ドブの底から2015ベストテン

以下順不同。思いついた順。

誘拐の掟
マッドマックス 怒りのデスロード
シェフ
ワイルド・スピード スカイミッション
岸辺の旅
インヒアレント・ヴァイス
インサイドヘッド
キングスマン
フォックスキャッチャー
野火

わたしは距離を置くこともできるし、ときにアイロニカルにもなる。現実を歪曲していないフェアな描写に徹しなければならないが、あくまでもそれは主観的なものだ。そもそも客観的な映画など存在しない。
フレデリック・ワイズマン

主観の洪水に溺れられればと淡い期待を抱きつつ...
今年もいい映画に出会えますように。

ドブの底から2014ベストテン

以下順不同。思いついた順。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
アクト・オブ・キリング
LIFE!
プリズナーズ
ネブラスカ
ウルフ・オブ・ウォールストリート
オール・ユー・ニード・イズ・キル
ゴーン・ガール
イコライザー
アメリカン・ハッスル

今年もいい映画に出会えますように。

ドブの底から2013ベストテン

以下順不同。思い付いた順。

世界にひとつのプレイブック
マジック・マイク
「はじまりのみち」
風立ちぬ
「クロニクル」
地獄でなぜ悪い
ゼロ・グラビティ
ラストスタンド
ジャッジ・ドレッド
ゼロ・ダーク・サーティ

今年もいい映画に出会えました。

新しいものは何もない、でもそこがいい / 探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点

はじめに言っておくと、前作『探偵はBARにいる』にハマった口だ。ハマった勢いで...勢いがなければこんなことはできないが、はじめてもらったボーナスを使って光岡自動車のビュート(中古)を買ってしまったぐらいだ。だが、勢いで行ったことに代償はつきものである。パワーウィンドウじゃない、センターロックじゃない、おまけに乗せた友人・知人には結構な割合で不評…と、ビュートを買ったことを後悔しはじめた頃に『探偵はBARにいる2』を観に行った。

いきつけのショーパブ「トムボーイズ・パーティ」のマサコちゃん(ゴリ)が殺された。マジックコンテスト全国大会で優勝した2日後だった。彼女を応援していた俺こと探偵(大泉洋)は相棒=高田(松田龍平)と共に調査に乗り出す。事件の真相に近づくにつれ、市民から絶大な支持を受ける地元議員橡脇(渡部篤郎)への疑いが色濃くなっていく…というのがおおまかなストーリーだ。

はっきり言って「2」だからこそ魅せる新しい要素というものは皆無だ。前作同様、汗かき恥をかきながら探偵が周りの人々に振り回される様をこれでもかと観せられる。正直、そこが守られているという点で僕は満足だ。たとえ、合間合間に挿入される映画的に意味があるのか疑問に思うシーンがあってもだ。

本作で心揺さぶられた場面といえば、河島弓子(尾野真千子)が「亡き王女のためのパヴァーヌ」を弾きながら、かつての思い出がフラッシュバックするシーン、そしてムーンライダーズの「スカンピン」が流れ、大交差点を背にビルの屋上で煙草を吸う探偵と高田を大ルーズショットで撮ったエンディングだ。これは2つとも三木聡監督作『転々』の引用としか思えないが、それを分かっていてもグッと来てしまう演出で悔しい!でもイイ!という複雑な感情になった。

お約束になりつつあるのか、「車変えろよ!」のやり取りがエンドロールの最中に挿入される。「俺のはまだマシかぁ」なんてことをぼんやり考えながらビュート(中古)に乗って家路についた。帰ってから探偵はBARにいる仕様ビュートなるものが発売されることを知った。ゲエ!おれのビュート(中古)より100倍乗り心地良さそう!本当に探偵はBARにいる仕様かよ!と頭にきた...とだけ最後に記しておく。

