花伝社の窓から 事務所だより RSSフィード Twitter

2016-01-15

梓会出版文化賞授賞式に出席してきました

すでに弊社ホームページやツイッター(@kadensha)などでお伝えしておりますが、弊社は第31回出版梓会文化賞を受賞いたしました。

その授賞式が1月14日、日本出版クラブ会館で行われ、弊社からはその後の懇親会も合わせて6名が参加させていただきました。


当日は代表の平田が「受賞のことば」としてスピーチさせていただくということで、平田のみならず社員一同、非常に緊張して贈呈式に臨みました。

また、「選考のことば」として、選考委員の方の講評をいただけることもあり、そちらも非常に楽しみにしていました。

選考委員の上野千鶴子先生による「選考のことば」の中に、「大賞の花伝社は、審査員満票ですんなり決まりました」とあり、これは戦後70年を強く意識したラインナップを評価いただいたということでしたが、毎年喧々諤々の議論がなされると噂に聞いていた選考委員会において、「審査員満票ですんなり」というのは非常に驚きました。

改めて、弊社書籍を評価していただいた選考委員の皆様にお礼申し上げる次第です。


平田のスピーチですが、事前に何人もの社員から「くれぐれも短めに!」と釘を刺されていたためか、コンパクトかつわかりやすい内容だったのではないかと(身内びいき抜きで)思います。

個人的に私が良かったと感じたのは、自社の繁栄ではなく、新規の起業も含め、出版業界全体の活性化を目指して出版活動を継続する大切さを平田が説いていたことです。

それは他の受賞社の方のスピーチからも同じく感じられたことなのですが、もう常態化して久しい出版不況を、嘆きの言葉として、あるいは言い訳として用いるのではなく、「だからこそいい仕事をしてかなきゃいけないんだ」というモチベーションの源泉として捉える、その部分を評価していただいたのではないかと思います。

梓会は中小の出版社が会員の団体で、出版文化賞は、出版社が「いい仕事してるね」という同業者を顕彰するという非常にユニークなものですが、本当に今私たち出版業に従事する者は一丸となって出版界を盛り上げていかなければいけないのだと、改めて気の引き締まる思いがしたものです。

その後の懇親会では、多くの業界関係者の方とお話しすることができ、非常に刺激的で充実した時間となりました。

そして、普通の感覚で言えばライバルなのかもしれませんが、「これからもいい本を出していくんだ」という志を同じくする多くの出版社の方々とともに、業界を盛り上げていければと思います。


今回の賞は弊社がいただいた形ですが、これは、今まで弊社を支えてくださり、応援してくださった著者やデザイナー、印刷製本業者の方々、そして流通を担っていただいた取次関係の方々、売っていただいた書店員の方々、何より弊社書籍を読んでいただいた読者の方々を代表して頂戴したものだと思っております。

きれいごとでなく、出版とは著者をはじめ関連業種の方々や読者がいなければ成立せず、ましてや継続していくためには、それらの方々から多大なご支援をいただかなければ不可能な、きわめて公共性の高い事業だからです。

本当に、花伝社を支えていただいていることに感謝いたします。


懇親会の後、弊社メンバーだけで繰り出した二次会の席では、平田の好きな歌の話題になりました。

平田はなんでもその歌を聴くたびに涙してしまうそうで、「まさに自分の人生そのものだ」と語っていました。

「それはまた大げさな」と一瞬思ったのですが、「我も行く 心の命ずるままに」というその歌、「昴」の一節を思うとき、30年前、周囲の誰からも反対されながらこの会社を立ち上げた平田の決意がそのまま表現されていることに気付き、栄えある賞をいただいたこの日の最後、胸に込み上げるものがあったことを告白しておきます。

そして平田のスピーチには、「いつの日か誰かがこの道を」という思いが込められていたのかもしれない、とも。


出版という素晴らしい営みを仕事とする喜びをかみしめつつ、これからも花伝社は、皆様に「読んでみたい」「読んでよかった」と思っていただけるような本を出版できるよう、日々頑張っていきます。

今後ともご指導のほど、何とぞよろしくお願い申し上げます。

(佐藤)

2015-11-04

【新刊案内】クシンスキー著・小高利根子訳『K 消えた娘を追って』

10月の新刊の御案内です!

