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2008-01-17(木)

 桜庭一樹転生。


 桜庭一樹さんが直木賞を受賞したそうで、どうもおめでとうございます。

 いままでの「知るひとぞ知るポジション」から一気に抜け出したかたちですが、しかし、おかげでライトノベルの新刊が出る可能性はさらに下がったと見て良いでしょう。

 せめて既刊の『荒野の恋』、『GOSICK』だけは完結させてほしいところ。

GOSICK―ゴシック (富士見ミステリー文庫)

GOSICK―ゴシック (富士見ミステリー文庫)

荒野の恋〈第1部〉catch the tail (ファミ通文庫)

荒野の恋〈第1部〉catch the tail (ファミ通文庫)

 いまでこそ各方面から高い評価を得ている桜庭一樹ですが、最初から巧かったわけでは決してなかった。

 桜庭一樹シナリオといわれる『EVE The Lost One』は伝説の駄作といわれているし、その後のライトノベル作家時代もあまりパッとしませんでした。

 そんな桜庭一樹が一気に注目を集めたのが、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』です。

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

 ラテンアメリカ文学から影響を受けたという奔放な文体と衝撃的な展開を併せ持つこの傑作こそ、桜庭にとってのメルクマールといっていい。

 ライトノベルと呼ぶにはあまりにもシビアでダーク、それでいてどこかやわらかさと可愛らしさを併せ持ったこの異形の作品は、多くのライトノベル読者に衝撃を与えました。

 このあとの桜庭は、まさに生まれ変わったように、『少女七竈と七人の可愛そうな大人』、『青少年のための読書クラブ』などの秀作を発表し、『私の男』の受賞に至っているわけです。

 一作ごとにうそのように小説技術が向上していくさまは、横から見ていて唖然とするほかありません。もともと才能があるひとだったんだろうけれど、それにしても、変わったなあ。

少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人

青年のための読書クラブ

青年のための読書クラブ

私の男

私の男

 直木賞にかんしていうなら、「政宗九の視点」で引用されていた北方謙三の講評がおもしろい。

 桜庭作品は人間は書けていないし、リアリティーもない、細かいところの整合性もおかしなところが多々あって、反道徳的、反社会的な部分も問題になったが、非常に濃密な人間の存在感があって、ほかの2作品に比べるとわずかながら上をいくことになり、あえてこれを受賞作として世に問うてみよう−という結果になった。

 おいおい。

 でも、ま、こういう見方が出てくることこそ、桜庭作品が清新であることの証拠といえるでしょう。

 これから桜庭の作品を読んでみようと思っている方には、やっぱり『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』をお奨めします。

 純度100%の桜庭一樹。この作品がだめならほかの作品もだめでしょう。逆に、この作品が楽しめるようなら、ほかの作品も受け付けるのではないかと思います。

 実はぼくもまだ受賞作を読んでいないので、これから読むつもり。

 それにしても、ほんと、あと1冊で終わる『荒野の恋』だけは何とか完結させてほしいなあ。ぼく、桜庭作品ではあれがいちばん好きなんです。

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