Hatena::ブログ(Diary)

株本感想文

2016-12-01

マーケットで勝ち続けるための発想術 デイトレード

トレーダー教育を行うプリスティーン・キャピタル・マネジメント社のオリバー・ペレスとグレッグ・ガブラの2人によって書かれたものを、林康史・藤野隆太両氏によって訳された本です。

英語で書かれている原著では二章建て、「(デイ)トレードに対する心構え」「トレードの手法」ですが、日本語訳されているものは前半部分「トレードに対する心構え」のみです。
タイトルは「デイトレード」ですが、投資をしていくうえで重要なメンタル管理・心の持ち方が書かれており、デイトレードのみでなく様々な時間軸(スイング・中長期など)で取引をする人にとっても役に立つ一冊となるでしょう。むしろデイトレードについて書かれた箇所の方が少ないかもしれません。

株式投資に関する本でよく見られるような心理面についての記述が多く、トレードのみで活かせる考え方だけでなく、自分の日々の生活を改善していけるようなことも下枯れています。自己啓発書のような一節もあり、株式投資と心理・メンタルの関連性を強く意識することが出来るようになるでしょう。


まず第1章「トレーディングの勝者への誘い」では短期トレードを推奨するとともに、株式投資の基礎について述べられています。
第2?4章についても基本的なことが書かれていますが、これを読んで分かったつもりになっても、実際に出来るようになるには訓練を要するでしょう。

損切りの大切さ、日々の自己投資を惜しまないといった株式投資をしている人なら何度も読んだ言葉が書かれていますが、分かりやすく書かれているため、
自分のこれまでの取引姿勢を見直す章であると言えます。

第5?8章は「トレーディングで犯すべきでない7つの大罪」「成功するための12の法則」「すべてのトレーダーが知るべき15の掟」「究極のトレーダーになる10の教訓
」という章建てになっており、箇条書きで意識すべきポイントを学ぶことが出来ます。

本書を読んだあとにも見返しやすく、また思い出しやすい書かれ方で株式投資への考え方が書かれています。

株式投資の基礎について書かれた本

デイトレード」と題された本書ですが、デイトレードについて書かれているのは第1章くらいであり、他は全て株式投資の基礎について書かれた本といって差し支えないでしょう。
また、投資についてのことのみならず、自らの生活・日々の意識を改善するための考え方も多く書かれており、自己啓発書のような一面もあるかもしれません。

箇条書きのような方式で書かれており、大事な考え方が多く列挙されているため、悪く言えば一貫性を感じられないかもしれませんが、文章は非常に読みやすく、何度も読み返す・何度もアウトプットし続けることで人生を変えるような一冊になると言っても過言ではありません。

株式投資におけるスタンスは人によって変わるものですが、本書ではそれを矯正し、「勝つトレーダーになるにはどうしたらよいか」を適切に導いてくれています。

取引で大事とされる「利益確定と損切り」については本書の至る部分で書かれており、それに関わる心理、それをどうやって向上させるか、ということを何度も意識付けてくれます。

私もこの本を読むまで「利益確定と損切り」「トレードに対する姿勢・心の持ち方」については曖昧なものしか持っていませんでしたが、本書を読むことによって曖昧だった部分が言語化でき、姿勢が明らかに変わったように思えます。

人間の本能では「損切りをなかなかすることができず、利益確定を早く行いすぎてしまう」という一面があります。

本能というのは人間の基本行動に深く結びつきなかなか変えられないもので、そのため株式投資では負ける人の方が多いという側面がありますが、本書を読むことによって「勝ち続ける側」に回るための考え方を得ることが出来るでしょう。

先にも書いたとおりデイトレードについての手法については書かれておらず、テクニカル・ファンダメンタルズの具体的な手法についても殆ど記述はないため、
「具体的な勝ち方やエントリーポイント(どこで買うか)」をとっとと知りたい、という方には向いてない一冊かもしれません。

が、「負け続けないトレードをする」「長期的な視点で勝ち続ける」ために必要なことを教えてくれる本著であり、この内容を全て理解し「実際に使える」ようになったなら、
「勝ち方やエントリーポイント」以上のものを知らぬ間に身につけているでしょう。

株式投資の基礎を学べます

株式投資の基礎について書かれた本であり、初心者が読んでも違和感なく読み通せる本であると思います。
投資に長い間関わってきた人であっても、自らの取引姿勢を見直すためのいい一冊になるでしょう。

ただ大事なことをポンポンポンとあまり関連性なく並べまくっているような印象もあるので、初心者の方はこれを読むまえに他の入門書を読んだ方が腑に落ちやすいかと思います。

この本を読んで分かったつもり・分かっただけで終わるだけでなく、「これを読んだ上でどうするべきか」という次の一歩を考え、アウトプットしていくことで初めて活きる本です。

「テクニカルを読むのは得意なので、投資に対する心理面での改善を図りたい」「勝つために投資の場面だけでなく日常でどのような意識を持てばいいか分からない」ということを教えてくれる箇所も多く、誰が読んでも損しない内容であると言えます。

日本語訳版は英語版の原著にあった「取引手法」については省かれているようですが、気になる方は原著も読んでみるとよいでしょう。



お金持ちに雇われているトレーダーですが質問ありますか? : 暇人\(^o^)/速報 - ライブドアブログ

2016-05-03

ブレイクアウト・ネーションズ 「これから来る国」はどこか? ルチル・シャルマ

本書から得られる一番大きなメリットは、主要な新興国の一つ一つについて、投資家の視点から必要となる現代史と今後の見通しに関する知識を効率よく得られるということです。シャルマ氏が長年かけて各国で足を使って獲得してきた知識や洞察を、一冊の本を読むだけで吸収できるのですから非常にありがたい本です。本書を読めば、「新興国」と一言で言ってもその内情は国によって全く違うということがよく理解できます。

例えば、かつてはブラジル、ロシア、インド、中国が、「これから高成長する新興国」とひとくくりにして「BRICs」と呼ばれていました。BRICsを投資対象とする投資信託も数多く設定されました。しかし、今となっては資源輸出国のロシアとブラジル、そして資源輸入国の中国とインドをひとまとめにしていたのは乱暴な分類だったことが明らかになっています。

同様のことは、他の数多くの新興国でも言えるのです。南米諸国を一括りにするのは間違いです。ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコ、ペルーはそれぞれ全く状況が異なります。東欧諸国でも、チェコ、ハンガリー、ポーランドは全く違います。著者はこの中では、チェコとポーラントはブレイクアウト・ネーションズ候補と考えている一方、ハンガリーには弱気です。

本書を読んで新興国各国の状況を知れば、新興国にまんべんなく投資する投資信託を買うことがいかに愚かな行為であるかが理解できます。各国を理解したうえで、自分なりの見通しを立てリスクを理解したうえで、選別的に投資をすべきです。

本書から得られるもう一つのメリットは、これは本書が意図するテーマではないかもしれませんが、著者が持つ長期的な大局観を疑似体験できるということです。本書のオリジナルである英語版は2012年に執筆されました。

