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2009-04-17

「世界国家の話」(8)−人種平等の原則 賀川豊彦


 白人のほか、お断り

 世界憲法シカゴ案が最も力を注いでいるのは、前回にお話しした経済的平等と、もう一つは人種平等の原則です。あらゆる人種的差別は撤廃されて、全地球上の人種は一切平等の権利義務をもつというのです。

 今日では、もうそんなことはありませんが、4、50年も前までは、欧米先進国の都市には、店頭に「ホワイト・オンリー」(白人のほかお断り)という札を出していた向きもあつたのです、つまりそこへは黒人も、われわれ黄色人種もオフ・リミットだつたのです。また最近でも、ところによつては、黒人を泊めないホテルがあります。それで、万国会議などを開く場合、そうした差別を一切しない都市を選ぶために、頭をひねるということです。また中国上海などで、外人の居留地の栄えた頃には、中国の領土でありながら、「中国人と犬は入るべからず」と立て札をした公園があつたとさえ、いわれていました。そうした人種差別は、だんだん減つて来てはいますが、決してなくなつてはいないのです。

 全人類で一つの文明人種を色が白いから、黒いからといつて、人間に甲乙を、つけるなんて、およそ理由がありません。人間は、嗜好品や美術品ではないのです。世界連邦は、(シカゴの案は)その憲法の冒頭に「地球全地の人民は・・・」と書き起して、人種平等の原則に立つことを明らかにしています。そして、いわゆる選ばれた民と奴隷、特権階級下層階級の区別を認めません。凡べての人種差別は、拭い去つて、全人類が一つの(たつた一つの)文明人種を作り出すようにと、意気ごんでいるのです。

 奴隷状態は許されない

 もう少し具体的に説明しますと、シカゴ案第28条は、世界共和国または、その構成単位の国家や団体は次のような条項を、その国の法律に規定してはならぬし、またたとえ規定していも、それは無効だと定めているのです。

1. 人種、民族、姓、階級、信条または教義に対する差別を設け、またはこれを容認すること。
2. 優先的協定または既得権益の結合によつて、或る国家または民族が、平等に原料を入手したり、土地のエネルギーの源を利用することを妨げること。
3. 公然または隠然でも、奴隷状態を強制したり、また容認すること。

 つまりこの規定によつて、「ホワイト・オンリー」などということは許されないし、「アンクルトムの小屋」のような黒人奴隷などは、絶対に、あり得ないことになるのです。

 白人に下風に立つのは、しかたがないでしょう−−と。しかたがないというのは、誰がいうのです。文化が遅れているからといつて、これを軽蔑してはなりません、彼らも同じ人間です。彼らに白人と同じ文化を与えて人類の繁栄をはかることこそ、人類に義務といわねばなりません。

 アフリカ土人にも義務教育

 「国家時代」には、文化の進んだ強大国が、文化の遅れた弱小民族を搾取し、支配し、奴隷状態におくことを許しました。しかし、「全人類時代」の世界連邦は、もはや、そうした奴隷状態や、強制労働を許しません。いいや、許さぬどころか、これらの文化の遅れた民族を、他の先進国と同様の水準まで引き上げることを、連邦の義務と考えているのです。

 たとえば、教育です、白人は大学、大学院まで進みますが、黒人となると大学はおろか、ハイスクールに進む者も稀で、義務教育さえ、受けない者が多いのです。そこで、連邦は7歳から12歳までの次号の義務教育を規定し、この義務を果たすことのできないような社会は、国家に対しては、それがいかなる人種であろうと(つまりアフリカの土人でも)、連邦金庫によつて援助されることを規定しているのです。また養老年金失業救済、疾病傷害保険、母子保護などの社会保障制度についても同様で、これを実施する力のない団体や国家は、連邦政府の監視の下に管理されて、補助金や特恵的貸付金が支給されることになります。

 なお世界連邦では、人種差別の行われないよう、前に述べた護民官(世界の少数者、弱者の味方)が目を光らせていて、法律の不公平な適用から個人や集団をまもり、また差別法律に対し上級裁判所へ提訴する権利も、与えられているのです。

 ここで問題になるのは、植民地です。アフリカその他の黒人たちの国は、無知蒙昧であつたため、強国に侵略され、その植民地になつていますが、これは土地と水と空気とエネルギーを人類の共同財産とする世界連邦にあつては、許されぬこととなります。もしこれを放任せば、世界連邦は「反動の機関」となり、「既存の利益や既得権の防壁」という批判を、甘んじて受けなければなりません。この植民地問題は一つの大きな難問題といえましょう。そこで、ルクセンブルグ草案では、

「自主統治の能力をもつ従来の植民地は独立の地位を得て、今までの母国との特別な紐帯を持続するかどうかについて、その採否を委ねられる自主統治の準備のまだできていない植民地世界連邦政府に信託統治の下に、できるだけ早く、自主統治に対する準備を整うべきである」

と妥協点を指示しているようです。

 移民問題も、日本などにとつては問題であります。シカゴ案では「移民と人口移動に関する法律を監視し承認すること」と規定しているだけですが、少なくともアジア人を閉め出すというようなことは、なくなるに違いありません。また連邦旅券というものを規定していますから、今日のように、一々の国の査証をもらつたり、国境毎に厳重な旅券検査をうけたりすることは、なくなるでしょうから、世界旅行は、らくになるでしょう。

 世界連邦は夢ではない

 わたしは、以上、世界憲法シカゴ案について、世界国家の機能や組織についてお話しして来ましたが、シカゴ案のほかにも、いく通りか案があり、また実現の方法としても、国際連合を修正して世界連邦へもつて行こうとする論者もあり、いろいろです。かと思うと、世界連邦は夢だ、ユートピアだという論者も、今なおそのあとをたちません。有名なニーバーのごときも、その一人です。

 しかし、現在さかんに活躍している国際連合のような組織も、嘗ては夢だ、ユートピアだといわれたのではありませんか。第二次世界大戦後、「三度も大戦を経験してはたまらない」としてこれが実現を見たのです。

 つまり、必要は夢を現実に変えるのです。原子爆弾の脅威が加わり、その他、科学兵器の発明などにより、世界の崩壊が気ずかわれている時、戦争回避の必要性は、そのことだけからも、世界連邦を現実にせずにはおかないでしょう。

 こうするほかに、世界を守る道はないのです。

 世界連邦の樹立よりほかには−−。

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