週刊 奥の院

kaibundo2010-06-03


週刊 奥の院 第58号 2010.6.4
◇6月のブックフェア 
■「福原遷都830年 源平フェア」 6.1〜6.30 1Fレジ前平台
古書店ロードス書房」さんに出品をお願いしたら、
「えらいまた中途半端な年数ですな」と呆れられた。
「だって、850年までワテ生きてませんもん」と応じた。
 さすが歴史物が強い「ロードス」さん、「神戸史談」「歴史と神戸」「神戸市史」のほか、生田神社の神主さんの本まで出してくれた。そのうえ高価な版画も。
 年章「源平盛衰記 生田の森の戦 梶原景季」(明治30年) 3枚組39,900円
 河鍋暁斎東海道名所之内 兵庫筑嶋寺」(文久3年) 52,500円
 レジに展示しています。
 ここでは「梶原景季」を紹介。有名な「箙(えびら)の梅」の場面。今も生田神社境内に残る梅の木。景季が生田の森の合戦で箙(矢を入れる筒)に梅の一枝を挿して戦った、その優美な様が「盛衰記」や「平家物語」に描かれている。
 元町通3丁目(海文堂と町内)にある「えびら飴本舗」は、「箙の梅」にちなみ、梅は味が長く変わらないということでこの名をつけたとか。明治43年創業の老舗。残念ながらこの5月末で廃業された。同店によると、当時の武士の心構えとして弓矢は最後まで1本残しておくべきところを、景季は使い果たしてしまい、矢の代わりに梅を挿したそうだ。版画の絵とは解釈が違ってくる。
 さて、福原京は実際には1180年のうち半年間だけ。しかし、清盛は政権を掌握した1169年に京を離れ、この地に退隠して政治を動かしている。貴族政治と離れるという意味で頼朝の良き先例となった

◇元町の作家。
■中野明 『裸はいつから恥ずかしくなったか 日本人の羞恥心』 
新潮選書 1200円+税
著者は元町に事務所を構える。経営理論の解説や企業史、技術史の著書多数。
150年前日本にきたドイツ人の外交官で画家ウィリアム・ハイネが描いた「下田公衆浴場図」(男女混浴が描かれる)を出発点に、日本人の裸体観の変遷を見る。
日本人の「性」はおおらかだった? だらしなかった? 浮世絵の春画はどう見ても「パロディー」。都会ではそれなりにきちんとしてた? 江戸の風呂でも混浴だったらしい。田舎の下層民は裸同然で活動していたかもしれない……。外国だってそれなりに公衆道徳とか清潔・不潔の観念は時代時代でいろいろあったでしょう。1冊の本で謎は解けるか?
 
◇神戸の本
■『歴史と神戸』第280号 神戸史学会 630円(税込)
特集 神戸新興芸術運動とその周辺
・自伝の虚と実 林喜芳『神戸文芸雑兵物語』を中心に  高木伸夫
・ダダの目覚め 『横顔』の受川三九郎  季村敏夫
・火を継ぐ者の意思と試み 季村敏夫『山上の蜘蛛』を読む  加納成治

当店のイベントほか多大なるご協力をしてくださっている季村さん(詩人)と加納さん(尼崎の古書店街の草」店主)が揃って寄稿しておられる。
また「落合重信記念賞」(歴史文化の振興に貢献した団体・個人に贈呈)に、「歴史資料ネットワーク」が選ばれている。震災後若手研究者たちが、被災地での資料保存活動や災害の際の地域歴史遺産の情報センター的役割を果している。平家ゆかりの遺跡保存活動もこのグループによる。

◇今週のもっと奥まで〜
小池昌代 『怪訝山』 講談社 1700円+税
イナモリは複製画販売。パーティーと称する販売会で富裕層に売る。実際の販売は部下の女性たち。ひとりの部下とだけ会話がある。互いが繰り返し見るの話。イナモリのは階段を降りていく夢、深く降りても行きつけない。現実でも道に迷い、山で死にかけたりする。休日は夢と現実の世界を漂っている。仕事で伊豆に。泊まるホテルにはなじみの仲居コマコがいる。彼女といると安らぎ、慈しみのような気持ちが広がり、感謝したくなる。コマコは「山」の絵を見て「山は何かを隠している、死体とか悪意とか……」と。ふたりで近くの山に登る。洞穴の中で寝ようと彼女が誘う。
引用は紙版でじっくり。
(平野)

