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Something Orange このページをアンテナに追加

2005-01-18(火)


柴犬―森田まさのり短編集 (ヤングジャンプコミックス)

柴犬―森田まさのり短編集 (ヤングジャンプコミックス)

 読了。

 「ろくでなしブルース」、「ROOKIES」の森田まさのり2冊目の短編集。「長編よりも短編が好き」と公言する作家だけあって、実にたくみな作品ぞろい。巻頭のオールカラーショートショートに始まって、コメディからボクシング漫画に至るまで、実にさまざまな作品が掲載されているが、白眉はもちろん表題作「柴犬」。

 若手人気お笑いコンビ「柴犬」を主人公とした、おそらく類をみない精度のお笑い漫画である。「週刊少年ジャンプ」掲載の「スベルヲイトワズ」もよかったが、こちらも秀作。題材はお笑いでも、雰囲気はひたすらシリアス。一心同体だった柴犬に亀裂が生じ、夢が砕けていくさまを真摯に描く。森田は今日も夢を追う男たちだけを追いかけている。


Landreaall 5 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

Landreaall 5 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

王の首というものは
いつか国民全員の命と引き換えに
落ちるためにあるのさ

 読了。

 竜退治の偉業を果たしたあと失恋し、頭のなかからっぽになってしまったDXの学園生活編第2弾。ふつうなら嬉し楽しい学園ライフも、先天的にやる気がないこの男にとっては平凡な日常。しかも王侯貴族の子弟が通うこの学園では、いろいろとときな臭い陰謀が渦巻いている。王家の血を引き、将来的には玉座に就く可能性もあるDXを巡り、水面下ではさまざまな駆け引きが続いているのだ。

 DXの父を巡る「革命の真実」とは? DXの婚約者「ではなかった」アンちゃんの正体とは? あらゆる謎がDXを包囲するなか、しかしDXとその妹イオンはそんなことは全然気にせずに決闘したり恋愛したりするのだった。という内容の学園編第2巻なのですが、ファンタジー色全開だった前3巻とはうってかわって王道の学園漫画になっていて、実におもしろい。

 少年たちが衝突を繰り返しながら次第に絆を深めていく男子部も、「マリみて」ライクな女子部も、本当に楽しそう。しかしその影で、さりげなく生まれによってまったく別の階級に所属することになってしまう階級社会が描けているのには感心してしまいます。こういうなにげない心配りのひとつひとつが本物の「異世界」を創る。

 とはいえ、現在のお話あきらかに次の展開への準備段階で、物語としてはほとんど進展はないのですが、あとあとへの伏線らしいものはいくつも張られていて、今後への期待を高めます。ああ、おもしろかった。とりあえずシスコン大爆発のDXが必見。あらゆることに適当な男が最愛の妹(ただし本人は自覚ゼロ)のためにだけは真剣に怒る! かっこいいよ。

 この漫画は本当にセンスが良くて、軽快で、オススメなのでしつこく褒めておこう。少年たちの学園生活と少女たちのそれ、どちらか片方ならうまく描ける作家はいくらでもいるけれど、その両方をこうまで軽妙に描ける作家って少ないんじゃないかな。読んでいると男の子も女の子も、どっちもいいなあと素直に思う。性転換でもしなければ片方しか経験できないのは残念なことだ。

 なにより多様な人物がいい。美形もいれば普通の顔もいる。英雄もいれば凡人もいる。貴族もいれば平民も、やせもいればデブもいるこのあざやかに多彩な世界。やっぱりさ、こうでなきゃだめだよ。髪型だけ違う美形がずらりとそろった世界はどこか気持ち悪い。恋愛とセックスしか喜びがない世界は、安逸ではあっても狭くて退屈。

 多様な価値観をもつ多彩な人物たちが、それぞれの愛と、それぞれの思惑と、それぞれの野心のために絡み合う。大河群像物語というにはあまりにキュートでポップな漫画だけれど、しかしこの人物の描き分けの妙は本当にすばらしい。魅力的な脇役たちがいるからこそ、主役であるDXやイオンの存在感が引き立つんだから。

 はてさて、辺境の公子、第四王位継承権者にして竜退治の英雄であるDXが、この表紙のように王冠を戴く日は来るのでしょうか? DXの性格からして、自分から玉座を目指したりはしないだろうけど、周囲の意思ははたしてかれにいまの放蕩の暮らしを赦すのか、予断を赦さない状況です。立派な王様になってほしいですね。む、むりか。