週刊 奥の院 第87号+1の2

安丸

安丸良夫・喜安朗 編 『戦後知の可能性 歴史・宗教・民衆』 山川出版社 3500円+税
 まえがき 林淳

 序章  戦後知の変貌 安丸良夫  

 第1章 石母田正と敗北の思考 磯前順一

 第2章 丸山眞男の宗教理解 島薗進  

 第3章 竹内好イスラム観 臼杵

 第4章 吉本隆明の思想と宗教 島薗進  

 第5章 村上重良の近代宗教史研究 林淳 

 第6章 黒田俊雄の中世宗教史研究 安丸良夫

 第7章 網野善彦における絶対自由の精神 喜安朗

 第8章 色川大吉と戦後歴史学 安丸良夫

 第9章 宮田登民俗学の変貌 林淳

 第10章 柄谷行人から酒井直樹へ 磯前順一

 終章 変貌する知識人 磯前順一

 あとがき  喜安朗

 歴史・宗教・民衆研究会(1999〜2008年)の論文集。会は安丸の著作の読書会から始まった。「戦後知」とは安丸の発案による新語。

 丸山、石母田、竹内は戦中から知識探求を始めながらも、戦後の知識人第一世代として活動した。彼らを批判的に継承したのが、歴史学では色川、黒田、網野、さらに喜安、安丸。宗教学では村上。それに知識人批判吉本。60年代末、文化人類学山口昌男民俗学の宮田が登場、構造主義と社会史がブームに。80年代以降ポストモダニズム、ポストコロニアリズム

 ・・・・・・本書における戦後知の系譜学は、戦後啓蒙主義の遺産を批判的に継承しつつも、それを越えてどのような思考が現在、可能になっているのか、現在から将来に至る思考の可能性を模索する試みでもある・・・・・・

 ここまで(まえがき 林)から。

 

戦後はわれわれにとって、はるか後方に遠ざかっているようにみえる。現在は「グローバル化」の時代だとされる。ネグリとハートの著書『帝国』は、通俗的な「グローバル化」の言説を排して、社会が「起立社会」から「管理社会」に転化し、電子情報による世界的なネットワーク化などによって、世界資本主義はいまや国民国家の外に世界的な権力構成=「帝国」を形成しつつあることを詳細に論ずるに至っている。それは新しい世界的状況のなかで戦後知とは異なるあたらしい学知が形成されてきたことを象徴しているようにみえる。

(あとがき 喜安)

 戦争。知識人たちは敗戦濃厚であることを感じ取っていたはず。若い世代は「死」を覚悟しただろう。生き残った彼らの、無力感、後悔、反省、希望やら理想や責任や・・・・・・、さまざまを背負い、戦後の問題に積極的にかかわり、発言してきた。

(平野)

週刊 奥の院 第87号+1の2

安丸良夫・喜安朗 編 『戦後知の可能性 歴史・宗教・民衆』 山川出版社 3500円+税
 まえがき 林淳

 序章  戦後知の変貌 安丸良夫  

 第1章 石母田正と敗北の思考 磯前順一

 第2章 丸山眞男の宗教理解 島薗進  

 第3章 竹内好イスラム観 臼杵

 第4章 吉本隆明の思想と宗教 島薗進  

 第5章 村上重良の近代宗教史研究 林淳 

 第6章 黒田俊雄の中世宗教史研究 安丸良夫

 第7章 網野善彦における絶対自由の精神 喜安朗

 第8章 色川大吉と戦後歴史学 安丸良夫

 第9章 宮田登民俗学の変貌 林淳

 第10章 柄谷行人から酒井直樹へ 磯前順一

 終章 変貌する知識人 磯前順一

 あとがき  喜安朗

 歴史・宗教・民衆研究会(1999〜2008年)の論文集。会は安丸の著作の読書会から始まった。「戦後知」とは安丸の発案による新語。

 丸山、石母田、竹内は戦中から知識探求を始めながらも、戦後の知識人第一世代として活動した。彼らを批判的に継承したのが、歴史学では色川、黒田、網野、さらに喜安、安丸。宗教学では村上。それに知識人批判吉本。60年代末、文化人類学山口昌男民俗学の宮田が登場、構造主義と社会史がブームに。80年代以降ポストモダニズム、ポストコロニアリズム

 ・・・・・・本書における戦後知の系譜学は、戦後啓蒙主義の遺産を批判的に継承しつつも、それを越えてどのような思考が現在、可能になっているのか、現在から将来に至る思考の可能性を模索する試みでもある・・・・・・

 ここまで(まえがき 林)から。

 

戦後はわれわれにとって、はるか後方に遠ざかっているようにみえる。現在は「グローバル化」の時代だとされる。ネグリとハートの著書『帝国』は、通俗的な「グローバル化」の言説を排して、社会が「起立社会」から「管理社会」に転化し、電子情報による世界的なネットワーク化などによって、世界資本主義はいまや国民国家の外に世界的な権力構成=「帝国」を形成しつつあることを詳細に論ずるに至っている。それは新しい世界的状況のなかで戦後知とは異なるあたらしい学知が形成されてきたことを象徴しているようにみえる。

(あとがき 喜安)

 戦争。知識人たちは敗戦濃厚であることを感じ取っていたはず。若い世代は「死」を覚悟しただろう。生き残った彼らの、無力感、後悔、反省、希望やら理想や責任や・・・・・・、さまざまを背負い、戦後の問題に積極的にかかわり、発言してきた。

(平野)