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2018-08-30 荻上チキさん絶賛!『見えない違い――私はアスペルガー』

 先週発売した、ジュリー・ダシェ原作、マドモワゼル・カロリーヌ作画、原 正人翻訳

『見えない違い』



 さっそくご好評いただいています!












 さらに昨夜(8月29日夜)放送の「荻上チキ・Session-22」で、かの荻上チキさんが絶賛してくださいました!




【音声配信】最近面白かった「バンドデシネ」について、荻上チキが紹介しました!

▼2018年8月29日(水)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)

https://www.tbsradio.jp/288433




 あまりに嬉しかったので、メモとして文字に起こしてみました。






荻上チキさん:最近読んだ漫画の中で面白かったのは、海外のバンドデシネの一冊なんですけれども、



南部広美さん:フランス、ですよね?



荻上:そうですね。僕が、この番組でいろいろアメコミとか――アメコミと言っても、全然ヒーローものだけじゃなくて、様々な作風なものがあるんですね。社会派のもの。



南部:あらゆる。



荻上:で、アメコミと言うからにはアメリカなんですけれども、アメコミ以外のいわゆる「洋コミ」といいますが、海外コミックというのはいろいろあって、面白いものもたくさんありますよ、という話をしていたところ、出版社の人から「こんなものもお好きじゃないですか」ということで、送っていただいたバンドデシネがあって、それがもうドンピシャで面白かったので――。



南部:どんな?



荻上


『見えない違い――私はアスペルガー』


 というタイトルの漫画なんですけれども、タイトルからも分かるように、アスペルガー症候群。まあ、いま「アスペルガー」って過去の言葉になりつつありますけれども、自閉症スペクトラム障害の一人の女性が、日々、自分の病気が何なのかということもわからず、とにかく職場とか人間関係とか、いろんなところで生きづらさを感じているわけですね。で、なんだか職場にいるとそれだけでとても疲れる。


 なぜなら、どうもこの主人公の女性は、聴覚過敏という、発達障害・自閉症スペクトラムの人に起きがちな一つの障害というか特徴がありまして、それは私がいまこうやって話していれば、健常というか「定型発達」とされる人たちというのは、僕の声をそばだてて聞く、あるいはいろんな音が鳴っていてもラジオは耳に入ってくるとか、そういうことができたりするわけですけれども、聴覚過敏だったり、あるいは聴覚の情報処理がうまくいかない場合ですと、いろんな音がどんどんフラットに聞こえてしまう。



南部:どんどん入ってきちゃうということですね?



荻上:そうですね。情報に対するピントのしぼりというものが、なかなかうまくいかないということが――



南部:フォーカスの当て方が難しい……。



荻上:自閉症スペクトラム障害の、よくある症状の一つなんですけれども、それが耳で起きると私のこの喋りも、例えばこのペーパーノイズ(紙を触る音)を同時に喋りながら発していたときに、このペーパーノイズを無視していただきながら声を聴くのが通常の聞き方だと思うのですが、これがフラットに、同時に聞こえてくることになる。


 そういうような状況だと、例えばパーティーで目の前で喋っている人が「いやあ、この前さ」と話している背景で、ワイワイガヤガヤ、グラスの音だとか、注ぐ音、食事の音、紙の音など――



南部:BGMとか。



荻上:もろもろが聞こえてしまうので、ただその場にいるだけで、他の人よりもはるかに疲れるんですね。


 でも、そのことが理解されないから、「付き合い悪いね」とか「空気よめないね」とか――。



南部:そうかそうか、その人の中で起きていることが、外側にわからないから、周りの方も気が付かないということなんですね。



荻上:よく「見えない障害」という風に言ったりするわけですけれど、このバンドデシネでは『見えない違い』というタイトルで、その女性の生き方というものを描いていくわけですけれども、けっこう啓蒙的であるのと同時に、でも、多くの人たちが感じている――つまり、自分が発達障害でなかったとしても、でも「こういったことって生きづらいよね」っていうようなことを感じるときに、一つのあるある話というか、それをどう克服すればいいのかとか、周りの無理解への憤りとか、そうしたものを漫画ならではの表現で上手に描いているんですね。


