第10話 HACの街 (5) [△ ▽]

「なんで継ながんないのよ〜」
 紫恋の携帯には「この区域では使用不可能です」と表示されていた。
「日本語変だしっ!」
 ぱちんと音を立てて閉じ、バッグにしまう。
「僕のも駄目みたいです」
 シーバリウも携帯端末をポケットにしまい、溜息をつく。
「どうしましょう、一応パンフレットありますからそれでだいたいの場所は分かりますけど」
「私はとりあえずこの辺回ってみてから、に一票」
「うーん」
 といいつつまわりを見れば、様々な露天に目を奪われる。
「はい二票。行こ!」
「あ、ちょっと紫恋さん!」
 紫恋に手を引かれ、人混みの中をシーバリウが連れて行かれる。
「でも……」
 その顔には笑み。
 道端に並ぶ物は、どれもが不思議なものだった。
 携帯付きトースター。
 全身が金色の機械式セクサロイド
 魔神が現れるという稀法石。
 「ワン」と吼える猫。
 ビニールシートに敷かれた13本の足。
「うめはちょっと苦手そうね……」
 いなくて正解だと、紫恋は思う。
「王子は……大丈夫そうね」
「はい?」
 「心臓が透けて見える手乗り文鳥」を実際に手に乗せるシーバリウは、少年のように感心しているだけだった。
「科学の最先端はここまで来ているんですね」
「そうなのかなぁ、私はあんまりそう思わないんだけど。APみたいな生き物の技術は進んでるんだろうけど、思ったよりロボット関係があまり進展してないかなぁ……」
「先ほどのロボットはすごそうでしたけど」
「あれがなんだか分かってないみたいね……」
「?」
 ちょっと顔を赤らめる紫恋は、手頃なターゲットを見つける。
「ねー王子、なんかプレゼントして欲しいなー、みんなにはないしょで」
「え?」
 色目を使いつつ、手を引いて、宝石店へと誘導する。
 ……なんだか、デートしてるみたい。
「うーん、どうしましょ……え」
「? !っ」
 それを、紫恋も感じていた。