なあ父ちゃん、銃くれよ / ルーパー

初日に長野グランドシネマで鑑賞しました。おもしろかった…というよりも、僕の好きな映画ですと言ったほうが正解かもしれません。2074年、ナノテクノロジーが発達した未来の世界では殺人行為を犯すと即座にバレてしまうため、闇組織は殺したい人間をタイムマシンで過去に送り込んで暗殺していた。未来から送り込まれる人間を処刑する役割を負った者達は"ルーパー"と呼ばれ、後々送り込まれる未来の自分を自分自身の手で殺し、人生のループを閉じるまで報酬の銀塊と引き換えに殺し続ける。そんなルーパーの1人であるジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)の元へ、未来の自分であるオールド・ジョー(ブルース・ウィルス)が送り込まれたが不意を突かれて逃げられてしまう。たとえ未来の自分自身であろうと標的を逃してしまったルーパーは処刑される掟になっているため、組織から狙われる身になりながらも自分の仕事を全うするためにジョーはオールド・ジョーを追う。8歳の頃の自分が現れ、アラフォーのかろうじて髪の毛がある現在の自分(ブルース・ウィルス)に対して「思うてたんと違うッ!!」と叫ぶ『キッド』なんつう映画もありましたが、今回はブルース・ウィルスの方から出向いてくれます。

率直な感想は「大友克洋meets村上春樹」というところでしょうか。どこか懐かしさが残る近未来感や、TKと呼ばれる超能力者が出てくるそれは大友作品のそれと全くおんなじです。パンフを読むと町山智浩さんの解説では「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を監督のライアン・ジョンソンは参考にしたと語っているように、序盤の自嘲気味な主人公の心情吐露は「やれやれ」感を感じさせるし、町山さんも指摘していましたが後半部の静動分かれた物語がひとつに収束していく様は「世界の終わりと〜」そのものです。

どこか既視感のある近未来、気の利いた小道具、強弱をつけつつ流れていく気持ちのいいストーリー展開など僕が映画を観るときに重要視している「この世界にずっといたい」欲望が絶えず湧き出る作品でした。

以下ネタバレあり。



物語上、終始つきまとうジョーとオールド・ジョーの人生の経路が違う同一人物の不思議な違和感は既にDINERで飯を食う場面で表現されていたのでは?と感じています。食うものこそステーキとスクランブルで同じメニューですが、ジョーはいつもコーヒーにミルク?クリーム?を入れているのに対し、オールド・ジョーは迷わずブラックを注文していました。同一人物だけど実は人生経験の異なった自分という別人であるということで生じる違和感が、ラストシークエンスで「自分に銃を向け引き金を引いた」という大きなタイムパラドックスを成立させるための布石ではないかと。

そしてぼんやりとですが、不意な父殺しというものがこの映画のテーマでもあるんじゃないかと思っていたりします。ヤクザな組織の元締めエイブがジョーに銃を与えたことによってジョーの人生は始まったわけで、いわばエイブはジョーの親と言えます。それに対し、若いジョー自身も一度は殺した方がいいと思ったシドを生かそうと決めたことによって、彼もまた実の父親が不在であるシドの親になったといえるでしょう。シドが銃を欲しがっていることをジョーに示す場面は、ジョーの人生が銃から始まったという前フリがあったため、なおさらその印象を強くさせました。ジョーはエイブを未来の自分であるオールド・ジョーが殺してしまったことで不意に父を殺してしまったということになるでしょうし、シドもまた自らの可能性の1つであるレインメーカーという悪の代償として、ジョーの命を奪いました。オールド・ジョーがエイブら組織に殴りこみをかけるときに使われていた銃はP90で、メタルギア・ソリッド2のソリダス・スネークの愛銃だったりして、ああ、あの話も雷電がソリダスという親を超えるストーリーだったなと繋がらないであろうリンクを勝手に脳内ではってました。親から子へと生と死の輪が回り続けているループは止まらないし、止められないーーータイムトラベルという飛び道具を使ってそんなことを表しているんじゃないかと思ってみたりみなかったりしてました。