 漫画ならではの表現というものは、やっぱり、他のメディアではできないような描き方。つまり、イラストと絵が漫画をつくるわけじゃないですか。



南部:平面と言うか、二次元というか――。



荻上:だけど、その、ちょうどフラットにすべての音が聞こえてしまう様というのを、例えば、セリフだったら吹き出しでその人のセリフだとわかるわけですけれども、主人公のマルグリットという女性の目線から見ると、すべての音が「ぐわーっ」って、全部が吹き出しを超えて、セリフとして自分に襲いかかってくるシーンとかを、上手に的確に描いていたりするわけですね。


 的確にと言うのは、「当事者から見たらこう見える」ということも当然あるでしょう。この原作者というのは、実際に(アスペルガー)当事者であって、その体験をベースにしたのがこの漫画ということになっているので、そうした体験から見えてくるリアリティを、漫画という一つの手法に上手に落とし込んでいる。


 当然ながら、漫画好きにとっては、海外、特にフランスの漫画であることから、普段、日本の漫画では見ることのないいろんな表現に触れることもできるわけですね。そして、発達障害の当事者だけに限らず様々な人が、他の世界から見た、他の人から見た空間は、こういう風に映るんだとか、そういったことを体感することができるという一つのリッチな作品だったので、読めてよかったなあという風に思っています。



南部:読みたいなあと思いましたよ。



荻上:ちょうどこれが発売ほやほやで、今月の最終週ぐらいに発売――先週とか今週とかに発売したっていう格好になるわけですね。(8月25日発売)


 出版社は「花伝社」というところなんですけれども、よく「ここはアメコミとか、海外の本を出版しているよね」というところはいくつかあるわけですよね。例えば小学館はこれに強いとか、例えば「ビレバンブックス」のやつはこうだとかいう特徴があるわけですけれども、他にも意外なところがこういったコミックスを出していたりするんですよね。


 そうしたことを知ると、とてもうれしく思いますし、そうしたような仕方で多様な作品に触れられるのは嬉しい限りなので、大変ありがたいですね。


 ちなみに翻訳は、原正人さんが訳されているので――以前バンドデシネ特集の案内人をしてくださいましたけれど――安定の、「間違いないな」っていう。翻訳者買いというのは、漫画だけじゃなくて本は、あります?



南部:ありますね。



荻上:この訳者が訳す本だったらきっと目のつけどころがいいんだろうな、とか。そういった買い方でもいいんでしょうけれど。せっかく読んだ本だったので、面白さのおすそ分けということで、オープニングで紹介してみました。





 荻上さま、ありがとうございます!

 お読みになられた方のご感想など、お待ちしております。


 内容についてさらに知りたい方は、訳者の原正人さんによるご紹介をご覧ください。



 花伝社では引き続き海外コミックを刊行する予定です。

 次回は、スウェーデンの、フェミニズム(ギャグ!)コミック『世界の起源』(仮)。

 年内刊行予定です。お楽しみに!

2018-07-06

【新刊紹介】アケルケ・スルタノヴァ著『核実験地に住む――カザフスタン・セミパラチンスクの現在』

 見本が届きました!

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 この度、アケルケ・スルタノヴァ著『核実験地に住む』を刊行することになりました(7月18日発売予定)。、一橋大学大学院提出の修士論文の書籍化です。

 実はアケルケさんと初めて会ったのは、2008年の大学のゼミでのこと。その頃は、彼女の出身地のカザフスタンをアフガニスタンなどと区別できなかったばかりか(当時はよく冗談で、「映画『ボラット』の国」と言われていました)、彼女の研究の話を聞いて、日本以外にも被ばく者がいるということは、そのとき初めて知った気がします。



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 ソ連の構成国であった1946年から1989年にわたり、カザフスタンのセミパラチンスク核実験場では秘密裏に456回もの核実験が行われました。国民的な反核運動によって実験場は閉鎖されましたが、現在も国内には120万人の被ばく者がいると推定されています。

