足利のイチロー・岡田幸文

千葉ロッテマリーンズ岡田幸文作新学院高―日大中退―全足利クラブ)という選手がいる。
僕のひいきの選手のひとり。ロッテ浦和球場に通う熱心なマリーンズファンならもうおなじみだろう。


彼を初めて見たのは、2008年春の足利市長杯。富士重工相手で、途中まで2 - 7でリードされていたのを、3ラン、タイムリー、そして走者一掃のランニングホームランで一挙8点を取り逆転したゲーム(その後結局サヨナラ負けをしてしまうのだが)。その時にランニングホームランを打ったのが、当時主将だった彼だ。
その時のことをよく覚えている。チームが守備につく時、必ず一番先にダッシュ。走り方からその後のキャッチボールまで、弾むような感じが目についた。
「華がある」一言で言うとそうだ。
「足利のイチローかもしれない」


そういう華というのは子供にはわかるのだろうか。僕のそばに親子連れがいて、小さい子が父親に向かって「あー、岡田がいるよー、ほら」と指をさしている。これはちょっと驚いた。前にも書いたが、全足利はプロ野球チームではない。もちろん岡田もプロではない。なのに小さい子供が名前を覚えている。
この大会、優勝したのがホンダだったのだが、「クラブチームの外野手に足が速くてセンスがあるのがいる」と選手が話題にしていたとの記事を新聞で見た。


その後も彼を何度も見たが、驚かされるのは守備範囲の広さだ。「これは抜けたな」という当たりを、いつのまにかグラブに収めて危機を救ってしまう場面を本当に何度も見た。打撃は今よりも長打が多かった気がする。
「クラブチームの選手にしておくのはもったいないな」とは思いつつ、プロのスカウトがクラブチームまで見てくれているとは思わなかったので、千葉ロッテが育成で指名してくれたのは本当に嬉しかった。
作新学院卒業後、日大へ進むのだがケガで中退し、野球をやめようと思っていたところを全足利に誘われ、4年かけてドラフトにかかるまでになってみせた、そういう過程がいい。彼にかぎらず、独立リーグ上がりで育成といったような非エリートコースの選手に目がいってしまう。


昨年は後半にかけて少しづつ2軍公式戦に途中出場するようになったが、今年はほぼ開幕からレギュラーである。安打数、出場数、盗塁数でリーグトップクラスを維持している。1軍には話題のルーキー・荻野貴司関西学院大トヨタ自動車)がいてなかなか昇格も厳しいとは思うが、状況に腐らずがんばってほしい。いつチャンスがあるかわからないし、他のチームの目だってちゃんと見ていると思うからだ。