第12話 たったひとつの確かな理由 (8) [△ ▽]

「結局、クネリ界ってどういうところなの?」
 広々とした白い家、その中央にある木の椅子とテーブルで、3人は束の間くつろぎ、相談する。
「いえ、僕もよく知らないのですが……」
「有名じゃないの?」
『聞かなかった? クネリ界って、137番っていう番号が付いてるのよ』
「……ってことは、あんな異世界がいっぱいあるっていうこと?」
「はい、千とも万とも言われています。創主様を初めとして、古くからおられる高名な魔導師様や、クネリ界を作られたフーディン殿のような魔族の方々が無数の異世界を作られたそうです。そのほとんどはあることが分かっているだけで、実際に入ることはできないのですが……」
「そういういっぱいある中のひとつだから、ここがどんなとこなのか分かんないってわけね」
『でも、フーディンって魔族は有名なの?』
「彼の地では一国の王です。僕の国からはだいぶ遠いため訪れたことはないのですが、安定した国という話ですし、子孫の最も多い魔族だと聞いています」
「じゃあ、石人もその子孫の一人なの?」
「え? …………」
 シーバリウは考え込む。
「……あれは魔族ではないでしょう、芯だけの状態だった時も、そのような感じは受けませんでした。兵器、という方が正しいと思います」
「でもうめはあれに乗っ取られたんでしょ!?」
『影響は受けたみたいだけど、ちょっと違う気がする。行く直前に石人の芯がうめの中に取り込まれたのは確かなんだけど』
「取り込まれたんじゃなくて呼び寄せてたんだって。ほら、ワース蹴ってたでしょ、あの時もう乗っ取られてたんだから」
「そうなると、ますます分かりません……石人ではない、まったく別の人格が乗り移ったのでしょうか。それとも……」
「……あーっ、もう行こ!!」
 と、紫恋は音を上げて立ち上がる。
『……どうする?』
「確かに、今の僕たちには情報が足りなさすぎます。それであれば、なんとかうめさんを探し出すのが先かもしれません」
『出たとこ勝負ってことね、ま、仕方ないか』
 ジャージも立ち上がる。
 と。
「? 紫恋さん?」
「え? あ、なんでもない」
 笑みを盗み見られて、紫恋は急いで家を出る。
 ……うめ、大丈夫だよ。あんたはこんだけ愛されてるんだから。