その当時原油価格は1バレル100ドルあたりにあったのですが、本書はすでに、原油価格100ドルという水準は需要を減退させいずれ原油価格が下落すると指摘していました。そのうえで、資源輸出国の財政が悪化し通貨が下落、そして資源国を深刻なインフレが襲うと予言していました。

これらすべてが2014年後半以降すべて実際に起きたといことは、すでに周知のとおりです。

シャルマ氏の大局的に経済や市場を見る手法を学べます

このほかにも、中国経済の二桁成長は永続的に可能なものではなく、いずれ成長ペースは減速する、と指摘していました。さらに、成長が減速しても成長自体は続くため中国の致命傷にはならないが、中国の高成長を所与の前提としている周辺国や資源国は深刻な打撃を受ける、と予想していました。これらも今現在起きていることです。

本書では、このほかにも各国の今後について長期サイクルの観点から指摘しています。なかには実際に起きていないことを含まれますが、それらは現時点で起きていないだけで、今後起きることなのかもしれません。

実は著者は未来を予言しているつもりはないのかもしれません。単純に長期的な景気サイクル、資源価格のサイクル、クレジットのサイクルを念頭に置き、「上がったものは下がる、下がったものは上がる、上がっている(下がっている)ものが上がり続ける(下がり続ける)と考えるのはおかしい」と述べているだけのようにも見えます。しかしだとすれば、変に情報武装した未来予測よりも、長期サイクルに基づく大局的相場観の方が、予測能力が高いという事かもしれません。

シャルマ氏の大局的に経済や市場を見る手法を学ぶことは、投資家にとって非常に有益です。

経済や市場のサイクルを念頭に置く方には有益

短期的な売買を行うデイトレーダーの方には、本書は直接的には役に立たないかもしれません。買いから入るか売りから入るかの基本スタンスを決める際に、経済や市場のサイクルを念頭に置く方には参考情報として有益かもしれません。

長期的な経済や市場のサイクルを俯瞰し、トップダウンアプローチにもとづいて、中長期の視点から国別配分を決定したり、有望な国に集中投資したりするスタイルの投資家の方々には、間違いなくおすすめできる本です。

シャルマ氏の、資源価格のサイクルを強く意識するスタイルや、各国を実際に見ることでインフラの整備度合いや政府職員の腐敗の程度、バブルの気配を観察する手法は、著名投資家ジム・ロジャーズ氏と似ています。ジム・ロジャーズ氏の「冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界バイク紀行」などが好きな方は、本書も面白く読めるでしょう。

最後に、投資信託業界で新興国ファンドの企画などをされている方には、ぜひ本書を読んで、ブレイクアウト・ネーションズに投資する単一国ファンドを作っていただきたいです。

2016-04-28

フラッシュ・ボーイズ マイケル・ルイス 文芸春秋

ブラット・ピット主演で映画化された「マネー・ボール」の著書マイケルルイスが超高速取引、HFTに関して記した本になります。主人公はカナダロイヤル銀行のブラッド・カツヤマ。もともと、カナダ採用のカツヤマはニューヨークに赴任をして着任をしますが、株のトレードの最中画面から売り端、買い端が自分が注文を入れようとしたら消えてしまう現象にびっくりさせられます。

それによって大きな損失を抱えることが自分の会社員人生に大きな影響を与えることが看過できずに、この原因を究明しようとカツヤマは奮闘します。その疑問が大きな問題にぶち当たりそれが彼の会社員人生を変えていきます。

そのほか、超高速取引には欠かせない光ファイバーの敷設に関してのこと、また元投資銀行が生み出したダークプールという存在、取引所の報奨金制度に関しても詳細が記述されており超高速取引、一般的にはHFTと言われていますがその入門書にもなると思います。

著者は元ソロモンブラザーズのトップ営業マン、日本でいえば歩合営業マンであり基本的には営業マンになるので一般の方には難解な金融用語等をわかりやすく解説していると思います。この本を読めば日本および、アメリカを筆頭にこのマーケット、株式の世界では今、何が行われており、そしてそれがどういう現象なのかもよく理解できると思います。

また、自分の利益は、この超高速取引によって搾取されていることもよく理解するべきで、実際に大手ファンドマネージャーもこの事に気づいていなかったということが明らかになりました。このような超高速取引はノーリスク、ハイリターンといえば語弊がありますが、そういう取引であることを理解できると思います。

最後のあとがきに記されていることは日本の現状に関してよく記されておりこのあとがきをきちんと理解することも株式相場を理解するうえで重要なことになると思います。このあとがきを読むだけでもいい勉強になると個人的には思います。


ブラッド・カツヤマの勝てた理由がわかる

ブラッド・カツヤマがなぜ、巨大資本を相手になぜその闘争に勝つことができたか、という命題に関しては序盤に著者の思いが込められていると思います。ブラッド・カツヤマは実に質素。倹約家でありりまた慈善家でもあるエピソードが序盤にのっていると思います。

カツヤマはカナダ時代に昼食の残りや食事の残り等をホームレスに折詰にしてそれを上げるという行為をするのが常であったが、ニューヨークのホームレスにそれをあげてもあまり感謝されないということに違和感を感じたということが記されています。

この文章は私にとっては衝撃的な内容であり、また私の投資人生の中でも合致しているものだと思います。基本的には困っている人や、貧しい人には手を差し伸べることは人間として当たり前のことですが、金融の本場、ニューヨークに行くとそういう当たり前のことが非常識になるということに相当な疑問を感じることが私の投資人生の反省の部分にもなると思います。

実際に金融の現場に立つと、世間の常識が株式の世界の非常識という現象に多くぶち当たり、当初はそのことに非常に違和感を感じ抵抗を感じましたが後年になるとその優越感を感じていたことにすごく不遜であったなと感じますし、反省すると思います。この本ではウォール街の常識は世間の非常識であるということを一番の命題だろうと個人的には思います。

確かになぜ、この超高速取引がこのように広範に世間や世界に広がったのかもよく理解できますし、そしてこの超高速取引が読む前までは案外歴史の浅いものと考えていましたが、実際は1970年代にはもうそのアウトラインができておりそれを実際にどう生かすかの問題であったのか、そして近年頻繁に起こる大暴落という、テールリスクがなぜ解明されないのかの基本的な考え方が習得できたような気がします。

私には超高速取引の問題点や利点を理解する以上に人間としての道徳観の方がマーケットに投資する以上に大切なものであるということを感じました。

この超高速取引やHFTという言葉を知っていて、実は何も知らない投資家というのは日本の全国の投資家の過半になると思います。

この超高速取引、HFTが実際にどういうものになるかの根本的な理解につながる良著になると思います。たとえば証券会社で株式の気配値を2つの画面で表示すると証券会社によってはその気配が違うことが多々あります。

ですから、証券会社の画面というのは2つの同時ログインができないようになっているのだ、ということが理解でき、そしてその気配値の違いによって何が行われ、自分の住んでいる地域によって自分の取引の有利さ不利さというものが理解できると思います。実際に有利、不利がわかったとしても巻末の訳者のあとがきを読めばコロケーションによってそんなものに対抗するのは無駄としか思えないでしょう。

