芳賀路の旅で野球を見る@栃木県益子町


クラブ選手権が終わってしまい、クラブチームマニアにとって?残る楽しみは10月の関東大会だけになった。
だが今年から、関東大会への栃木予選というのが始まり、日程を見ると「益子」と書いてある。益子町は栃木県の東の端っこで、たぶん社会人の公式戦には初めて使うんじゃなかろうか。
栃木の社会人はいつも鹿沼か足利ばかりで、県内予選には普段は行かないのだけれど、益子と言えばSLの走っている真岡鉄道の沿線。試合時間を見てみたら、SLの走る時間帯とほぼピッタリ。これは行かないわけにはいかないじゃないか。というわけで、今回は旅のついでに野球も見てしまおうと考えた。
真岡鉄道のある下館に行くには、JRが出してる休日おでかけパスが良い。鈍行ならパスに記載されてる路線は乗り放題。その中には足利も下館も入っている。新幹線やグリーン車に乗りたければ追加で券を買えば乗ることが出来る。
水戸線の下館に降りると既にホームには昭和8年製のC12が煙を吐いていた。車内は6割くらいの入りだったかな。

この日は栃木県芳賀地区の観光キャンペーンをやっていたようで、沿線のパンフといっしょに、現地産の梨を一個プレゼントしてくれた。終点の茂木駅では梨の試食会や即売会もやっていたらしい。僕は手前で降りてしまうので行くことはできない。ちなみに、この梨は非常に甘く水分が多くて、うまかった。

途中の真岡駅のホームに降りると、階段から謎のゆるキャラが登場。真岡市のコットベリーというらしい。真岡市っていちご生産高日本一なのか。知らなかった。
この真岡線は途中に山も谷もなく、トンネルや鉄橋もなく、ひたすら直線の田園地帯を行くので、沿線の表情という面ではちょっと物足りないかもしれないが、それがかえって昔ふつうにSLが走っていたローカル線を感じさせていて、他の観光SLと違って気軽に乗る気にさせている。
* * * * *

SLは益子のひとつ先の七井に停まり、僕はここで降りる。降りたのは僕だけ。駅前にはなんにもない。
ここから益子町北公園までは県道やら細い道やらを歩くのみ。けっこう暑い。ちなみに、途中には梨・葡萄の直売所がある。キロ単位で売ってたので、重くて買えなかった。

僕の足で25分ほど歩いて、公園が見えてきた。照明塔が見えるが、野球場の全体像がはっきりしない。ここは掘り下げ式になっていて、球場じたいの建物というのがない。屋根こそあるが、球場の入り口らしきもののは三塁側の土手上にフェンスで囲まれた入り口があるだけだ。球場はそこそこ新しく、両翼99m、中堅122mでスタンドはネット裏に少しと両翼ベンチ上に芝生席がある。ただ、外から見えやすいので有料試合はムリだろう。
着いたのはまだ2回の表。「第1回栃木県秋季大会兼関東連盟クラブ選手権栃木県予選」という長い名前の大会で、全足利と、今回初めて見るガッツ全栃木野球クラブの対戦。全栃木には見てみたかった投手が二人いる。

そのうちの1人、物井謙太(白鴎大中退)は以前ビッグメンバーズクラブというクラブにいて、いつのまにか全栃木に移籍していた(ビッグメンバーズクラブは活動休止状態らしい)。MAX148kmを出すという噂で以前巨人の入団テストを受けたと聞いているが、この日先発をつとめた序盤を見ているかぎり、やや予想外れだった。もっと直球で押すのかなと思ったが変化球が多いよう。
全足利が1回に1点先制している。4回には平凡なレフトフライを全栃木のレフトが見失い2塁に進めると、服部智治(城西大)が右中間に落とし2-0とリードを広げる。

バックスクリーンは手動のものだが、選手表示がいっさいない。ただアナウンスはきちんとある。
観客は50人いるかいないかくらい。遠征してきてる人もいたが、「歩いてちょっとのところ」に住んでるというおじさんもいた。「足利の人は熱狂的だからねぇ」とはそのおじさんの弁。

5回から、僕が見てみたかったもう1人、田崎史明(白鴎大)が登板する。しかしランナーを2塁に進められ、吉田真史に1、2塁間を破られて3点目を取られる。
ただ点を取られたのはこの回だけで、見た目よりストレートが伸びるのかフライアウトが多い。普通にいいピッチャーだったと思う。
投手がいいといえば足利のほうはもっと良くて、ドームで投げた3投手は皆好調で、ほとんどヒットを打たれていなかった。記録を見たら3塁を踏ませてなかった。

全栃木は球に目が慣れてないような感じで、バットが振れてない。投手が良かったので、もう少し打線が頑張れば接戦に持ち込めたと思う。
この球場は芝生席ものんびりしてて良いし、少し遠いが駅から歩いて行けるので、また来てみたくなる球場だった。試合の終わった2時ごろに球場を後にする。
* * * * *
七井駅に着いて10分くらいで帰りのディーゼルカーが来た。陶器の町・益子に寄りたいところだが、時間がないのと、いまのところ必要な陶器もないので寄ってない。でもこの地域に行くなら、やはりSLと益子はセットで訪れたい。

続いて降りたのが真岡駅。ここには今年4月に「SLキューロク館」というSLの展示施設がオープンし、9600形という貨物機が保存されている。

週末は1日3回、圧縮空気を使って実際に運転を披露している。わずか100m足らずだが、動く9600は他に記憶がないので貴重だと思う。
他にも国鉄時代の気動車や貨物車、木床が懐かしい客車なんかがあったりして、マニアじゃなくてもお子さん連れで楽しめる駅になっている。

3時半くらいには上りのSLがやってきた。発車間近になるとどこからか見物人がたくさんやってくる。これはSLが走るところならどこでも共通の光景だ。復活してからかなり年月がたつが、人気は全く衰えない。


旅をすることと野球を見ること、一見関係なさそうなことでも、うまく組み合わせることができれば思い出深いものになるし、それに効率が良い。よく日程を探せば観光地の近くや行く途中で野球をやっていることがある。