 著者のアケルケさんは、1983年セミパラチンスク市(現セメイ市)生まれ。2000年にNGOの招きによって広島の高校に1年間留学し、その後、大学院の研究として、同地域に今も住む人々への聞き取り調査を行なうようになりました。彼女も現地出身者であることから、密かに繰り返される中絶や、性的不能を苦にした男性の自殺、当時ソ連によって意図的に被ばくさせられ実験台とされた住民などについても、多数の証言を集めています。




 彼女が日本語訳に協力した、現地の反核運動の曲「ザマナイ」は、広島などを中心に日本でも聴かれるようになりました。

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(カザフスタンの国民的歌手・ローザ・リムバエワによるカザフ語ver.)

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(日本語ver.)




 今回、ブックデザイナーの東京図鑑・鈴木様が、約80 人の住民への聞き取り調査の中から印象的なインタビューをカバーにデザインとして配置してくださいました。そのうちには、

(…)母の話によれば、彼女の村で奇形児が多かったので、「この村の女性には呪いがかかっている、だから元気な赤ちゃんは生まれない」と言われていたそうです。それは昔の人は核実験の悪影響について知らなかったからです。そのため、障害を持って生まれた子どもの母親はいつも罪悪感を持っていました。私が初めて妊娠したときに母から電話がかかって来て、「悪い夢を見たので、その子どもは産まないで」と言われました。母の、このような言葉に驚きました(…)。 (女性、1967 年生まれ)

のような衝撃的な内容も含まれます。




 2017年にICANのノーベル平和賞授賞式でも「セミパラチンスク」という地名は触れられています。

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私たちは、この恐ろしい兵器の開発と実験から危害を被った世界中の人々と連帯してきました。(核実験が行われた)ムルロア、エケル、セミパラチンスク、マラリンガ、ビキニといった長く忘れられた地の人々。土地と海を放射線にさらされ、人体実験に使われ、文化を永遠に破壊された人々と連帯してきました。

 しかし、セミパラチンスク核実験場については、まだ日本でも知られていないと思います。




 著者の目標は、広島や長崎で行なわれてきたように、核のない世界を実現するために、被ばく者の証言を、カザフスタンの遺産として保護することであるといいます。

 今回の書籍は、著者が自ら日本語で執筆しました。現地の方々に託されたメッセージを、ぜひ多くの方に知ってもらいたいと思っております。ぜひご高覧ください。


(山口)

2018-06-13

【転載】前川喜平氏と愛ちゃん〔法学館憲法研究所より〕

4月に刊行しました、『小説 司法試験 合格にたどりついた日々』(霧山昴〔ペンネーム〕著)が好評です。

さて著者・永尾廣久さんが、法学館憲法研究所WEB連載「今週の一言」

http://www.jicl.jp

で「河野学校」について書かれていますので転載いたします。

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前川喜平氏と愛ちゃん

2018年6月11日

永尾廣久さん(弁護士)

「河野学校」の衝撃

 今年のはじめ、FBを眺めていると、横浜の弁護士が佐高信の本を取り上げていて、そのなかで、前川喜平氏が「河野学校」の卒業生だと紹介しているのを知りました。ふうん、なんだろうね、河野学校って・・・.ところが、なんと、その校長の名前は河野愛という。ええっ、ひょっとして・・・。私は大学生時代、3年あまりセツルメント活動に没頭していました。川崎市幸区の古市場という工場労働者の多く住む住宅街で青年サークルに入って活動していたのです。同じセツルの法律相談部に愛ちゃんという大柄で明朗闊達なセツラーがいました。愛ちゃんは私と同じ年(1967年)に東大に入学し、2年生の6月から東大闘争がはじまり、一緒に試練をくぐり抜けました。愛ちゃんは東大で水泳部に所属していたのですが、川崎セツルメントに入ってきました。私は青年サークルで活動し、愛ちゃんは法律相談部です。セツルメントの合宿にも愛ちゃんは参加し、大学を出てからどう生きていくのか、民主的インテリとして社会にいかに関わるのか、夜を徹して真剣に議論していました。大勢のセツラーたちが司法試験を目ざし、弁護士あるいは裁判官になっていきました。青法協の会員のまま裁判官になった人も少なくありません。ところが、なぜか、愛ちゃんは司法試験を受験せず、文部省に入りました。その後の消息はまったくありませんでした。