でも実際にはそういうことが行われているということを認識することによって、危機時に彼らが相対的に何を基準に取引を行うのかがよく考えれば理解できますので危機対応への良書ともいえると思います。

2016-04-27

ビジネス・エコノミクス 伊藤元重

「ビジネス・エコノミクス」の著者の伊藤元重氏は東京大学大学院経済学研究科教授、専門は国際経済学。政策ブレーンとして経済戦略会議 ・IT戦略会議等の委員をはじめ多くの政策提言をしている経済学者です。

著書の「ミクロ経済学」・「マクロ経済学」(日本評論社)などは多くの大学の授業で採用されているスタンダードな経済学テキストです。本書の他に、「挑戦する流通」・「デジタルな経済――世の中大変化小変化・グローバル」・「経済の本質――国境を越えるヒト・モノ・カネが経済を変える」など経済や経営のビビッドな動きをわかりやすく解説した一般向けの著書も多くあります。いわゆる”象牙の塔”にこもる経済学者ではなく積極的に現実の経済にコミットメントするタイプの経済学者です。

株式投資に関心のある人はテクニカル分析やファンダメンタル分析についてはある程度の知識があって、日々の経済情報は日本経済新聞やネット・雑誌から得ていると思います。

しかしこれらの情報はいずれも単なる事実であって、どのように解釈するかが重要になってきます。そのための経済学に立脚した基本的な考え方を習得するために本書は役に立つと思います。

今まで経済学を学んだことのない人でも投資に興味ある人なら、現実の経済・企業に即して解説されているのでわかりやすいと思います。経済学のテキストは数式だらけでチンプンカンプンという人でもていねいに読み進めば理解できるのがうれしいですね。

ただし本書で説明されているものの中には比較的新しい経済学の概念もあります。”エイジェンシーの理論”・”モラルハザード”・”逆選択”や”情報の非対称性”・”ゲーム理論”などです。言葉だけでもむずかしいですよね。

いずれも精緻な理論構築をめざすミクロ経済学と関わりの深い概念なので経済学初心者の人にはむずかしいかも知れません。

そう思われる人は、この辺を説明した第5・6章はとりあえず飛ばして読み進んでも他の部分には影響ありません。ただ最近の新聞や経済誌・投資関連書籍の中にもよく出てくる概念なので、時間のある人は本書で学ばれることをおすすめします。

というのは、新聞や経済誌でこれらの言葉が簡単に説明されたりしていますが、曖昧な説明(もっと言えば、いい加減な説明)がされていることも多いからです。

かえってわかりにくいので、信頼できる本書で学んだほうがあとが楽になると思います。


経済学を応用して株式投資

経済学を応用して株式投資している人って意外と少ないんじゃないでしょうか。

GDP・経済成長、外国為替の動向などの投資環境を理解するための一助として利用することはあっても、業界や企業の業績を予想するときにはあまり使われないですよね。決算資料などに基づくファンダメンタル分析をするのが普通だと思います。
決算日と株価の関係

しかしファンダメンタル分析では企業内部の行動は十分には理解できないと思います。経済学(あるいは経営学)ですべて理解できるとは思いませんがその手がかりを与えてくれます。

本書ではセブンイレブンとローソンの業績の差異がロナルド・コースの市場観によって説明されています。コースの市場観というのは市場と組織(企業)は必ずしも対立するものではなく、その時々の状況によっては補完的なものになりうると考えるものです。

ローソンが物流から店舗の運営まですべてを組織(自社)内で行おうとしていたのに対してセブンイレブンは組織内ですべてをしようとはせず外部の業者(いわば市場)を巻き込んで利用しました。しかもセブンイレブンがフランチャイズ化した店舗のオーナーはもともと酒販店や菓子店を営んでいた商売人が多かったのに対し、ローソンのオーナーは脱サラ組などのいわば商売の初心者が多かったそうです。著書はセブンイレブンの方が市場の力をフルに利用していたのではないかと指摘しています。

こういう見方ができると2社の業績比較などもマスコミの表面的な報道をただ鵜呑みにするといったこともなくなるんじゃないでしょうか。自分で物事を判断する基本的な枠組みや分析手段を持っているというのは大きな強みだと思います。株式投資をしている人でいろいろなことを知っている人でもたんに情報通といったレベルにとどまっている人もけっこういますよね。

著者は国際経済学者だけあって、今日のグローバル経済についても為替レートや通商政策といった重要な面に注目して解説しています。日本の様な貿易立国の国で投資に興味のある人には参考になります。


株やFXなど投資に興味にある人におすすめできる書物

とりわけ新聞の記事やテレビのニュースはちょっと表面的すぎて満足できないな、もっと合理的に説明できないのかなと思っている人に読んでもらいたいと思います。経済や経営関連の雑誌などをよく読む人で、ここ15年くらいは基本的な経済学のテキストを読んでいないという人にもおすすめです。

古い経済学の教科書では説明されていなかった新しい経済学の成果が具体例を使って平明に解説されているので、今後経済関連書籍などを読む時にも大きな手助けになると思います。

著者は日本を代表する国際経済学者なので為替レート変動などについての説明もわかりやすいと思います。

最近はFXなどに関心を持つ人も多いようですが、そういった人は国際経済に関わる部分を読んだだけでも参考になるんじゃないでしょうか。外国為替の変動は予想もつきにくいし破壊力も大きいですからね。

株式投資とは関連ありませんが、就活生にもおすすめできると思います。本書はミクロ経済学に基づいて企業行動についての合理的な説明をしているので、本書の様々な分析概念を用いて採用面接などで披露すれば「この人デキルかも」と面接官に思ってもらえる可能性も大きいんじゃないでしょうか。

ビジネス・エコノミクス

ビジネス・エコノミクス

2016-04-22

ピーター・リンチの株で勝つーアマの知恵でプロを出し抜け

米マゼラン・ファンドで、たった13年間の間に2000万円を140億ドルにするという圧倒的なパフォーマンスを遂げたファンドマネージャー、ピーターリンチ著作。
1989年に書かれた米国版を日本語で出版したものです。

株式投資における、いわゆる「ファンダメンタルズ投資」について書かれている本で、タイトルの通り「アマチュアでもプロに勝てる」という方法を紹介しています。

チャート分析を用いたテクニカル投資についての記述は少なく、いかに企業や事業の価値を見極め、投資を行っていくかが重点化されています。

プロのファンドマネージャーや機関投資家たちは投資先の企業について、一般人より遥かに多くの情報量を持って調べ上げ、パフォーマンスを残そうとしますが、そんな彼らに劣らずの成績を残すにはどうしたらいいか、ということが三章に分けられて書いてあります。

「投資を始める前に」「有望株の探し方」「長期的視野」という三章から成る本書は、「自分の身近な企業や、自分が使っている商品の製造企業に注目する」ということを一貫して主張しており、市場で話題になっているものや、プロが勧めてきた銘柄は買うべきではない、と説いています。

