鶴林万平「still-life的音環境」


 今日のトークゲストは、サウンドエンジニアの鶴林万平さんです。鶴林さんは、12面体のスピーカーを作っていらっしゃいます。今回は鶴林さんが作られたスピーカーを小屋の前に吊りお話していただきました(写真で、小屋の前につられた2つの球状のものがスピーカーです)。
 
 僕たちが普段使っているスピーカーは、指向性を持っています。指向性というとなにやら難しそうですが、要するに、音が一定の方向に向けて発せられる、という意味です(たとえば、ふつうのスピーカーなら正面に向けて音は流れます。勿論厳密に正面のみに向けて発せられるというわけではありませんが)。
 しかし鶴林さんのスピーカーは、12面体で12個の面それぞれにスピーカーがついています。ですので指向性は12個もあります。
 となると、どういうことが起こるのか。これは実際に体験していただく方が良いのですが、僕の体験したことを言葉にして見たいと思います。
 何よりもまず、この12面体スピーカーでは、音の出所が分かりません。目をつぶって聞いてみると、遠くのほうで流れているようにも思えるし、案外近くで流れているのかもしれない・・・なんていう不思議な体験が出来ます。
 で、音の出所が分からないから、音楽の各パートが、さまざまな場所でそれぞれに調和したりします(抽象的な言い方ですいません。。)。部屋を歩きながら音を聞くとよく分かるのですが、例えばジャズではドラムとベースの音が濃く聞こえたり、ボーカルとピアノの音が濃く聞こえたりする場所があります。おそらく建物の影響だと思いますが、それぞれの音が12個の方向に投げ出されるので、空間内の音の濃淡が出来ているのです。
 そしてその結果、音楽は立体的に立ち現れてきます。空間的に立ち現れてくると言い換えてもいいでしょう。ともかく、音が空間内のさまざまな方向に広がっていきます。空間が音によって満たされるというのはこういうことなのか、とはっきりと実感できます。
 こうした聴取は、普通のスピーカーでは体験することが出来ません。またおそらく狭い室内でも体験することが出来ないのではないかと思います。広い空間の中に、このスピーカーを吊って、好きな音楽をかけて過したらどんなに素敵だろう!なんて妄想が広がりました。

 鶴林さん、ありがとうございました!鶴林万平さんの活動についてはこちらもご覧下さい!→sonihouse