ベルナルド・クシンスキー 著 

小高利根子 訳

K 消えた娘を追って

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ある日突然姿を消した娘を捜す父親Kの物語。

Kはユダヤ系ポーランド人で、ブラジルに移住する前に祖国で反政府活動のため投獄された経験を持つ。

父親の苦悩と真相解明を求める姿、失踪者家族たちの訴え、娘や婿の手紙、軍部側の動き……

そしてなんらかの形で事件に関わった人々の思いが、まるでひとつの合唱のように響き合い、少しずつ全貌が明らかになる。


来年のオリンピックでさらに話題になるであろう国、ブラジル

30年前までは、軍事政権が支配をしていました(1964-85年)。

この21年間に、400名以上の人

殺害されたり・行方不明となったことが明らかになっています。

ルセフ現大統領も3年間投獄され、拷問を受けた被害者です。


行方不明のうちの一人、アナ・クシンスキー

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とても綺麗な方ですね!

サン・パウロ大学に勤務していた彼女はある日突然姿を消してしまいます。

(当時、日本のアムネスティーでも支援活動が行われたそうです。)

少しずつ明らかになる真実、そして家族をつなぐヒストリー……。



アナの父をモデルとし、彼女の兄であるジャーナリストの

ベルナルド・クシンスキー氏が小説を執筆しました。

重いテーマを扱った一作ではありますが、小説としての評価も高く、

2015年ダブリン国際文学賞にもノミネートされました。




数々の翻訳作品を手掛けた小高利根子様に、

なめらかな日本語に訳していただきました。

ぜひ多くの方にお読みいただきたいです。おすすめです。

2015-07-06

まだまだ続く、『宗教と政治の転轍点』ブレイク!

4月に発売した宗教社会学者・塚田穂高先生の『宗教と政治の転轍点』は、朝日新聞書評に取り上げられるなどこれまで各方面で話題を呼んできましたが、またここにきて新たな反響が生まれています。

ニュースとオピニオンのサイト「ハーバービジネスオンライン」にて、特別企画として記事がアップされています。

http://hbol.jp/49006

内容はこのサイトで連載をされている菅野完さんと塚田先生の対談で、「宗教と政治の交わるところ」というテーマのもと、「なぜ宗教と政治は惹かれ合うのか」が大いに語られています。

もちろん、議論のベースにあるのは『宗教と政治の転轍点』で、この本の投げかけた問題提起に菅野さんがビビッドに反応されている様子が伝わってきます。

宗教と政治――日々の生活で触れる「行政」ではなく、「政治」ということで考えた時、私たちにとって選挙がほぼ唯一の政治との接点のように思いますが、この接点に実は大きく関わっているのが「宗教」ではないでしょうか。

つまり、「宗教と政治」は、私たちが政治を考えるときに避けて通れないテーマであり、その影響力抜きに政治を語ることはできないとすら思います。

しかし、「宗教と政治」にはタブーのようなものがいつも付きまとっています。

それは何かとやっかいなことになるから……という現実的な意味での敬遠から、究極は「心の問題」であり、他人がとやかく言うことではないという原則論に行き当たってしまうから、ということもあるかもしれません。

こうして私たちが「宗教と政治」を真正面から考えることを敬遠するうちに、政治の世界で宗教がどれほどの存在感を持つようになっているのか――お二人の対談を読むと、この当たり前の想像力すら、私たちが持てなくなっていることに気付かされます。

もちろん、信仰の自由や個々人の思想信条は何をおいても守られなければならないものです。

しかしそのことと、政治に対して宗教がどのような現実的インパクトを与えているかを検分することは切り離して考えるべきだし、そこには往々にして注視すべき事柄が存在するように思います。

「ハーバービジネスオンライン」の「宗教と政治の交わるところ」は続きがあるようで、ここからがよりディープなお話になるとのこと、私もドキドキして次回記事を待ちたいと思います。

この記事のアップから、また『宗教と政治の転轍点』の動きは良くなっています。

本当にこの本は、学問的到達点として括目すべき内容であるだけでなく、私たちの社会のかたちを考えるうえで、避けて通れないものだと改めて感じます。

Amazonなどでは「一時的品切れ」になっているようですが、在庫はまだまだありますので、読んでみたいという方はお近くの書店様などにお問い合わせください。

(佐藤)

2015-07-03 【新刊案内】林博史著『日本軍「慰安婦」問題の核心』

昨日の朝日新聞に、大きな特集記事が出ました。


(慰安婦問題を考える)「慰安所は軍の施設」

公文書で実証 研究の現状、永井和・京大院教授に聞く

(朝日新聞 2015年7月2日朝刊)