投資において利益を出すためにエッジ(優位性)というのは必ず必要になってきますが、著者のピーター・リンチは私たちのような個人投資家におけるエッジを「一般人の視点から見えるもの」だと言っているのだと思います。

自分の知っている分野を活かしつつ、気になる企業の業績を調べつくす。最終的には企業に電話をかける・本社を訪問するなどの行動をすることも推奨されています。

また、本書の中で注目すべき部分は株の種類を6つに分類しているところでしょう。

「低成長株」「優良株」「急成長株」「市況関連株」「業績回復株」「資産株」というソートがされていますが、これらの枠組みを意識して投資に取り組むことで、利益確定・損切りの判断が改善されると思います。

ピーター・リンチが人気企業の株でなく、自らが調査した隠れ優良銘柄を買いに入ったことで驚異的な結果を残したことから語られる実体験談。
投資の基礎についても書かれており、読んで損はしない一冊でしょう。


ファンダメンタルズ投資

前述したように、本書では徹底してファンダメンタルズ投資の視点を語っていますが、
第1章「投資を始める前に」では投資家としての基本的姿勢も学ぶことが出来ます。

また、ピーター・リンチがどのようにして13年間で2000万ドルを140億ドルにしたのか、その過程におけるストイックな姿勢は読んだ人の投資へのマインドを変えてくれるでしょう。
ニュースや新聞を見て株を買うことがある人はいても、企業に電話をかけたり、企業訪問をしたり、ということをする人は少ないと思われます。

ピーター・リンチの株式投資の実例も書かれており(アメリカ株の例ですが)、この考え方を日本市場でも活かすことによって成績を上げることは十分可能でしょう。


何と言ってもこの本の肝は「とにかく徹底的に自らで調査を行う」「自分の意見を貫く」ということに尽きます。

近年新たなテクノロジーの発見や進歩により、企業の形態は変わりつつあります。
ピーターのマインドを持ち、その中で出てくるいわゆる「テーマ株」を周りの投資家よりいち早く察知し、先回りして投資することが出来れば圧倒的なパフォーマンスを残せることも出来そうです。

この本を読むことにより「実際に調べる」という点での意識のステージが高くなり、「他人の情報を鵜呑みにしてはいけない」という自己責任のスキルが身につくと思います。

マーケットでの損や利益を何かのせいにするのはご法度ですから、何度も読み返すことで心理面での向上も見込めるでしょう。

また、ピーターは本書の中で「マーケットの先行きを知る必要はない」「短期市場の予測をすることは無駄」とも書いており、あくまでも自分のスタンスを変えないところが見てとれます。
そう言っている通り、ピーターは既に価格の上がりすぎた企業ではなく、自らの選んだ株価の上がる銘柄を買うことで、暴落相場でもしっかりと儲けを残しています。

彼の取引手法や考え方はマーケットに依存するものではなく、芯の通ったものであり、この姿勢は私たちも見習うべきでしょう。


ファンダメンタルズ投資を知りたい、という方にとっては必読の一冊だと思います。
ピーター・リンチの近親者や本人の経験に基づき、エッセイ風に書かれた本であるので、読みやすいとも思います。
何冊か株の入門書を読了したあとに読めばより効率的に内容を理解出来るでしょう。

ファンダメンダルズ投資において基本的な概念である「PER」や「PBR」についても記述されており、他の入門書を読んで「PERやPBRってどうやって使うんだ...」と疑問を持っていた方も、そのもやもやが晴れるような答えをこの本から得ることが出来ると思います。

一方、テクニカルによる投資のことはあまり書かれていないため、テクニカル派にとってはあまり役に立つことはない一冊かもしれません。

が、基本的な投資へのマインドであったり、ピーターリンチの企業を調べつくす姿勢を見ることによって、ファンダメンタルズ投資への興味を持つことは間違いないでしょう。

いずれにせよ中?長期投資を考える方であれば読めば必ず得をすると思います。

ゾーン 「勝つ」相場心理学入門

マーク・ダグラス氏によって書かれ、日本語に訳されて出版された本です。
タイトルに『「勝つ」相場心理学入門』とあるように、株式投資・オプション投資・為替取引など全ての売買において役立つ心理を教えてくれるこの一冊。

テクニカル取引・ファンダメンタルズ取引といった取引の方法や手法については殆ど書かれておらず、334ページほぼ全てに渡り相場で勝つため・生き残るためのメンタル管理術が書いてあります。
翻訳者である世良敬明氏が書いた、本書内の「はじめに」にも書かれているように、マーク・ダグラス氏の記述は抽象的で、理解しづらい部分もありますが、自分の株式投資に対する姿勢・ステージが高まっていくとともに、内容をかみくだけるようになり、血となり肉となり生きてくるでしょう。
勝つための取引に大事なものとして何度も語られているのが「信念と姿勢」「一貫性の確立」。
この2つのワードが本書全般に渡って出てきており、トレードにおいていかにこの要素が大事かを教えてくれます。

人間の心理・本能は本来トレードに向いておらず、そのため勝ちを積み上げていくためには自分の考え方を変えていく必要があります。
また、トレードに関わる自分の心理は自らの過去の体験・経験に影響されると書かれているのも印象的です。
投資の範疇を超え、自分の人生をどうやったら変えられるのか、を暗に書いている一冊であるといっても過言ではないでしょう。

自分の過去の体験から作られた想念が自らのトレードに印象することを何度も何度も強調し、それをメタして「心のシステムを再構築する」にはどうしたらいいか、ということが長きに渡って書かれています。
トレードには感情には必要なく、自らの想念をいかに排していくか。いかに確率と期待値にそった機械的トレードをすることができるか。
トレードにおいて重要な要素、「心理」「メンタルの持ち方」について自分の価値観を変えてくれる一冊であることは間違いないでしょう。


取引における心理面の考え方がわかる


先にも書いたとおり、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析などの具体的な取引手法についてはほぼ書かれていないこの『ゾーン』。
ほぼ取引における心理面の考え方について書かれています。

が、その詳しさ・多面的な視点を知ることの出来る本書は、どんなトレーダーにとっても必須の一冊になるでしょう。
行動経済学に関係した考え方も書かれており、自らの過去の経験をいかに次のトレードに活かしていくか、ということが延々と書かれています。

トレードにおいて感情を排し、負けるリスクを許容しつつも最終的に勝利する。その高みにある精神状態・「ゾーン」へ行くためへの道筋を知ることが出来るでしょう。

株式投資において大事なことは「いつ買い、いつ売るか」、これは当たり前のことですが、これが上手く出来たなら勝ち続けることも可能になるでしょう。

売買のタイミングに関わってくる「メンタル」「精神状態」について、どういう姿勢を持てばいいのか?どのように考えればいいのか?について知ることができ、焦ってジャンピングキャッチ(高値買い)をしたり、底で損切りすることが格段に減ることは間違いありません。