 いったい「河野学校」って何だったのか・・・。私は、さっそく佐高信の本(『葬送譜』(岩波書店))をネットで取り寄せて読んでみました。まぎれもなく私の知っている愛ちゃんのことが書かれていたのです。惜しくも20年前に47歳のとき愛ちゃんは病死しました。文科省の一課長でしかないのに、葬儀には1500人もの参列者があったといいます。追悼集があることが分かりましたので、やはり元キャリア公務員であり、セツラー仲間だった友人に頼んで、なんとか追悼集を手に入れることができました。

「面従腹背」、気骨ある文部官僚

 前川喜平氏は、著書のなかで自分のことを、多くの場面で自分の良心や思想・信条を押し殺して組織の論理に従わせてきた、文科省に入ったときから面従腹背だった、と書いています。

 ところが、愛ちゃんは、文部省のなかで、利益誘導を図るような仕事の仕方をなにより嫌い、権力のある偉い人にこびへつらうことを嫌いました。とてもまっすぐな人で、上司と衝突することも少なくなかったといいます。

 持病をもつ愛ちゃんは、独身を通しましたが、自宅マンションを知人や部下に開放して「サロン・ド・愛」と銘うって、議論する場をつくっていました。

 後輩が弱い者の心が分からない役人にならないよう導いていったのです。若き前川氏や寺脇研氏は、そのサロンの常連でした。キャリア官僚のほか、新聞記者や教授など10人ほどがワイワイガヤガヤ・・・。そのなかで、「文部省も変わっていかなくてはいけない。従来の文部省のタイプの人間ばかり利用しているようではダメ。斬新な発想を文部行政に反映させていかなくては」と愛ちゃんは、熱っぽく語っていたのでした。

 愛ちゃんはリクルート事件に直面したとき、「不正に対して自分の生き方でたたかっていく」と日記に書きしるしました。その正義感が許さなかったのです。

 前川氏は、教育行政官として必要な心構えは次の三つだとしています。

  一つ、教育行政とは、人間の、人間による、人間のための行政である。

  二つ、教育行政は、助け、励まし、支える行政である。

  三つ、教育行政とは、現場から出発して、現場に帰着する行政である。

 すばらしいです。前川氏は、改悪される前の教育基本法の前文を今でも暗誦できるそうです。先輩が、学校っていうのは勉強のできない人間のためにあるんだよと、前川氏にさとしたとのことです。

 弱肉強食の市場競争に子どもたちをさらさず、一人ひとりの学ぶ権利を保障する。これが教育行政の本来の使命だと前川氏は強調しています。まったく同感です。キャリア官僚のなかに、こんなに気骨のある人がいただなんて驚きです。佐川氏や柳瀬氏の臆面もない証言ぶりでがっかりしていましたが、救われる思いです。すべて公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。憲法15条は、このように明記しています。現役の公務員の皆さんに前川氏に続けと叫びたい気分です。少なくとも国民にこそ目を向けてがんばってと励ましたいです。

セツルメント活動って何・・・?

 ところで、セツルメント活動って何ですかと問われると、たしかに困ってしまいます。一般にはボランティア活動だと紹介されることが多いのですが、ちょっと違うのです。イギリスに始まり、日本では関東大震災のあとに大学生による被災者救援活動から始まったとされています。

 東大では医学部生や法学部の学生が数多く参加し、我妻栄川島武宣も加わりました。ところが、その社会的活動が当局からは左翼的活動だと目をつけられ、戦前はついに逼塞してしまいました。

