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Something Orange このページをアンテナに追加

2007-09-30(日)

 ネルフは碇シンジに報酬を払えよ。


 その日、巨大組織ネルフを統帥する父ゲンドウから呼び出された碇シンジは、汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンへの搭乗を命じられる。

 一度は困惑し、拒絶するものの、傷だらけになりながらエヴァに乗りこもうとする同年輩の少女を見て、かれは自分自身に語りかけた。「逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ」。

 そして、恐怖と困惑を押し殺してエヴァンゲリオンに乗りこむのだった。長い物語の始まりである。

 この『新世紀エヴァンゲリオン』第1話に対しては昔から賛否両論があるのだが、今回取り上げたいのは別のこと。

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 つまり、シンちゃんってただ働きですよね? ネルフからお給料もらっていないよね? ということなんですけど。

 もちろん、ミサトのマンションに同居してはいるから、住宅は提供されているわけだけれど、それ以外にはとくに報酬をもらっているようには見えない。

 たぶんミサトから生活費や小遣いは出ているでしょうが、それだけじゃ命がけの仕事に見合うものじゃないよね。10年前に初めて『エヴァ』を見たときからここが不思議でね。

 シンジは「逃げちゃだめだ」と痛々しく自分を追い詰めるわけですが、本来、かれがそんなふうに悩まなければならない理由は、何もない。

 かれ自身にはエヴァに乗るべき義務も責任もないのだ。何しろ、かれはネルフに何の借りもないのだから。どう考えても、頭を下げて頼まなければならないのは、ゲンドウやミサトたちのほうだ。

 シンジは、エヴァに乗ることは乗るにしても、もっと良い待遇を要求しても良さそうなものだ。ほとんど、不当な安月給でこき使われる新入社員を思わせる。

 いまの時代、じっさいにもこういう状況に追いこまれているひとは少なくないと思う。

 善良で真面目なひとほど、社会のメッセージ通りに「――しなきゃだめだ」と思いこみ、そして社会にその思いこみを利用されることになる。

 くたくたに疲れきっているのに、「もっと真面目に仕事しなきゃだめだ」と思っているひとは大勢いるだろう。そういうひとほど、仕事が出来ない自分を責めて、悩み苦しんだりする。

 しかし、本当にその考え方は正しいのだろうか? よく考えてみれば、全然苦労に見合う報酬をもらっていなかったりするのでは?

 「――しなければならない」という思考法は、自分自身のなかからわき出てきたように思えても、その実、社会や組織のエゴをそのまま反映していることがある。

 ゲンドウみたいな胡散臭い大人にひっかけられないよう、十分注意することにしよう。

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