私もこの本を読むまでは今まで株価が下がれば落ち込み、株価が上がれば興奮し、その精神状態がトレードにも影響しなかなか勝ちを積んでいくことが出来ませんでした。
が、本書に書いてあるよな「リスクを前もって定義する(負けることを許容する)」「システム的なトレードをする」ということを意識することで、淡々と取引をすることが出来るようになりました。
投資家の中には「マーケットを知らなければ勝つことができない」と考える人もいるかとは思いますが、この『ゾーン』では「マーケットが何かを教えてくれることに期待してはならず、自分の状態を観察し、自分の特徴は何なのかを知る」ことによってトレードに勝てることを教えてくれます。
「自分を知る」ということは投資においてのみでなく、自らの日々の生活の姿勢を改善していくうえで非常に大事な概念であることは間違いないでしょう。


一貫性が大事

本書内でも「一貫性が大事」と書かれているように、この本が言いたいとしていることもずっと一貫しています。
ですが冗長・分かりにくいと思える部分もあり、投資を始めたばかりの人には理解しづらい部分もあるかもしれません。

なので投資を始めて試行錯誤したが勝つことが出来ない、取引において感情が働いてしまい勝つことが出来ない、といったトレードを始めて壁に当たった方が読むと丁度いいレベルの内容であると思います。
また、「自己を鍛える」というテーマもある本書なので、トレードに興味がない人でも役に立つでしょう。

何にせよトレードをする上で避けられない「取引と心理の関係」について、読んでおいて損はない一冊です。
かつて空売りにより大金を稼いだジェシー・リバモアも「メンタルの重要性」については重要であると強調していました。
彼のように、上がっている相場に対して逆張りをするというのは並の精神状態では出来ることではないでしょう。
「周りがやっていないことをする」というのはトレードにおいて大事な一つの要素ですが、それを身につけたい方には必読の本書であることは間違いありません。

ゾーン ? 相場心理学入門

ゾーン ? 相場心理学入門

2016-04-21

3000万円をつくる投資信託術 サラリーマンのためのインデックス投資入門

ファイナンシャルプランナーを資格を持ち、数多いの書籍などを執筆されているファイナンシャルジャーナリストの竹川美奈子さんの本です。
本の題名のとおりですが、株や投資というと、難しそう、時間をかけてじっくり勉強しないとできないものというイメージがありますが、それは誤解であり、投資にはいろんな種類があり、時間がなく、忙しいサラリーマンであっても投資でお金(3000万円)を増やすことが可能であるということが書かれています。

特定の企業の株を購入し、日々の株価の状況をリアルタイムに把握し、適切なときに売却するためには確かに日々の株価をチェックしたり、売り買いのタイミングを知るために世界経済や日本経済のことを勉強したりする必要はあると思いますが、それは株や投資を本業にしている人の話です。

そういう短期決戦の投資ではなく、時間がない人向けの投資として、投資信託が合っており、ある程度購入の仕組みを作ってしまえばリスクも分散できると説明されています。

また、基本的なこととして、投資信託とは特定の企業の株や債券を購入するのではなく、お金を預けると一定の投資基準のもと、証券会社などの投資の専門家がその投資基準に応じた株式や債券などの銘柄を選んで運用してくれるため(参考:株と投資信託の違いと投資先について)、企業業績や景気の動向がわからなくても最適な投資をすることができるということをわかりやすい言葉で書かれていますし、そもそも投資信託にはどのような種類があるのかということにも触れてくれているので、読むだけでも勉強になります。

株式だけを見ても、日本株式、先進国株式、新興国株式があり、債券を見ても、日本債券、先進国債券、新興国債券など、数多くの種類があります。

また、これを複数組み合わせることにより、世界中の国に、かつ、株式、債券に幅広く投資できるため、例えば先進国で景気が後退して株価が暴落したとしても新興国や日本の株価が上昇していたら、リスクは分散されますし、世界的に株価が暴落したとしても債券市場が安定していれば、株価暴落のリスクは軽減されるというように、時間をかけないやり方でいかにして安全にリスクを分散して投資信託をかしこく購入するかということが書かれています。


投資信託初心者であっても簡単に投資信託することができます

具体的にどうすれば時間をかけずにリスクを分散することができるのかという手法も書かれていますので、投資信託初心者であってもそのとおりにすれば簡単に投資信託をすることができます。

投資信託のポイントである、世界中への分散投資、短期決戦ではなく、時間をかけた長期運用、分配金のないものを選び複利効果を出すこと、コストの安いものを選ぶこと、毎月こつこつ投資信託を積み立てて、年1回くらいはリバランスをすることという記載が初心者の私には大変役に立ちました。


特に、なぜ投資信託を購入すべきなのか。少しの投資で世界中の株や債券に分散投資することができ、そうすることで世界中の景気変動に強い資産形成になるという理屈を教えてもらえたこと、また、長期運用を目標とし、目先の分配金はもらわず、再投資すべきという発想も大変勉強になりました。

今まで貯金しかしたことがなかった私にとって、利息ともいうべき分配金はもらわず、再投資して雪だるま式の複利効果に期待するという発想は生まれて初めてでした。
さらには簡単な仕組みをつくってしまえば、ほとんどほったらかしでよいということにも驚きました。むしろ長続きさせるためには手間だったらだめということです。

銀行の毎月の自動入金システムを使い、証券口座にお金が自動で入金される仕組みを最初に構築してしまえば、あとは勝手に毎月投資信託が購入され、こつこつ資産が形成されていくというのです。お金をためることはしんどいことという勝手な発想を持っていましたが、こんな簡単なことでよかったのかとあっけにとられました。

あとは年1回、リバランスをするのみ。このリバランスという言葉を理解することが難しかったのですが、この本のなかでは簡単な円グラフも示されており、もともとの元本の比率が時間とともに崩れたとき、売却等を行うことでもとの比率に戻すことをいうととてもわかりやすく解説してくれています。実際に私もこのとおり、実践していますし、投資信託の入門書としては最適な本だと思います。

投資信託のことがわかる

この本は、私のように投資の知識がまったくない人や興味はあるが、どのように始めたらよいのかわからない人に読んでもらいたいです。

竹川さんは数多くの金融雑誌を執筆されていることから、非常にわかりやすい文章を書かれておりますし、適切なグラフや表を上手に活用されていますので、本を読んでいるだけで勉強になります。

本を読み終える頃には、なんとなく投資信託のことがわかったような気がして、よし実際にやってみよう、本当に3000万円貯められるのではないかと思えるほど、今まで以上に興味がわいてきます。

また、具体的な手法まで記載されていますので、最初のとっかりとして何をすべきなのかがわかりやすいため、サラリーマンや主婦の方で時間があまりない方や、投資してみたいという思いをお持ちの方に是非、お勧めできる本だと思います。サラリーマンの方とかですと、通勤電車のなかとかでも簡単に読めると
思います。

また実際に投資信託を始められて、自分流の投資信託の方法を見つけている方でもこの本には基本的なことが書かれていますから、
思わぬ落とし穴があるかもしれませんので、自分の考え方に間違いはないかをチェックする意味でも読んでもらう価値はあると思います。

