ブログトップ 記事一覧 ログイン 無料ブログ開設

Something Orange このページをアンテナに追加

2007-12-27(木)

 「マンガはつまらなくなった言説」の理由。


 最近のマンガは面白いか? 面白い。10年前と比べれば確実に成熟し、質も高くなっている。にも関わらず、なにも考えずに面白いものをあげようとして、最近の作品がリストアップされないのはなんでだろうか。

 ストーリーのスケールの問題じゃなかろうか。最近のマンガは畳める風呂敷しか広げていない気がする。始末をつけられないものには、手を出さない、という選択肢は正しい。だから質も上がるだろう、けどそれはなんとなく寂しい気がする。破綻してもいいからとにかくでっかいもんが見てみたい。

 そうはいっても、破綻したら破綻したで文句を付けられるからなあ。漫画家稼業は茨の道よ。

 現代の漫画はおもしろいか? そりゃ、おもしろい。既刊10巻以下の作品だけでも、『よつばと!』、『おおきく振りかぶって』、『LIAR GAME』、『ヴィンランド・サガ』、『ヒストリエ』など、話題作には事欠かない。

よつばと! (1) (電撃コミックス)

よつばと! (1) (電撃コミックス)

おおきく振りかぶって (1)

おおきく振りかぶって (1)

LIAR GAME (1) (ヤングジャンプ・コミックス)

LIAR GAME (1) (ヤングジャンプ・コミックス)

ヴィンランド・サガ(1) (アフタヌーンKC)

ヴィンランド・サガ(1) (アフタヌーンKC)

ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)

ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)

 まだ単行本化されていないけれど、羽海野チカ『3月のライオン』も、既に傑作の風格を漂わせている。それなら、なぜ漫画がつまらなくなったという声が消えないのか?

 ふと思ったのだけれど、おもしろい漫画が、まとめて読者の視界に入りづらくなったということはいえるかもしれない。一箇所に才能が集中しなくなったのかも。

 昔だったらその時代の最高の才能は最高の雑誌に集まったかもしれないけれど、いまはそうは行かない。

 何しろ雑誌の数が大幅に増えた。そうかといって新たに出てくる才能の量がそれほど変わるとも思えないから、一つの雑誌に集まる才能のかずは相対的に減ったんじゃないか。

 漫画界全体に新しく現れる才能のかずが一定していても、漫画雑誌自体が倍になっていれば、一つの雑誌に集まる才能のかずは半分になってしまう道理。

 まだ単行本が売れる一方で、雑誌が不振を続ける一因も、案外、そこらへんにあるのかも。平均的におもしろい漫画雑誌を作ることは、むずかしくなってきているのだろうか。

 また、作画の緊密化の問題もあり、人気作家でも週刊雑誌で毎週連載することがむずかしくなっているんじゃないか? いや、ただの推測ですけれどね。

 そんななか、いま、ぼくが最高にお奨め出来るのは、デビッド宮原&たなか亜希夫の『かぶく者』。

かぶく者(1) (モーニング KC)

かぶく者(1) (モーニング KC)

かぶく者(2) (モーニング KC)

かぶく者(2) (モーニング KC)

 歌舞伎の世界を舞台に一人の天才的な無名役者が成り上がっていく物語で、とにかく魅せ方が素晴らしい。切れている。

 作画は『軍鶏』のたなか亜希夫。役者を美しく見せる構図の妙、絵そのものの美しさ、台詞と合わさったときの効果、いずれも文句なし。変幻自在の作画である。

 物語もおもしろい。芸に生き芸に死す、といえば重いが、しかしその重い世界をひょうひょうと歩む天才役者の波乱の人生を、時代劇なども絡めて描く手法が成功している。

 『軍鶏』も傑作だが、あまりにも暗く陰惨すぎて、広くはお奨めしづらかった。しかし、こちらはわりと万人向け(でもないか?)。日本人なら読みましょう!