第3話 三者三様 (18) [△ ▽]

「僕には使い魔はいないんです、ごめんなさい」
「謝らなくてもいいけど……」
 ジャージは腕を組んで、考える、思い出す。
「……? どうされましたか?」
「……えっと……」
 少し言いよどむジャージ。
「訊いていいのかな……」
 思案の末、意を決して、ジャージは尋ねる。
「あんたさぁ、向こうでなんか、その……恨みとか買ってるの?」
「え?」
「ほらさ、こっちに来るのに一人だったり、ネゴなかったり、お金もなかったっていうじゃない、だから、ちょっと気になって……そういうの大丈夫なの?」
 にっこり笑って。
「恨まれない為政者はいませんよ」
「あ……」
 目を伏せるシーバリウ。口元には笑顔。どこか諦めた笑顔。
「ジャージさんの思っている通りです。本来であれば……私の祖母の時のように、こちらに逗留先を用意するなどの助力があったはずなのですが……」
「それをすべき人が、それをしなかった……サボタージュってわけね……」
 シーバリウは目を細める。ルイン殿は確かフィオ派だったはず、ならこの仕打ちは当然かもしない…………そうされるだけのことを、僕はしたのだから。
「でも」
 僕は王子になると決めた。
 だからそれを、苦痛と感じてはいけない。
 感じては、いけない。
 だから。
 にっこりと笑って。
「僕は、大丈夫ですから」
「――っ、」
「それに、皆さんお優しいですから、私は本当に助かったんですよ?」
 と、付け加えることも忘れない。
 優しい笑顔で。
 壊れそうなほど、とジャージが感じた笑みで。
「っ…………………………」
 な……。
 何言ってんのよ!
 何笑ってんのよ!!
 お人好しにも程があるわよ!
 嫌なら嫌って言いなさいよ!
 もっとちゃんと怒んなさいよ!!
 なんで怒んないのよ!
 なんで笑ってんのよ!
 なんで、なんで、なんで、
「な、なんかちょっと照れちゃうわね、あはははは……」
 ……なんでそんなことしか言えないのよ、私は……。