2016-04-19

『会社四季報』練習帳 誰も気づいていない成長株・割安株・不人気優良株を見つけ出す 秋津学

「『会社四季報』練習帳 誰も気づいていない成長株・割安株・不人気優良株を見つけ出す」(東洋経済新報社)の著書は秋津学氏。秋津氏は株チャート研究会の『積乱雲』主宰で元英国ロー・スクール客員フェロー。

「株価チャート練習帳」(東洋経済新報社)、「雲と線 私だけの株・FX教科書」(毎日新聞社)などの著書があります。


本書は会社四季報の読み方と活用の仕方をわかりやすく解説した本です。章のなかのいくつかのセクションごとに練習問題が複数あって学習参考書のような感じがあります。

練習問題は経常利益や営業利益の算出の仕方などの基本的な問題から、実際の株式銘柄の四季報欄を使ってその後の動きを読むという実践的な問題まであります。解答もていねいに解説されています。

会社四季報の記載事項のどこに注目すればよいかが問題毎に指摘されているので、使い方によっては豊富なケーススタディのデータベースとしても利用できます。それだけに漫然と読み流すというスタイルでなく、マーカーや鉛筆を手にして読むという積極的な読み方ができます。

こういうと勉強みたいで面倒くさいと感じる人もいるかも知れませんが、セクションが見開き2ページごとに完結しているので気軽にスキマ時間を使って読むこともできます。


収録内容としては、まず会社の概要の把握の仕方について説明されています。会社の沿革からライバル会社との経営力の差や含み損益を読み取り、資本系列や連結子会社からは会社の総合力を把握することの必要性が述べられています。

株価の動きについては、株価の変動要因として企業受給動向・財務体質・株式受給要因など6つをあげ、株価の循環パターンもわかりやすく説明されています。


企業業績を捉えるためには営業利益に注目し、とくに売上高営業利益率を会社の「儲け度」をあらわす指標として重要視しています。

企業財務についても基本的な経営分析指標が会社四季報のデータを使ってひと通り説明されているので、財務会計管理会計などのテキストを読むのが苦手な人には便利です。


会社四季報は手軽で便利な会社・株式情報ソース

株式投資をする時は、人それぞれによって注目するポイントが違っているでしょうし、参考とする情報ソースもそれぞれの事情によって異なっています。

しかし株式投資を楽しむ多くの人にとって会社四季報はもっとも手軽で便利な会社・株式情報ソースではないでしょうか。ですから会社四季報からどれだけ有益な情報を引き出すことができるかはたいへん重要なことだと思います。

会社四季報東洋経済新報社が発行していますが、本書も同じ東洋経済新報社発刊なので、会社四季報のオフィシャルブックというわけではないでしょうが、いちおう安心です。(けっこうこの手の本には怪しげな出版社もありますから)


本書は会社四季報の読み方の指南書ですが、わざわざ分厚い会社四季報を手元において確認しながら読む必要のないように配慮されていて図表も多くわかりやすいです。

本書一冊で完結しているので持ち運びにも便利です。説明されている数値・項目も、会社四季報の該当欄が枠で囲われていて見つけやすく表示されていてとまどうことがありません。

こういう時にあちこち視線を移すと時間がかかってしまい非効率です。細かいことですが親切な配慮だと思います。そして株式投資に必要な会計知識を得るだけなら財務会計管理会計のテキストよりも本書を使ったほうが、興味もわいて使いやすいと思います。

やはりモデルケースの数字よりも実在の会社の実際のデータで学ぶほうがリアリティがあるし、その時の株式相場の動向なども含めて説明されているので実践的だと思います。


会社の業績に株価は反応しますが、素人が会社の将来の業績を捉えるのはなかなかむずかしいことです。そのために多くの人は会社四季報を利用するわけですが、会社四季報は膨大な数の会社の株価や財務データなどをコンパクトに収録しているので、業績予想などの表現はきわめて簡潔、会社四季報独特の表現も多いですよね。

ですからその簡潔な表現から正確な情報を引き出す必要があります。本書ではそういった読み方についても言及しているので参考になります。会社四季報の前号から最新号への業績予想の修正から何を読み取ればいいかなど実践的な指摘が多いのが魅力です。


株式投資に必要とされる基本的な知識を身につけることができます

株式投資を始めて会社四季報を購入したのはいいけれど、どうやって読みこなせばいいのかわからないといった初心者におすすめします。

会社四季報自体にも凡例や読み方は書いてありますが、それを参考に読んでもなかなか読みこなせないと感じている人も多いと思います。

生真面目な人だとすべてを理解しようとして時間がかかって疲れてしまうんじゃないでしょうか。本書で読み方のポイントを押さえておけば労力や時間を無駄に使うことがなく便利です。


ある程度会社四季報を読み込んでいる人の中にも、自分の活用の仕方が正しいのか、他の人はもっと有益な情報を引き出しているんじゃないのかと疑問に思っている人もいると思います。そういう人が本書を使って自分の活用の仕方をチェックのも有効です。


簿記や会計を学習したことのない人も本書を使って株式投資に必要とされるひと通りの基本的な知識を身につけることができます。しかも知識をつけるだけでなく、株式投資の観点から考えるように配慮されているので実践的な考え方が身につきます。

参考:株を割安と判断する基本的な考え方:

2016-04-13

「勝ち組」投資家の法則8841人アンケートでわかった 日経マネー編

本書は日本を代表する人気マネー情報誌「日経マネー」が2007年2月におこなった個人投資家に対するインターネットによる大規模なアンケートの結果を元に日本の個人投資家の投資のあり方を分析・考察した本です。アンケートの有効回答者数が8,841人で、100項目以上のアンケート項目があるというかなり大規模なアンケートです。アンケート後追加取材を行い、調査のより詳細な結果を説明しています。それだけに日本の個人投資家の実態をかなりあきらかにしたものと言えます。

まず第1章ではアンケート回答者の属性についての説明がされています。年齢・世帯年収・金融資産保有額・株式投資にあてている金額や、株式投資の年リターンなどがわかりやすく円グラフで表されています。その後個人投資家を投資で儲かっている人をニコニコ投資家、損している人をトホホ投資家として、それぞれの投資に対する取り組み姿勢や考え方についての分析や考察がされています。性格・投資対象や情報源、株式投資の時に参考とする指標などの違いが解説されていますが、けっこう明確に分かれているのが参考になります。


第2章では投資で得をする人の特徴が述べられています。株式投資にあたって経済や銘柄選びの勉強に熱心で、面倒くさからずにこまめに記録をつけている姿勢が共通しているようです。


第3章では「負け組トホホ投資家脱出への6ステップ」と題して、株式投資で損をする投資家の多くに共通する投資スタンスや考え方が解説されています。本書は第3章にいちばんページを割いています。やはり多くの人が興味を持って知りたがっている情報なのだと思います。


