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2007-11-10(土)

 あなたの「萌え」は性欲ですか?


 最近の「ネギま!」は、読んでいるとどうにも辛くなる。

(中略)それに・・・

辛さを倍増する要因がもう一つあるのだ。

クラスメイト達の辛い境遇は、千雨の時も、亜子達の時も、「ネギま!」的オブラートに包もうというのか、エロチックなギャグ要素を絡ませている。その為、一見「ぬるい」辛い境遇にも感じるようになっている。

けれども、このエロギャグ要素が問題なのだ。

この手の不幸は、どうしても、読んでいるこちら側の嗜虐的な嗜好に本能的に働きかける。エロであれば、よりエロい状況を想像してしまう。また、この手の妄想は、エロ同人誌などで、今までに際限なく増幅されているのを見てきてもいる。妄想の引き出しに困る事はない。同人誌は同人誌。それを見る見ないは本人の自由かもしれない。しかし、それを連想させる描写が本編中に現れるのは、どうにも気分が悪くなる。内容的にも、触手怪物や奴隷奉公など、不幸、残忍を連想させる物ばかりだし。

 そもそも二次創作のエロ同人誌、ネギま!は結構少ない方じゃないかな。統計とったわけじゃないけど、体感的にね。では次に考えられるのは「なぜエロネタ同人誌が少ないのか?」っていう事だと思う

 それはおそらく、登場してくるクラスメート31人に性的欲望を感じにくいからだと思うんですね。まあぶっちゃけて言えば「たたない」ってこと(笑)。欲情しないんですよ。

(中略)

 かといって、まあ赤松漫画がエロく無いというと決してそうではないわけです。赤松漫画のエロさの本質は作り出すシチュエーションや表情のエロさにあるんですよ。例えば記憶に新しいのは茶々丸のネジを回されてどうみても感じているシーン(笑)。いや、あの茶々丸はエロかった。ありゃエロい。今週の亜子もそうですよね。顔を上気させてポーっとしたあの表情は確かにエロいです。

 ああ、なるほど、おもしろいなあ。

 つい最近、「最近の『ネギま!』はおもしろい」と書いたばかりだけれど、その展開を「辛い」と感じるひともいるんですね。

 で、たぶん、ぼくの感じる「おもしろさ」と、その「辛さ」は表裏の関係にあるのだと思う。

 ぼくはいまさら『ネギま!』で学園ラブコメを読みたいとも思わないので、ハードな展開は大歓迎なんですが、当然、そういう展開を嫌うひともいるんですよね。

 ま、そういう意見の違いじたいは過去にもあったこと。いままでと違うのは、そこに生々しい「性」が絡んでいるところでしょうか。

 ネギとフェイトのたたかいに巻き込まれ、魔法世界各地に飛ばされた亜子たち3人は、亜子の病気を治す薬の代金として「奴隷」の契約を済ませています。

 その破格の金額を考えると、だまされた可能性も高い(前回登場したネギの賞金額の数倍)。しかし、既に契約書にサインしてしまったことは事実。そこに悪役の男たちが忍び寄ってくる……。

 この悪役たちの台詞は売春を強要しているようにも取れるわけで、少年誌としてはわりと際どい展開だと思います(ほかの漫画では小学生メイドが強姦されかけたりしているけどさ)。

 それにしても、わけのわからない場所にいきなり飛ばされた上に病気になり、さらに奴隷にまでされてしまった亜子たちは可哀想ですね。本当に可哀想。かわクケケケケケケ。あ、いかん、本性が出た。

 ごほん(咳払い)。ま、とにかく個人的には非常におもしろいことになってきたと思っています。

 このエピソードの意味は、何週かまえに「学園」を飛び出したネギたちが、「社会」に直面するというところにあるのではないでしょうか。

 それもぼくたちの常識とは(ネギたちの常識とも)異質な社会です。もちろん、奴隷の存在を認めるような社会システムは、いまのぼくたちの常識では受け入れがたいものでしょう。

 しかし、何気なくサインひとつ書いてしまったために、奴隷のような境遇に落とされることは、じっさいにいくらでもあり得るのではないでしょうか?

