東京物語の精神はそのままに

先日21日、山田洋次が演出を手掛けた劇団新派の『東京物語』を三越劇場にて鑑賞。
舞台設定は足立区から葛飾区金町へ、尾道のシーンも熱海のシーンもなく、ずっと長男の家で繰り広げられる。全体の流れや台詞は大体同じだが、紀子が石巻出身になっていたり、最終的にとみが亡くなるのは長男宅だったり、末っ子が京子ではなく敬三になっていたり、昌二と紀子とのエピソードが追加されていたり。尾道の両親が上京し、長男家族と長女夫婦と紀子が食卓を囲むシーンを見ていると、やはり車一家を思い出してしまう。
今回の東北大震災を彷彿とさせる台詞や設定も追加されていた。江戸川が氾濫した話や、紀子が石巻出身だと言う事など。おそらく震災後書き加えられたのだろう。

全体的に山田洋次東京物語への強いリスペクトを感じた。
そして、小ネタの数々。

たとえば。
平田医院に置いてあったうちわ、おそらく映画内でも使われていたであろう高峰秀子が書いてあるものではなかろうか?
そして、紀子のアパートで食べたどんぶりは親子丼か他人丼かカツ丼か、なんて論争(?)があったが、うな重になっていたり。

山田洋次東京物語の真髄をそのままそっくり舞台で表したかったのだと思った。彼なりの手法で。
普段演劇なぞまったく見ないのだが、鑑賞できてとても良かった。