慰安婦や慰安所の実態はどこまでわかってきたのでしょうか。1993年、当時の河野洋平官房長官は「河野談話」で、慰安所の設置、管理に旧日本軍が関与していたことを明らかにしました。警察や軍の公文書などの資料をもとに、慰安所は軍の施設として設置されたことを明らかにした永井和・京都大大学院教授ら歴史研究者に、「河野談話以降」の研究の現状について聞きました。

http://www.asahi.com/articles/DA3S11836618.html

この記事の掲載によって、再び「慰安婦」をめぐる議論が活発になっています。

記事の中でも

河野談話以降、新たな資料の発見が進み、慰安所での女性たちの境遇が慰安所業者の日誌で明らかになりつつある。昨年6月、国内で慰安婦問題に取り組む市民団体が、永井教授が分析した警察資料や戦犯裁判資料など538点が河野談話以降に見つかっているとして日本政府に調査を求めた。

とあるように、河野談話発表以後もたくさんの資料が見つかっています。

こうした資料を多数発掘・研究してこられた、林博史関東学院大学教授。これまでに発表された「慰安婦」関連の論考を1冊にまとめ、現在の日本が抱えるアクチュアルな問題に対して、どんな手段をとるべきか、各章に補論を書き下ろしいただきました。「慰安婦」をめぐる書籍の中で、間違いなく、一番の情報量であることを確信しつつ、『核心』というタイトルを入れさせていただきました。

さらにこの本の特色として、「慰安婦」問題を個々のケースの立証のみに終結させることなく、軍隊と性の問題、ジェンダーの問題など、その根幹に潜む問題にまで視線が届いている点が挙げられます。「なんだ、日本軍慰安婦の本だと思ったのに、他のことを書いているじゃないか」と思われる読者の方もいるかもしれません。しかし、だからこそ、この本の今日的な存在意義があるのだと思いながら編集に携わりました。

林先生たちが発掘された資料が多数収録されていますが、とりわけ第3部「歴史資料隠蔽と歴史の偽造」第2章「「慰安婦」など性的強制事件と軍による隠蔽工作」、第3章「ジャワ島における日本軍「慰安婦」等強制事件──ジョンベル憲兵隊ケース」はぜひ目を通していただきたいと思います。それまでの章などで、日本軍「慰安婦」制度の特徴などが頭に入っていたとしても、被害者たちの言葉によって明らかになったあまりに悲惨な「現実」に、編集中も正直気分が悪くなってしまいました。改めて、序章に記されたことば、

九〇年代に多くの市民がこの問題に取り組み始めたきっかけは、被害者が生きているうちにその名誉と人権回復を実現したいという思いからだったと言ってよいだろう。つまり、吉田清治証言が人々を動かしたのではなく、元慰安婦の女性たちが名乗り出たことが人々に衝撃を与え、戦後補償運動に駆り立てていったのである。その思いは、元慰安婦の女性たちが次々に亡くなり、高齢化している今日、ますます強くなっている。

の重みを感じました。


早くも都内某書店様では初回入荷分が売り切れ、補充注文をいただいています。多くの方に手にとっていただきたい1冊です。ぜひお読みください。(山)

日本軍「慰安婦」問題の核心

日本軍「慰安婦」問題の核心

2015-05-27 【既刊】東アジア共同体研究所『なぜ、いま東アジア共同体なのか』

オススメの新刊のご案内です!

東アジア共同体研究所編

『なぜ、いま東アジア共同体なのか』

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東アジア共同体構想の推進こそが未来を拓く

国際環境の大変動に日本はいかなる構想力をもって対応すべきか?

すべての偉大な歴史的出来事は、ユートピアとして始まり、現実として終わった。

──クーデンホフ・カレルギー(EUの父)

●主な目次●

はじめに  本書出版にあたって

序章   二一世紀は「アジア力」の世紀 進藤榮一

第1章  東アジア共同体へ具体的な提案をしよう 鳩山友紀夫

第2章  リベラル派の二一世紀大戦略としての「東アジア共同体」構想 高野孟

第3章  政治史の中で考える東アジア共同体構想 中島政希

補論   沖縄の自己決定権と東アジア共同体

――スコットランド独立投票から沖縄が学ぶもの―― 島袋純





鳩山元総理10年ぶりの論文集です!




鳩山一郎元総理こと「オーパパ」の思い出と、

どうして政治家を志したのか、

そしていま、政治家を引退してどのような戦略を考えているのか、

個人的にも、とても印象的な論考でした。





他にも、東アジア共同体理論を先導する進藤先生や、

琉球大学教授の島袋先生、ジャーナリストの高野先生、

元国会議員の中島先生によって論理的なステップが補強されています。




混乱する東アジア情勢下で、東アジア共同体は

まだまだ夢であるように思われるかもしれませんが

夢からのみ最初の偉大なる転換の一歩は築かれるのかもしれません。




ぜひお読みください◎

(山)