第4章は塩漬け銘柄の対処法や、パフォーマンスの良かった投資信託、人気証券会社やネット証券会社選びで重要視するポイントなどがまとめられています。
巻末には個人投資家への主要な質問項目の結果が一覧として掲載されています。結果が実数(人数)と比率(パーセント)の両方で表示されていてわかりやすいです。


提案していることひとつひとつに説得力があります

本書は大規模なアンケートをもとにした解説書だけに、提案していることひとつひとつに説得力があります。
株式投資関連の本には、著書の個性が反映してかなり強引な主張をしている本も多いですが、本書はそういうことがなくて安心です。


第2章の「勝っている個人投資家たちが実際にやっていること」は属性・運用スタイル・考え方などのカテゴリーにわけて解説されています。短期的な儲けに走らず、長期的で安全性重視の運用スタイルを保持していることがわかります。そしてリスク回避のために分散投資を心がけ明確なポートフォリオをもっていて、株式投資の知識や運用技術を高めるための勉強が苦にならないという特徴があります。具体的な株式情報のニュースソースも新聞が多いですね。「新聞の株式・マネー面」を情報源とする人は回答者全体では14.4%ですが、勝ち組投資家(リターン30%超)平均では38%と大きな違いがあります。「新聞の経済面」ではもっと差が広がって回答者全体では10.1%、勝ち組投資家平均では38%となって明確な違いが印象的です。やはり信頼できる情報源からこまめに情報を収集することが大切だということがわかります。


第3章では負け組の典型的な負けパターンが実例を元に説明されています。安易に儲けようとして明確な投資スタンスや投資ルールを持たずに付け焼刃的な投資を繰り返している人が多いようです。とくにケータイトレードでは手軽に取引できるので安易な投資をしてしまう傾向が強いので、ゲーム感覚で株式投資をする人に注意を促しています。また値幅をとれる株式として新興株がありますが、新興市場だけに限らずに視野を広げて銘柄選択することも必要です。そのためには、つねに企業の実績内容を冷静に分析する姿勢が求められます。


第4章では、購入したものの値下がりしてしまっていわゆる「塩漬け銘柄」の対処方法が8銘柄を例にとって具体的に解説されています。実際に塩漬けになってしまった株式を保有している人も少なくないでしょうから、そういう人には参考になると思います。


儲かっていないという個人投資家には必読


実際に株式投資をしている人にぜひ読んでいただきたい本です。
100ページの本で図表やグラフやまとめやコラムなどわかりやすいレイアウトなので、1時間もあれば一読できます。株式投資で損をしている人はもちろんですが、利益も出るんだけど損することも多くて結局はそんなに儲かっていないという個人投資家には必読と言っていい本です。

また自分の運用スタイルを客観的に評価してみたいという人は簡単なチェックリストでチェックできます。そのうえで、自分の運用スタイルで気にかかるところを重点的に読み詳細なチェックをして是正していくこともできます。


これから株式投資をしよう考えている人は、先輩投資家がどんなふうに取り組んでいるのか、何をもとに情報を収集しどんな視点から経済・相場を捉えているのかを知る上で大きな参考になると思います。マネー情報誌では投資家のインタビューなどもありますが、その場合はその個人の個性が出てしまって読者の参考にはならない場合もあります。本書では9千人近くに及ぶ個人投資家のアンケートがベースになっているので誰でも参考になります。

2016-04-10

ど素人がはじめる株の本 NISA対応版 「ど素人の株日記」の管理人なべ

「ど素人がはじめる株の本」の著者は、10年以上続く株式投資関連サイト「ど素人の株日記」の管理人の「なべ」さんです。本書の他に「ど素人が読める会社四季報の本」など、題名どおり初心者にもわかりやすい投資関連本を著しています。本書は2005年に初版本が発行されて、その後改定新版などを経て現行版に至るという累計40万部発行された息の長いロングセラーです。この種の本としては珍しいことだと思います。


本書は初心者へ株式投資を始めるきっかけを提供することを目的としているので、まず株式会社の成り立ち・仕組みという基本的な説明からなされています。そして株式投資のメリットを5つに分けて説明されます。5つのメリットとは、配当金・株主優待・株主総会・株式分割そしてキャピタルゲインです。昔は株主優待というとよほどの大株主でない限りメリットを享受できなかったと思うのですが、近年では企業も株主優待制度が充実してきています。初心者向けの株式投資の入門書ではこのあたりサラッと簡単に説明されていますが本書では実践的な注意点が述べられていて親切です。

「売買スタート編」では株式投資の方法が主にインターネット取引を中心に具体的に説明されています。


新制度NISAについての注意点も証券会社選びも視野に入れて述べられているので、NISAでとまどっている初心者には親切だと思います。


株価の動きについての説明はオーソドックスなもので特に気配値に注目することをすすめています。その他に株式銘柄選びの際に参考とする指標として1株あたり利益(EPS)・株価収益率(PER)、そして企業の解散価値に注目して1株あたり株主資本(BPS)・株価純資産倍率(PBR)の重要性が指摘されています。いずれもイラストや簡単な数値による計算式を使って解説されているので初心者にもわかりやすいです。


証券会社のトレーダーのように組織のなかで投資をおこなう人は、その組織のチェックとルールが厳格に適用されますが、個人投資家とくに初心者?中級者は投資ルールの管理がルーズになりがちです。最初に自分なりのルールを決めても、儲けたり、あるいは逆に損してくると熱くなりすぎて歯止めが効かなくなるなんて経験をした人も多いんじゃないでしょうか。そういう人には”投資心理編”が参考になると思います。


株式投資の5つのメリット

著者が指摘する株式投資の5つのメリット、配当金・株主優待・株主総会・株式分割・キャピタルゲインのうちで特に株主優待や株式分割についての記述が初心者にとっては参考になります。株主優待については株主優待銘柄を購入する際の心構えとして今後のサービスの料金を前払いしたと考えるか、お金では買えない株主ならではの優待サービスと捉えるか、それを見極めて自分のスタンスを決めることが大切だと述べられています。

ただ単に各企業の株主優待制度やサービス内容を羅列してあるだけの株式投資の入門書とは違った、自分の投資への取り組み姿勢を読者に考えさせる内容となっています。株式分割についても投資家目線でそのメリットが説明されています。他の入門書だと株式分割については、企業サイドの経営的側面や商法(会社法)的な面からの説明は多いのですが。


株式投資をする人には会社四季報はなじみの深い本ですが、著者は日本経済新聞会社四季報が愛読書というだけあって、会社四季報の具体的な使い方が説明されています。株式投資初心者によっては敷居が高そうで敬遠する人も多いかも知れませんが、やはり基本的な会社情報がコンパクトにまとめられていて、毎季発売される会社四季報は便利ですからね。著者は自分に有利な来期予想の載った会社の決算資料よりは、東洋経済新報社の担当記者が客観的に来期予想する分、会社四季報のほうが「会社の通信簿」として信頼できると言っています。


