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2009-04-08

世界国家の話(2)−国家の終焉 賀川豊彦

 「最近の攻撃武器の発達は、歴史上その比を見ない大量の人殺しの手段を作り出しました。これ等の兵器は他からの攻撃を防ぐというよりは、はるかに侵略に役立ちます。ですから、もし将来戦争の起きるのを放任すれば、人類の大部分は滅び、都市は壊され、土地さえも毒を受けてしまうことになるでしょう」。

 こういっているのは、世界的科学者としてその名を知らぬ者もないアインスタイン博士です。原子爆弾のような、世にもおそろしい攻撃武器が発明されて、現に広島ではたった一発の原子爆弾のために死者24万の犠牲者を出したほどです。その後の研究で、さらに破壊力を増大した原子爆弾水素爆弾のような攻撃武器が、敵味方によって使用されることとなれば、アインスタイン博士のいわれるように、人類の大部分の滅びる日が来ないとは、誰も保証できないのです。そこで、博士はいっています。

「こうした破壊から人類を救う方法は一つある。それは世界政府の創設であります。世界政府がすべてのこうした兵器を管理し、必要なる機関を設置し、今まで戦争の原因となっていた凡ての事項について、法を制定し得る権限をもつことにしなければなりません」

 こういって、世界政府を作ることが、人類を破滅から救う唯一の道であり、自殺的な文明の破壊を防ぐ唯一の方法だといっているのです、博士は、この方法が唯一であるばかりか「一番安上がりの方法」だともいっているのです。そうでしょう。世界国家が出来れば諸国家間に起こる紛争は、すべて戦争のような暴力手段に訴えることなく、大法院や最高法廷で審理するのですから、厖大な軍備も不要となり、兵員の育成や、兵器の発明や製造に憂き身をやつすこともなくなって、各国の財政も楽になるでしょう。そうした物質的な利益よりも、人類が互いに殺し合わず、互いに愛し合い、助け合うことが出来るという精神的よろこびは、何ものにも変えがたいといわねばなりません。

 アメリカシカゴ大学名誉総長ハッチンス博士を首班とする世界憲法起草委員会が起草した世界憲法草案の前文を読みますと、世界連邦の成員は、三つの義務を負うべきだとしています。

 その一は、みんなが、その才能に応じ、生産的な働きをして、みんなのために奉仕すること、
 その二は、みんなが、わがままをいったり、したりしないで、人にせられんと思うことを、人にもすること。
 その三は、みんなが、お互いに暴力を排撃して、法律で命ぜられ、許された場合の他は一切暴力を禁ずること、

 これ己のごとく隣を愛せんとする――隣人愛の精神に基づく三つの義務と奉仕の上に、世界国家は築かれるので、他を虐待したり奴隷のように酷使したり、搾取したりすることは、右の義務と奉仕にそむくものですから許されません。人種的な差別も許されません。征服とか、圧制とかの支配も許されません。戦争の如き暴力行為は堅き禁制です。世界連邦の人間は、これ等のことを彼自身およびその同胞のために主張し、支持する権利をもっているのです。

 この権利と義務の下に、人生に必要なる4要素(1)土地(2)水(3)空気(4)エネルギーはすべて人類の協同の財産とすることができて、これにより人類は、欠乏と恐怖から救われ奴隷化から救われるのです。

 それならば、世界連邦ができれば、日本という国家がなくなり、わたしたちは日本人でなくなってしまうのかというと、そうではないのです。最近の新聞で、日本の国籍を離れ、世界市民になろうとする人のあることが報ぜられていたのをお読みになったでしょうが、世界連邦の市民になるのには、国籍を離れる必要はないどころか、どこにも国籍のないなどという人は認められないのです。日本という国家は、世界連邦が出来ても現存し、わたしたちは日本の国民であると共に、世界連邦の一員なのです。

 しかし、ここで一番大切なことは、昔のように国と国とが対立し、競争し、にらみあう「国家時代」が既に終わりを告げて、「全人類時代」が来つつあるということを知ることです、わたしたちの兄弟は「国家のため」という美名の下に、戦争に駆り立てられたりしました。しかし、そうした時代は既にすぎて、「人類のため」という旗印の下に、四海同胞の意識をもって、人類共通の目的である人間の精神上、および物質上の福祉増進のために、平和と正義を確保しなければならない時に到達したのです。
 では、そのために、われわれはどうすればいのか、世界憲法草案の前文は次の如く言っているのです。

 ――かかる意見に一致した以上、もろもろの政府は、個々に分離せる主権を一つの正義、公正なる政府(世界政府)の下に整備し、各国の武器をこれに引き渡し、今此処に制定する憲法世界連邦共和国の盟約とし、またその基本法として制定することに決定するものである――。