 戦後、よみがえるのですが、私の大学生のころは最盛期で、全国大会(全セツ連大会)になると全国から何百人も集まってきていました。

 その活動は、いま前川喜平氏が仙台と厚木の夜間中学校で教えていますが、あのイメージです。ただ、私たちは、地域での活動(私たちは「実践」と名づけ、絶えず「総括」していました)を通じて自分たちの生き方をお互いに問いかけるということを、とても大切にしていました。そこが、単なるボランティア活動と違うところです。週1回のセツラー会議で実践を総括して文章にし、その総括文集を持ち寄り、たびたび合宿して夜を徹して議論していました。

 セツルメントって、何も危険なサークルではなく、一定の思想でぬり固められた集団でもありません。元セツラーが警察庁長官とか検事総長になったり、自民党の代議士(平沢勝栄氏もセツル法相のOBです)になったりもしています。

 弁護士のなかにも大勢います。これまで14件もの無罪判決をかちとり、NHKが「ブレイブ」という特集番組を放映した今村核弁護士も元セツラーです。私の知る限り、日弁連元会長にも二人の元セツラー(本林徹氏と村越進氏)がいます。また、裁判官のなかにも元セツラーがたくさんいて、ときに気骨ある判決文を書いてくれています。たとえば原発差止裁判で活躍している井戸謙一弁護士もその一人です。

伊予の河野水軍の末裔

 最後に、愛ちゃんについて補足します。愛ちゃんは愛媛県出身。なんと河野水軍の総帥の末裔で、世が世なら河野水軍の御嬢様なんだそうです。

 河野水軍は伊予河野家の水軍部隊で、四国でもっとも古くからの存在、伊予水軍の頂点に立ち、村上水軍もその配下の一水軍なのです。全国にある八幡神宮の本拠である大三島の大山積神社は河野家の神社でもあります。

 こんなことを二人の元セツラー(仁井陽正氏と園尾隆司弁護士)から教えてもらいました。


◆永尾廣久(ながお ひろひさ)さんのプロフィール

1948年 、生まれ(福岡県大牟田市)

1972年 、東京大学法学部卒業

1974年 、弁護士(横浜弁護士会)

2001年 、福岡県弁護士会会長

2002年 、日本弁護士連合会副会長

2011年 、日弁連憲法委員会委員長

弁護士法人しらぬひ・不知火合同法律事務所所長

著書多数。近著に『小説 司法試験 合格にたどりついた日々』(ペンネーム霧山昴著、花伝社)がある。

10年以上「霧山昴」

http://www.fben.jp/bookcolumn/

というペンネームで1日1冊の書評を福岡県弁護士会のHPに掲載している。

弁護士 永尾廣久のブログ

http://hnagao.blog77.fc2.com

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2018-05-25

【新刊案内】加藤哲郎『731部隊と戦後日本――隠蔽と覚醒の情報戦』

 昨年、400ページ、本体価格3500円にもなる研究書を刊行しました!

加藤哲郎『「飽食した悪魔」の戦後』

 731部隊で人体実験・細菌戦を仕掛けた医師が、戦後、金沢と東京で雑誌を刊行したり、銀座や新宿のお医者さんとなったり、文部省公認の性教育展を開催したり、はたまた、イスラムの教祖となったり(!)という、ひと言でいって「すごい」生涯を振り返りつつ、なぜ彼=二木秀雄や、他の3000人以上にも及ぶ関係者が、東京裁判で裁かれなかったのかを、アメリカ側のGHQについての資料からも明らかにした意欲作です。



本の刊行後、以下のような動きがありました。

  1. 2017年8月、NHKスペシャル「731部隊の真実」の放映。
  2. 2017年12月、湯川秀樹1945年日記の公開。「F研究」へ関与の記述。
  3. 2018年1月、NHKBS1スペシャル「731部隊 隊員たちの素顔」の放映。
  4. 2018年4月、「満州第731部隊軍医将校の学位授与の検証を京大に求める会」による、学位論文の検証請求。
  5. 2018年4月、「満州第731部隊軍医将校の学位授与の検証を京大に求める会」が、国立公文書館によって、「関東軍防疫給水部」の「留守名簿」(3607人実名記載)が開示されたと発表。


 そこで、今回、前著をコンパクトな内容にまとめつつ、新事実についても盛り込んでいただいたのが、新刊の

加藤哲郎『731部隊と戦後日本――隠蔽と覚醒の情報戦』

731部隊と戦後日本――隠蔽と覚醒の情報戦

731部隊と戦後日本――隠蔽と覚醒の情報戦

です!