 そして、どれほど異様に見えようと、この社会のルールでは、奴隷契約は「合法」なんですね。だから、単純にネギが悪党を吹っ飛ばして終わり、とはいかない。いままでにない展開が期待できそうです。

 でも、その展開を「辛い」と感じるひともいる、と。

 『ネギま!』は一面でお色気漫画でもあるので、いままでにも裸だのパンチラだのといったサービスシーンはいくつもありました。というか、そこが見所だと思っている読者もいるでしょう。

 しかし、主人公のネギが10歳の少年であることもあり、あまりシリアスな方向性には発展しなかった。しかし、この回では性暴力的な要素がはっきりと表に出ている。

 こういう展開を「辛い」と感じるひとがいる、それは無理がないことだと思います。ただ、ここで複雑なのは、「なんて悪い奴らなんだ! 亜子が可哀想!」と単純に怒ることも出来ないこと。

 だって、こんなの、18禁同人誌では定番のシチュエーションだもん。しかも奴隷にされた3人の格好はメイド服! ここまで条件がそろうと、これはもう意図的にポルノ的シチュエーションが演出されているとしか思えない。

 そして、このとき、作中の亜子たちに一方的に性的視線をそそぐ自分たちは、ネギよりもむしろこのチンピラたちに近い一面もあるのではないか、と考える読者も出てくるでしょう。

 となれば、

 はっきり言って、「ネギま!」本編を見て、そんなクラスメイトの不幸で残忍な妄想などを、たとえエロが絡んでいたとしても連想したくない。ここに来て、原作の方から、この手の同人誌を見てしまった事へのしっぺ返しを受けるとは思わなかった。

 ネギ君が合流していないクラスメイトは、まだ10人以上。このような描写は、これからもまだまだ続くのかもしれない。

 そう思うと、どうにも欝になる。読み続けるのが辛いのだ。

 という感想が出て来ることは自然です。そして、たぶん、そこまで考えて演出されている。

 生ぬるい「萌え」の影にひそむ暴力性を暗示する展開。研ぎ澄まされた悪意を感じます。こういうの大好き。

 それに対して、id:hasidreamさんは、

 ただ、ネギま!のエロ同人誌が、これを皮切りに増えることは結局ないとおもうんですね。

 と書いているわけですが、それはそうでしょう。

 ただ、この展開が二次創作同人誌で「活用」されることは大いにありそうだし、おそらく作者側もそのことを考慮にいれているということはいえると思うのです。それが「辛さ」を呼ぶ。

 ところで、そのあとの「そもそも『ネギま!』のエロ同人誌は少ない」という話。これ、本当でしょうか? ここに「とらのあな取り扱い同人誌作品別18禁率調査」というデータがあります。

 この表によると、「とらのあな」で取り扱われている『ネギま!』の同人誌は501冊中426冊が18禁。割合にすると、85%。少なくないじゃん(笑)。大半が18禁じゃん!

 もちろん、このデータがどこまで市場の実態を表しているかはわからないのですが、多少の上下を考慮にいれても、やっぱり「少ない」といい切れるほど少なくはない気がする。それなりにある、と見ていいでしょう*1

 ただ、たぶん裸なり絡みなりがあれば一律に18禁扱いされると思うので、その中身については何ともいえません。

 だから、

 赤松漫画にエロさを見出すとしたら、そこだと思うんですよね。絵柄によるエロさはぼくには殆ど感じない。

 15巻に大人姿のエヴァンジェリンがネギの腕を舐めるシーンがありましたが……。まああれも肉欲、って感じじゃないと思うんですよね。最近の展開もそれと変わらないと思う。

 そこが分かっているから「「ネギま!」本編を見て、そんなクラスメイトの不幸で残忍な妄想などを、たとえエロが絡んでいたとしても連想したくない。」という言葉が出てくるんじゃないかなあとは思いますね。というか陵辱やら強姦やらの性欲をネギま!に見出す人は、正直ちょっとどうかと思う(笑)

 ちょっと論点がずれてきてますね。

 ええと。つまりですね。ネギま!のエロさの本質は「肉欲的なエロさ」には無いと思うんですね。それは関係性やシチュエーションによって編みこまれたものといった方がおそらく的確で、それを読み込めている人は陵辱とかのエロ同人誌を作ることはまずないだろうということ。そして、ネギま!を楽しんでいる層っていうのは「肉欲的なエロさ」を楽しんでいる層ではないとも思うんですね。それはつまり二次創作にも反映される可能性がすくないってことだと思う。

 という意見にもうそれなりになずけるものはあります。

 もちろん、『ネギま!』でレイプものをかいているひともいくらでもいるでしょう。でも、ぼくも、『ネギま!』がそういう作品に向いているとはそれほど思わない。

 で、興味深いのは、ここで「肉欲的」と「関係性やシチュエーション」という言葉で表されているものが具体的にどういうものか、ということ。

 ようするにエロはエロだろ、「肉欲的」でないエロなんてあるか、と考える向きもあるでしょうが、そうでもないと思うんだよね。

 18禁同人誌をかいたり読んだりしているひとが皆ハードコアなものを求めているわけではない。それこそ「関係性」とか「シチュエーション」を求めている層もそれなりに存在すると思うんですよ。

