Rydersの前身(?)のThe Unclaimedの音源まで入っている。
 タイトルに「1976-1995」とあるので、ペイズリー・アンダーグラウンドとは関係のないバンドも無論多数収録されている。The Fleshtones、The Cramps、The Last、The Pandoras、The Crawdaddys、The Mummies、The Cynics、Tell-Tale Heartsらガレージ・パンク勢や、The Nerves、The Barracudas、The Spongetones、The dB'sなどのパワー・ポップ勢など、アメリカのバンドは概ね充実している。
 一方イギリスのバンドはやや歯抜け状で、中途半端な印象も。The Dukes Of Stratosphear、The Soft Boys、The Prisonersなどは主旨を考えると妥当な選出だが、点在している感じ。Julian Copeを入れるならTeardrop Explodesを優先すべきだろうとか、Inspiral Carpetsを入れるならPale SaintsやCharlatansは?とか、そういえばMighty Lemon DropsもIcicle WorksもSoup Dragonsも無ければ、4AD勢も無視か?と不満が次々に出てくる。
 オーストラリアからThe Hoodoo Gurus、DMZ、Lyres、The Churchらが収録されているのも、申し訳程度という気がする。
 アメリカのバンドにしてもSilosとかGiant SandとかNaked PrayとかThin White RopeとかTrue WestとかLoud Familyとか、ああ、そうだFeeliesも無いぞ!と、漏れている「Children Of Nuggets」は沢山あるのだから、アメリカのバンドだけでまとめてもよかったのではないかという気もする。しかしこの辺の固有名詞はポンポン出てくるな。最近のバンドはちっとも名前を覚えられないのに。
 バンドや曲のセレクションに口を挟むと収拾が付かなくなるので、このくらいにしておこう。100%満足できるボックスセットなどあるはずもない。ひとつ確実に言えるのは、私は絶対買わねばならないボックスだということだ。今日本のアマゾンでは8,504円で買えるようだ。また20枚ほどCDを売るか〜。