 今回は前著の要約のみならず、上記5つのニュースや、

・ゾルゲが握っていた731部隊の細菌戦情報

・近衛文麿首相の長男、文隆がシベリア抑留ののちに不審死を遂げる。が、そこに731部隊の元隊員たちがどう関与していたか

等々を盛り込んだ1冊になりました。




 この本だけでも、731部隊がいかに戦後の日本へ連続した形で入って溶け込んでいったのかが分かりますし、前著と合わせていただければさらに詳しく、「隠蔽」「免責」「復権」の構造を知ることができます。

 おかげさまで前著『「飽食した悪魔」の戦後』は増刷になりました! この機会に、731部隊に詳しい方も、知らなかったという方も、ぜひご高覧ください。

(山)

2018-05-08 2018年マックス&モーリッツ賞ノミネート作品発表!

弊社から2017年10月に刊行した『マッドジャーマンズ』は、日本翻訳大賞第二次選考対象作品への選出に加え、毎日新聞に掲載された池澤夏樹先生の書評が最後の一押しとなり、ついに増刷になりました!

マッドジャーマンズ  ドイツ移民物語

刊行前は「東ドイツの、しかもモザンビーク人!??」と友人に売れ行きを心配されていたので、非常に嬉しいです。

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(作家ビルギットさんのインタビュー)

温かい言葉をかけてくださった作家のビルギットさん、多和田葉子さん、本を手に取ってくださった読者の方々、熱意を持って売ってくださった書店のみなさま、そしてスムーズな契約をしてくださった代理店の方や、素敵なカバーをデザインしてくださったデザイナーの生沼さま、通常とは異なる入稿方式や本文用紙の選出の相談に乗ってくださった印刷所のTさま、などなど、みなさまにお礼を申し上げます。

さて、前回『マッドジャーマンズ』が大賞を受賞した「マックス&モーリッツ賞」が、いよいよ来月1日に発表されます! それに先立って、ノミネート作品が公表されました。

f:id:kadensha:20180509102202j:image

(ホームページのスクリーンショット、5月9日)

https://www.comic-salon.de/de/nominierungen


「マックス&モーリッツ賞」とは、1984年より続くドイツの権威あるマンガ賞で、バイエルン州にある「エアランゲン国際コミック・サロン」で隔年で発表されています。「最優秀ドイツ語コミック賞」「最優秀インターナショナルコミック賞」「最優秀ドイツ語新聞コミック賞」「最優秀児童コミック賞」「読者層」などの部門がありますが、合わせて25のノミネート作品が既に発表されています。

『マッドジャーマンズ』作家の最新作(5月2日発売!原作はSylvia Ofili)『German Calendar No December』(ドイツのカレンダーには12月がない)も、ノミネートされています。

German Calender No December

日本からは、大今良時さん『聲の形』、

聲の形(1) (講談社コミックス)

望月ミネタロウさん『ちいさこべえ』、

ちいさこべえ 1 (ビッグコミックススペシャル)

浅野いにおさん『デッドデッドデーモンズデデデデストラクション』もノミネートされました! 

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション (6) (ビッグコミックススペシャル)

歴代受賞者には、『はだしのゲン』の中沢啓治先生や、惜しくも亡くなられた谷口ジロー先生も! どなたが3人目の日本人受賞者になるのか、非常に楽しみです。

ドイツ語コミックについては情報がまだまだ十分とは言えないので、自分で調べる機会に加え、紹介の意味でもブログを更新してみました。まだまだ多くの出版社・読者の方へ、素晴らしいドイツ語コミックの世界が伝わるように、弊社としても、そして個人的にも、頑張っていこうと思っています。情報をお持ちの方、ぜひぜひ教えてくださいませ!


(山口)