カエルニッキ

ド・ザイナー。

『聖の青春』


『聖の青春』を観てきました。18年前、29歳で亡くなった将棋棋士 村山聖さんを題材にした、大崎善生の『聖の青春』の映画化です。壮絶でした。村山聖さんの将棋と共に生きた様、彼が残した言葉の死生観がリアルすぎて、涙も出ませんでした。

小さい頃に「ネフローゼ症候群」を発症し、入院生活から将棋に没頭するようになり、以後、29歳癌で亡くなるまで将棋と駆け抜けた生涯でした。将棋以外は無頓着というのも、恐ろしかった。入院しなければ将棋と出会えなかったと、病気を否定するようなことは言わなかったそうです。

映画の番宣で放送されたテレビのドキュメントでは、羽生善治さんが、村山さんの将棋は、中盤から終盤にかけて、予想外の鬼手を指してくるというようなことを言っていて、その粘り強さは、人の何倍も苦しみ慣れているからなのかなと思いました。

映画では彼の中の辛さは、観る人の想像力に頼るところはあるけれど、こうであったろうの対局中の心情描写で、画角を変えた繰り返しの場面が、グッと来ました。勝負の激流の中で、羽生さんと村山さんの飲み屋さんでの会話のシーンがすごく和みました。

最大の見せ場だった、羽生さんとの最後の対局シーンは、実際とスーツも同じ色で、本人かと見まごうほどの後ろ姿。松山ケンイチさんも東出さんも、役作りのために棋譜覚えまくったと言っていたけれど、演じる方も相当です。

将棋全然知らないのに、この映画を見に行こうと思ったきっかけですが、大好きなコミック『3月のライオン』主人公の桐山零くんの自称、親友・二階堂くんが、村山聖がモデルだと知って、がぜん興味が湧いたのでした。

3月のライオンの中では、二階堂くんは、じいやに健康管理の行き届いた食事を用意してもらったり、零くんの親友だと公言しては、零くんの自暴自棄になるところを指摘して、もっと「自分を大事にしろ」ととても熱いコールを寄せるのです。体調が悪くても絶対倒れない、将棋に対しての情熱は村山聖そのもの。ただ、二階堂くんはお酒も麻雀もやらずに、ちょっと安心感があります。

この秋からはアニメ放映もはじまったTVアニメ「3月のライオン」こちらは作者の羽海野チカ先生たっての希望で、アニメーション制作はシャフトが手がけていて、世界観を壊さず、3月のライオンの中にある激情をみごと映像化している作品です。

来年には実写映画も公開予定。たのしみです。


16.12.06