福音の少年

福音の少年

福音の少年

今日の行帰りの電車の中でなんとか読了。
ただ口惜しいかな、ちょっと掴み損ねている感じです。
面白くないとかそういうんじゃなくて、私が掴み損ねたというか掴み倦ねたというか。
一番大事な所をちゃんと掬えなかった感じ。
もっかい読んだら分かるかなぁ。なんとなく釈然としません。
最後まで、明帆が『どちら側に転がるのか』は分かりませんでした。
ある程度同じ作家さんの話読んでると結末とか大体読めてくるものですけど、正直今作は全く読めなくて、
結末があんなふうに終わった事も意外なような、そうでないような。
あさのさんはまだどっちと大別する事が出来ないんですよね。
どちらかというと『救い』を望んでいるんだけど、
バッテリーでも結構ギリギリまで傷を開く方向、というか、
楽な方向に逃げ込もうとはしなかったから、最後あんな風に終わるとは思ってませんでしたからね。
思ったより穏やかでほっとした、というのが結構本音の感想でした。
で、今作も落ち着く所に落ち着いたのかもしれないけれども、最後、なんか、やり切れないっていうか。
一番効果的な所で止められたのかもしれないです。
中には「え、ここで終わりなの?」って感じた人もいるかもしれません。
けれど思うに、多分この話はここで終わるのが正しいんだと(追記訂正。正しいというより、文章として綺麗、なのかも知れません)思います。
答えを分かりやすく提示するんではなく、こっちを選び取りその結果彼は何を得るのか、
そこから先を考えるのは読者側の自由というか、むしろ課題?なんじゃないでしょうか。
すごい大事なものを見せられた気がするのに、それが何か自分自身分かってなくて、
言葉に出来ないのがもどかしいです。
これって表面的な事件のオチに関しては別に何か特別見なきゃいけない事なんてないと思うんです。
問題はそれを通して明るみに出てくる明帆の内面なんですよね。
始めは陽もそうなのかと思っていたけど、途中で決定的に二人は違うなと感じた部分があって、
藍子じゃないんですけど、明帆は可哀想だな、って思いましたね。
ああ、でもまだこういう風に言葉にすべきじゃないのかも知れません。
もう少し、自分の中で分かりやすい部分に落ち着くまでこの作品の感想は封印しようと思います。
暫く、読み返しはきかないだろうし。
ところで帯の『心の闇』っていうのには、苦笑しました。
そんな一言で片付けられるようなもんを書いてるんじゃないでしょうに。
売り文句も一つ間違えば作品を陳腐なものに変えますから、この言葉はやめた方が良いと思いましたね。
闇も光もあるかってんだ。

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追記。
帯の「『バッテリー』のあさのあつこ」の文字に、角川のあざとさを見た気がします。
読者としてここは間違っちゃいけないなと感じたのは、『バッテリー』を書いているあさのさんと、
福音の少年』を書いているあさのさんは全くの別人であるという事。
根底が一緒でも、書こうとしているもの、書きたいものが全くの別物である限り、
それは『バッテリー』を書いたあさのあつこさんとして見るべきじゃないのでしょう。
『バッテリー』に求めたものを『福音の少年』に求めて読んだ場合、
それはきっと作品をつまらないものに変えると思います。
私が思うに、あさのさんの作品は、
人間そのものを深く掘り下げる、人間観察に重きがおかれてると思うんですね。
一人の人間を描くのに、どれだけの言葉を尽くせばその人物が描けるでしょうか。
ましてや二人、三人と増えたら?
その途方もない作業に飽く事もなく立ち向かう、職人のような人だなと思います。
常に自分の求めるものに向かって先へさきへと進む。
この作品でも書ききっているとは思いません。
でも追求の手を休めない、物語の方向性が違ってもいつも確かにしたい何かがある部分が、
伝わってくる気がします。
彼女の作品はいつだって直球ですね。
自分の伝えたい事を鷲掴みにして全力投球してくる。
だからこそ私は惹かれます。丸裸のままの、でも荒削りでない言葉に胸を打たれます。
彼女の作品と向き合う事は、時に苦しいです。
けれど、作品から苦しさから安易に逃げるなとも言われているようで逃げる事もかないません。
しんどい、って言えばそれがしっくりくるのかもしれません。
別に苦しさに立ち向かい、克服する事が美徳だという考え方は持っていませんが、
その苦しさも糧である事には違いないのだろうなと思うと容易に投げ出す事が出来ないです。
もーなんでこんなに自分には語彙がないのかと忸怩たる思いでいっぱい。
こんなんだから、サイン会で何言えば良いのか分からなくなるのかも知れないです。
自分の思いすら言葉に出来ない。
……自分の思いだからこそ、簡単に言葉に出来ないと言えばそれまでなのですけどね。

あさのあつこさんのサイン会に行って来ました。

ええと、先日言ってた『福音の少年』ちょっと無理して購入した理由はこれです(笑)
本当は発売日もちゃんと覚えてなかったんですけどね。
たまたま(ほぼ毎日行っているのでたまたまも何も有りませんが)三省堂行ったら、
ばばーんと壁に告知ポスター貼ってたモンだから、
「これ本日の新刊ですよね? どこに置いてありますか」と聞いたら、まだ店頭に出ていなかったと言う。
で、整理券一番をゲットしていたのですが、正直諦めていました。
というのも、今日出勤だったんですよね、会社。
折角の一番なのにいけないのね……と悲しみに暮れつつ、諦め切れずに本と整理券を持って出勤。
が、思いがけず午前中で全ての用事が片付いてしまい、14時からのサイン会だったので神田まで移動。
あーなんかもー嬉しくて舞い上がって何喋ったか朧げです。嘘です。ちゃんと覚えてます。
苦手なんですよね、尊敬している方に会うのって。
大勢の人の前に立てと言われても、その前で歌えとか言われても平気な面の皮厚い人間ですが、
自分の尊敬している人の前だと本当に緊張してしまって、一気に赤面してしまいます。
多分、好きな人に告白する時よりも緊張します(笑)
嬉し過ぎてどうしたらいいのかわからんのかも知れませんし、
尊敬している人物=自分がかなわないと感じている相手なので、単に畏縮してしまうのかも知れません。
あさのさんには学生と間違われてしまいました。
私、そんなに自立してなさそうなんでしょうか、素で驚かれてしまいました。
若く見て貰えているんだという事にしておこう(笑)
そういえば日本放送協会の方も取材にいらしてましたねー。
すごく朗らかで笑顔の優しい方でした。きさくに話し掛けて下さって、本当に嬉しかったです。
サインを入れてもらう前に本を読了していなかった事だけが心残り。