 ぼく自身、レイプ系の同人誌にはあんまり興味がない。「萌え」とセクシュアリティを分けて考えることは欺瞞だけれど、でも、一方で、「肉欲」的な消費に向かない「萌え」というものも、たしかにあるのだと思う。『らき☆すた』のレイプものなんてこれっぽっちも読みたくないもん(笑)。

 「オーガストのエロ同人誌に陵辱ものがない理由という記事があります。

 この記事によると、オーガスト(というメーカー)の作品にはほとんどレイプものがないらしい。その理由をいろいろと検証しているのですが、結論は、

1.オーガスト系をメインにしている同人作家に陵辱属性が無いから
2.原作の雰囲気が「陵辱系」にしづらいから
3.同人全体の陵辱系割合が少ないので、オーガスト系位の規模では確率的に存在しないから

 という3点。

 ぼくにはその成否を判断することは出来ませんが、「原作の雰囲気が「陵辱系」にしづらい」という意見は、わかる気がする。

 やっぱり、暴力的なポルノグラフィを妄想することをためらわせるような何かをそなえた作品なりキャラクタというものは、あると思うんです。

 もちろん、そんなものあっさり無視するひとはいるんだけれど、そういうひとは、『ネギま!』はともかく、オーガストのゲームをプレイしたりしない(笑)。

 ちなみに、先ほど掲載したデータで最も「18禁含有率」が低いのは、『マリア様がみてる』で、1935冊中145冊、わずか7.5%しかありません。

 そして、たぶん、ハードコアなレイプものはそのなかでもごく一部でしょう。『マリみて』にはそういう雰囲気なり、「何か」があるんですね。

 で、たぶん、『ネギま!』にもその「何か」が、いくらかはある。そして、今週の展開はその「何か」を崩しかねなかった。だから反発も起きた、そういうことじゃないかなあ。

 この記事を書くまえに感想サイトをいくつか回ってみたんだけれど、やっぱり『ネギま!』でああいうものは見たくないというひとは他にもいるみたいです。その気持ちは、わかる。

 でも、だからこそ、いまの展開はおもしろいとも思うんですよね。やっぱり光よりも闇が、安楽さよりも激烈さがおもしろいと思うし、何かしらの毒がない作品には魅力を感じないから。だからは、ぼくは『ラブひな』あたりはいまでもあまり好きじゃない。

 たしかに、何の覚悟もない14歳の女の子がいきなり過酷な状況に追いやられてしまう展開は不条理です。

 しかし、その不条理さこそ、超が歴史を変えてまで修正しようとしたものであり、いつの日かネギが対決しなければならないものではないでしょうか?

 今回、亜子は助かった。しかし、おなじ状況で助けが訪れなかった子もいくらでもいる。その重さ。やっぱりこうでないとおもしろくない、とぼくなんかは思うんですけどね。

 で、自分自身を振りかえってみて、亜子の鬼畜的シチュエーションを見たいという欲望があるかというと――ないんじゃないかなあ。

 いや、亜子のエロ同人じたいは読んでみたいですけど(笑)、亜子をめちゃくちゃにしたいとか傷つけたいという気持ちはないんじゃないかと思う。

 いや、違うな。めちゃくちゃにされた亜子は見てみたいけれど、ひどい目にあってほしいという気持ちはない。どこが違うのか? えっと、どこだろう。

 とりあえず、暗い部屋で強姦されつづける亜子とか、そういうものを見たいという欲望はないと思う。

 それはぼくが善良だというわけではもちろんなく、ただ、そういう方向性そのものにあまり興味がない。やっぱりそこに何かしらの関係性がないと萌えない。

 いや、それも違うかな……。ただ欲望をかき立てるだけなら関係性なんてなくてもいいけれど、それだけではやっぱり満足できない、ということかなあ。ここらへんはもっと考えてみる必要がありそう。

 いずれにしろ、「萌え」と「性」を完全に切り離して考えることは出来ない。でも、その絡み方は、単純に「欲望を奇麗事でごまかしている」というだけでは済まないと思う。

 さて、あなたの「萌え」は性欲ですか? そして暴力ですか? ぼくにとっては、そうでもあり、そうでなくもある、というところだと思う。この話題はもう少し考えてみたいところです。

魔法先生ネギま!(1) (講談社コミックス)

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魔法先生ネギま! 2008年カレンダー (講談社カレンダー)

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*1:チャットでいずみのさん(id:izumino)から聞いたところによると、やっぱりこの数字はあまり市場全体を反映していないみたいですね。やっぱり「とらのあな」のような同人ショップに持ちこむためには売れる本である必要があるから、ショップに持ちこまれる時点でエロ含有率は高くなる、と。なるほど。ただ、それでも『AIR』とか『マリみて』あたりは圧倒的にエロ含有率が低いわけですけど。