 つまり、各国がその主権の一部を割き、これを世界の一つの政府――世界連邦政府に移譲します。そして、何より先ず各国個々の軍備を撤廃し、世界議会を開き、世界行政府を立て、世界裁判所を設け、世界警察を置き、世界が一つの法の下に治まっていく仕組み、すなわち一つの法治社会としようというのです。つまり、世界国が生まれるのです。ですから、これを日本人について云いますと、主権は昔のように「天皇にある」のではないばかりか、この国々が最高絶対の主権を振り回すのでもなく、もともと人間にある主権のうちから、何千人か何万人かに関係のある事柄についての主権を出し合わせて、第一の政府――市町村制を作り、百万人か二、三百万人かに関係ある事柄については第二の政府――府県制を作り、何千万人かに関係ある事柄については第三の政府――国家を作っているように、さらに二十四億人の全人類に関係ある事柄を処理していくために世界国を作る――その世界国が出来ても、めいめいの国はあるのですから、そこでこの世界国のことを、世界連邦というわけなのです。

 さてこの世界政府に、何々の事柄を委せようかというかということは、相談のしようで、いかようにも決められるのですが、何をおいても、個々の国家に委託していた武力主権――戦争をするとかしないとか、軍備をするとかしないとか――軍備・国防・外交などに関する権限を、各自国の政府から取り返して、これを新しく作る一つの政府に委託して行わせるのです。こうなれば、この国家は、国民から武力主権を委せられていないのですから、たとえ国家間に何かの紛争が起こったとしても、各国が武力を行使できるはずもなく、つまり戦争が不可能になり、不必要になるのです。

 それなら、国と国との間の紛争は、どうやって解決をつけるかというと、それは、ちょうど現在の一国の中で、或る集団と集団との争いが、戦争によらないで、法で裁きがついているように、それは世界政府の審判によって解決されるのです。つまり世界法に基づいて処理され、判らないことは世界裁判所裁判し、法に従わないものがあれば、世界警察が其の委ねられた権力で、始末するのです。

 今日まで、国際連盟国際連合のような世界平和の維持を目的とする国際組織が作られても、それらは戦争防止の力がなかったのは、バラバラの各国が絶対主権を振り回して、それぞれ自国の利益を主張しあうばかりで、全人類が一つに結合した世界国はなかったのです。世界連邦はこの点に鑑み、世界24億人の人間が、めいめい市町村や国の政府をもちながら、さらにその上に、唯一の共通の政府――世界政府をもつことにするのです、こうして初めて、世界の土地と水と空気とエネルギーとを、真に人類の共同の財産とすることもでき、国家間の戦争をなくすることも出来るのです。

 では、世界連邦はどうして組織するか、これが問題です、連邦は決して一国が全世界を征服するのではなく、全世界が法を定めて、これを連邦の盟約とする連合体ですから、その立法司法行政の各組織は、世界連帯意識――判り易くいえば、24億の心と心が、一本の帯のようにつながる相互信頼、相互扶助の精神の上に立てられねばならないのです。

 この点は、まさにスイス連邦アメリカ合衆国のそれに似ているといえましょう。政府の機関の中で、一番大切なのは立法機関――つまり議会ですが、シカゴ案によりますと、この議会両院制で、世界人民代表大会(下院)と世界連邦総会(上院)の二つとします。

 世界人民代表大会は「主権在民世界民」の精神に基づき、世界中から人口百万人につき一人の割で、一般投票により代表を選出するので、世界の人口24億人とすれば、2400人の代表が出るわけです。会期は3年に1回。世界連邦組織に関する重大な事柄を決議し、世界連邦総会を開く準備もするのです。(今のところ1955年を期して、連邦政府を樹立し、第1回の総会を開こうとしています)

 世界連邦総会の議員は、人民代表大会が選挙するもので、その議員の比例を公平にするため、全世界を九つの選挙地区に分け、一地区から27人ずつの候補者を選出し、その中から大会で一地区から9人ずつ、合計81人の議員選挙する。一方別に、地区選出によらない連邦総会の推薦した議員18人を加え、計99人よりなる常設連邦議会が成立し、これが世界連邦政府の最高立法府となるのです。

 なお連邦総会議員の9つの選挙地区というのは、極東、南洋、印度中東及び近東、ロシア及びその衛星国アフリカ、西ヨーロッパ、北米南米で、極東地区には中国韓国、日本が含まれ、南洋地区には豪州フィリピンインドネシアも含まれているのです。

 世界連邦が出来たら、みなさんの中から世界連邦総会の議員も出ることでしょう。

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