株式に限らず投資には情報の入手・取捨選別・活用が重要です。本書では”投資情報活用の極意”としてネット上の「リアルタイム株価情報サービス」の利用方法が述べられています。株式投資本についても利用上の注意点が指摘され、さらに日経マネーをはじめマネー雑誌についても各誌の特徴や傾向が比較されています。雑誌購入時の参考になると思います。


株式投資の2大手法のファンダメンタル分析・テクニカル(チャート)分析については著者はファンダメンタル重視のオーソドックスな立場です。もちろんテクニカル分析も一定程度は考慮していますが、基本的には企業の経営成績・資産内容重視の立場ですね。

株式投資の初心者におすすめの本

題名にあるとおり本書は株式投資の初心者におすすめの本だと思います。株式投資本の中には「平凡な主婦の私が○○億円稼いだ」的な本(キワモノ?)も多いので注意が必要ですが、本書はオーソドックスな立場で初心者向けの株式投資に向けての心構えや情報が述べられているので安心だと思います。イラストや図表の量も適度に使われていると思います。初心者向けの本だと、やたらイラストが多くごちゃごちゃしていて肝心の本文が内容の薄いものも多いのですが、本書はそういったことはありません。


既に株式投資を始めて数年の経験があるといった人にもおすすめできると思います。まったくの初心者よりは株式投資にある程度慣れた人のほうが大損してしまうことも多いですから。けっこう順調にやってきてちょっと最近気が緩んできたかなと感じている人が、もう一度初心に戻って細かいことからチェックしてみようとする時に参考になる本だと思います。ど素人向けの本だとないがしろにしないで読み込むと気付かされることも多いんじゃないでしょうか。

ど素人がはじめる株の本 NISA対応版

ど素人がはじめる株の本 NISA対応版

2016-04-05

超簡単お金の運用術 山崎元

最近読んだ株の本の中で、特に役に立ったのが、山崎元さんが書かれた『超簡単 お金の運用術』です。この本は、お金の運用について、具体的で分かりやすい結論を先に述べている数少ない名著です。世の中の多くの人は、お金の運用が仕事でもないし、趣味でもありません。そして、どの金融商品をどのような比率で買ったらいいかに関する具体的な方法を手っ取り早く知ることを求めています。
著書では、このようなニーズに応え、中でも近年注目を浴びている「NISA」と「確定拠出年金」に重点を置いて書かれています。まず、冒頭から早速結論である「超簡単お金の運用法の具体的な手順」を述べます。その具体的手順とは、まず銀行の普通預金に、当座の生活に必要なお金(たとえば生活費三ヶ月分程度)を貯金します。次に、残金を、危険を伴ってもよいと考える「リスク運用マネー」と、損をすることを心配しなくてもよい「無リスク運用マネー」に分けます。

ここで、「リスク運用マネー」は、「無リスク運用マネー」よりもだいたい数%程度利潤がよいが、最も悪いケースでは、12ヶ月で30%程度が損なわれるリスクがあると思って、適当なお金を割きます。そして、「リスク運用マネー」は、「TOPIX連動型上場投資信託」と「SMTグローバル株式インデックス・オープン」に、50%ずつ分散します。「無リスク運用マネー」は、「個人向け国債」もしくは「マネー・リザーブ・ファンド」に投資します。または、一千万円以下であれば普通預金に預けていてもよいと言います。また、多額の出費をすることが避けられないときには、「リスク運用マネー」もしくは「無リスク運用マネー」のどちらかを「迷うことなく」一部を崩して、これに使用するようにとされています。最後に、少額投資非課税制度と、支出額ではなく拠出額を定額で負担していく確定拠出年金を、めいっぱい活用することを勧めています。

このように、非常に単純明快で、誰にでも分かりやすく手のかからない株の運用方法が紹介されており、また、この根拠や投資の考え方についても本文の中で詳しく書かれています。


具体的にこの本を読んで役に立った、学ぶことができた内容は二つあります。

NISA(少額投資非課税制度)の正しい利用法がわかる

まず一つ目は、NISA(少額投資非課税制度)の正しい利用法を理解することができた点です。NISAとは、イギリスのISA(Individual Saving Account)を参照しながら作成された、日本版ISAのことです。(参考:NISAの株の買い方)

内容は、一年間で百万円/人を上限に、投資で得た利益にかかる税金が5年間まで免除されるという、少額投資非課税制度です。これについて本書では、4つの原則に従って運用することを述べています。

その原則とは、

  1. 限度額いっぱいまで投資する
  2. 見返りの大きい商品に投資する
  3. できるだけいろいろな資産が組み合わせられた商品に投資する
  4. 投資にかかる費用はできるだけ少なくする

といったものです。この理由は、NISAでは利益にかかる税金が免除されるので、できる限りリターンの多い商品を選ぶのがよいが、その一方途中で売却することができないので、あわせてバランスの良い商品でなければならないからです。このように、初心者でも分かりやすくNISAの仕組みや効率的な運用方法などについて教えてくれています。


確定拠出年金がわかる

もう一つ役に立ったのが、確定拠出年金に関する内容です。ここでは、そもそも確定拠出年金とは何なのか、会社のそういった制度がない場合はどうすればよいかなどについて書かれています。そして具体的な運用方法については、4つの原則に基づいて運用すべきだとしています。その原則とは、ー身の資産全体の配分を考えて、部分的に確定拠出年金を活用する▲螢拭璽鵑大きい商品で、かつ投資にかかる費用が少ないものを選ぶ4雰蕕飽譴弔両ι覆暴弧鵑垢覘て韻犬世唄躙韻あるなら、運用費用の少ないものにするといったものです。

確定拠出年金では、「ライフサイクル・ファンド」と呼ばれる、国内外の株と債券ともに運用するバランス・ファインドの一つで、年代別に投資する商品を変更していく運用方法が一般的だが、これでは税制上の利点を十分に生かしきれていないため、ベストではないと説明されています。このように、これまで当たり前だと思っていた運用方法にメスを入れ、最も少ない労力で最大の利益率を達成するための現実的な手段を提供してくれています。

きな臭い儲け話から脱出できる指南書


この本は、どの投資商品をどれぐらいの割合で購入したらよいのかについて、現実的な手段を簡潔に説明してほしい方にオススメです。具体的には、働き盛りのサラリーマンやその妻、あるいは田舎で隠居生活をしているお年寄りなどに広くためになる、「資産運用の簡易ハンドブック」といった位置づけです。

筆者がこだわっていたのは、あくまで現時点で考えられる「必要十分」な運用方法について、分かりやすく解説することでした。そのため、これまでの資金運用解説本がほとんど不必要になるぐらい要点を凝縮していて、明らかに損害を被るような、あるいはきな臭い儲け話から脱出できる指南書としても有用であると思います。

また、新書一冊分の内容なので、一日もあれば読み切れる分量となっており、忙しい方や、難しい投資戦略に疎い方でも挫折せずに読破することができます。
株についてはよく知らないけど、投資・運用に少し興味があるというあなた、『超簡単 お金の運用術』でお手軽に株式・資産運用を始めてみてはいかがでしょうか。

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