ドブの底から2012ベストテン

順不同。ぱっと思いついた順。

リンカーン弁護士
「へんげ」
おとなのけんか
桐島、部活やめるってよ
「サニー永遠の仲間たち」
「ザ・マペッツ」
「ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」
小悪魔はなぜモテる?!
テイク・シェルター
苦役列車

ドブの底から上澄みを眺めるような生活に少しばかりでも希望を与えてくれる映画が集まったかなと。書きだしてみると「ああ、できることならばこの世界にずっと浸っていたい」という贅沢な欲望が溢れだす作品群だなと。きたる2013年もそんな映画たちに出会えますようにと淡い期待を抱きながら新年を迎えたいと思います。

いつか( )の中を教えてくれ / 桐島、部活やめるってよ

長野ロキシーにて。原作は未読です。県選抜にも選ばれるバレー部のエース、桐島が部活をやめた事によって学校内の人間関係が変化していく。編集・構成が素晴らしい!約100分の上映時間がとても濃密に感じました。各パートに分断されることによって物語に推進力を与えています。前半では各パートの最後にまったく分からない、理解できない出来事が起き、次のパートでその出来事の全貌が分かるという構成になっており、疑問発生!→即解決!の繰り返しによって非常に引き込まれました。後半では登場人物それぞれの物語が屋上へと一気に収束する展開に燃えました。神木くん演じる映画部の前田をはじめとする学校内の上下左右様々なヒエラルキーに属している登場人物のどこか同じ匂いのする断片に感情移入し、観終わった後に自分が過ごしてきた学校生活と照らしあわせて「俺は・・・」「私は・・・」と誰かに語りたくなる作品です。おすすめです。

※以下、ラストに関してネタバレ含みます










洋泉社映画秘宝EX 映画の必修科目01 仰天カルト・ムービー100』において長谷川町蔵さんがこのような言葉を用いて『ゴーストワールド』を評論していました。

人間にとっての幸福は、エゴと才能とのバランスから成り立っている。成功者にエゴが強い人間が多いのは、「自分は特別」との思い込みが、得意分野で才能を発揮する原動力になっているからだ。

いっしょに野球部で過ごしてきた宏樹にとって「ない人」と思われるキャプテンのドラフトが終わるまでは続けるというエゴと才能の不釣り合いさに困惑し、映画コンペ一次予選を通過し当然エゴに見合った才能が「ある人」なのでは?と思わせる前田に向けた「女優と結婚したい?」「アカデミー賞狙っちゃう?」との問いに対する予想外の答えによって打ちのめされます。



成功には遠く届かず、才能を持っていない人のただ「好き」というエゴ
傍から見れば幸福へのバランスを壊しているような「好き」というエゴ



エゴと才能のバランス感覚が優れていて、幸福への選択肢をスマートに選んでいる宏樹が感じた衝撃は、僕自身の立ち位置を再確認させてくれました。少ない給料使って映画観て、ゲームやって「アレ、スゲー良かったよ!」とスルーされつつも興奮しながら周りの人に話して、誰に頼まれたわけでもなくブログに書いて・・・。「ロフトプラスワンでイベントにでたい?」「映画秘宝で記事書きたい?」もし宏樹のような人が僕に問いかけるとして、やっぱり「無理」と答えると思います。でも・・・でも・・・好きだから。映画を観るのが好きだから。ゲームをやる事が好きだから。成功や幸福とは正反対のまったく無益な行為だとしても。

パンフでも確認できますが、エンドクレジットで部活に所属している学生は名前に続く( )の中に映画部だったり、バレー部だったりと表記されているのに、宏樹の( )は空白になっています。劇中で四六時中いっしょにつるんでいる帰宅部の竜汰・友弘に( )は付いていません。いつか、いつか宏樹の( )が、宏樹の本当に好きなもので埋まってくれればいいなと思います。



人生の幸福や成功から足を踏み外せ!宏樹!