週刊 奥の院

週刊 奥の院 第58号 2010.6.4
◇6月のブックフェア 
■「福原遷都830年 源平フェア」 6.1〜6.30 1Fレジ前平台
古書店ロードス書房」さんに出品をお願いしたら、
「えらいまた中途半端な年数ですな」と呆れられた。
「だって、850年までワテ生きてませんもん」と応じた。
 さすが歴史物が強い「ロードス」さん、「神戸史談」「歴史と神戸」「神戸市史」のほか、生田神社の神主さんの本まで出してくれた。そのうえ高価な版画も。
 年章「源平盛衰記 生田の森の戦 梶原景季」(明治30年) 3枚組39,900円
 河鍋暁斎東海道名所之内 兵庫筑嶋寺」(文久3年) 52,500円
 レジに展示しています。
 ここでは「梶原景季」を紹介。有名な「箙(えびら)の梅」の場面。今も生田神社境内に残る梅の木。景季が生田の森の合戦で箙(矢を入れる筒)に梅の一枝を挿して戦った、その優美な様が「盛衰記」や「平家物語」に描かれている。
 元町通3丁目(海文堂と町内)にある「えびら飴本舗」は、「箙の梅」にちなみ、梅は味が長く変わらないということでこの名をつけたとか。明治43年創業の老舗。残念ながらこの5月末で廃業された。同店によると、当時の武士の心構えとして弓矢は最後まで1本残しておくべきところを、景季は使い果たしてしまい、矢の代わりに梅を挿したそうだ。版画の絵とは解釈が違ってくる。
 さて、福原京は実際には1180年のうち半年間だけ。しかし、清盛は政権を掌握した1169年に京を離れ、この地に退隠して政治を動かしている。貴族政治と離れるという意味で頼朝の良き先例となった

◇元町の作家。
■中野明 『裸はいつから恥ずかしくなったか 日本人の羞恥心』 
新潮選書 1200円+税
著者は元町に事務所を構える。経営理論の解説や企業史、技術史の著書多数。
150年前日本にきたドイツ人の外交官で画家ウィリアム・ハイネが描いた「下田公衆浴場図」(男女混浴が描かれる)を出発点に、日本人の裸体観の変遷を見る。
日本人の「性」はおおらかだった? だらしなかった? 浮世絵の春画はどう見ても「パロディー」。都会ではそれなりにきちんとしてた? 江戸の風呂でも混浴だったらしい。田舎の下層民は裸同然で活動していたかもしれない……。外国だってそれなりに公衆道徳とか清潔・不潔の観念は時代時代でいろいろあったでしょう。1冊の本で謎は解けるか?
 
◇神戸の本
■『歴史と神戸』第280号 神戸史学会 630円(税込)
特集 神戸新興芸術運動とその周辺
・自伝の虚と実 林喜芳『神戸文芸雑兵物語』を中心に  高木伸夫
・ダダの目覚め 『横顔』の受川三九郎  季村敏夫
・火を継ぐ者の意思と試み 季村敏夫『山上の蜘蛛』を読む  加納成治

当店のイベントほか多大なるご協力をしてくださっている季村さん(詩人)と加納さん(尼崎の古書店街の草」店主)が揃って寄稿しておられる。
また「落合重信記念賞」(歴史文化の振興に貢献した団体・個人に贈呈)に、「歴史資料ネットワーク」が選ばれている。震災後若手研究者たちが、被災地での資料保存活動や災害の際の地域歴史遺産の情報センター的役割を果している。平家ゆかりの遺跡保存活動もこのグループによる。

◇今週のもっと奥まで〜
小池昌代 『怪訝山』 講談社 1700円+税
イナモリは複製画販売。パーティーと称する販売会で富裕層に売る。実際の販売は部下の女性たち。ひとりの部下とだけ会話がある。互いが繰り返し見るの話。イナモリのは階段を降りていく夢、深く降りても行きつけない。現実でも道に迷い、山で死にかけたりする。休日は夢と現実の世界を漂っている。仕事で伊豆に。泊まるホテルにはなじみの仲居コマコがいる。彼女といると安らぎ、慈しみのような気持ちが広がり、感謝したくなる。コマコは「山」の絵を見て「山は何かを隠している、死体とか悪意とか……」と。ふたりで近くの山に登る。洞穴の中で寝ようと彼女が誘う。
引用は紙版でじっくり。
(平野)