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Something Orange このページをアンテナに追加

2008-02-27(水)

短所より長所に着目すべき理由。


 あと、シナリオに関しても、面白いシナリオを書けるかどうかと文章力=技術があるかどうかは別問題ですよね。エロゲ業界では、面白いシナリオや感動的なシナリオを書ける人を無条件で「上手い」と評価しがちですけれど、それは違うんじゃないでしょうか。

 その典型的な例が奈須きのこ氏で、はっきり言って彼の文章を隅から隅まで面白いって言う人ってものすごく少ないと思うんです(というかほとんどの人はアレを全部まともに読んですらいないと思う)。彼のシナリオがあれだけ多くの人に受けているのは、設定に魅力があるのと、要所=クライマックスのシーンを怖ろしく鮮烈に描けるからです。

 おおむね同意なんですけれど、文章力だけを「技術」とみなすことには少し違和感が。

 魅力あふれる設定を生み出すことも、「要所=クライマックスのシーンを怖ろしく鮮烈に描」くことも、ようするに技術の問題だと思うのです。

 前者は構想力だし、後者は構成力ですよね。ようするに優れた物語を生み出すための技術とはひとつじゃなく、また、評価する基準もひとつじゃないということじゃないかと。

 で、ぼくはいつも思うんだけれど、クリエイタはかならずしも全般的にすぐれている必要はないんですよね。

 文章力、構想力、構成力、その他もろもろの基準ですべてすぐれていなければ一流になれないかというと、そんなことはない。何かひとつ抜きん出たものがあればそれで通用する(こともある)。

 売れているクリエイタを批判するひとはたいてい欠点に着目するんだけれど、あまり意味がないことだと思う。

 往々にして才能と未熟、長所と短所は隣り合わせなわけで、「短所がある」というだけでその作品を否定することはできない。作品全体を眺めたとき、その短所がどういう意味をもっているかこそが重要なんであってね。

 長所でも短所でも、ある一点に執着してしまうと、作品全体が見えなくなる。『バガボンド』みたいな話ですけれど。

 奈須さんはたしかにそれほど文章が巧くはないかもしれないけれど、その構成力は傑出したものがあると思います。

 エロゲという枠を超えて、同時代のオタク系クリエイターのなかでは一、二を争うでしょう。『Fate』の複雑きわまる構成を見ていればわかります。

 『Fate』にはそれぞれ序盤のみ共通する三つのシナリオが存在するわけですが、それぞれ単体として完全に完結していながら、ほかのシナリオと絶妙に絡み合っている。あの構成はすごいですよ。芸というなら至芸といっていい。

 たしかにクライマックスでの盛り上がりこそ奈須シナリオの最大のポイントかもしれないけれど、でも、その事実はその地点に至るまでいかに巧みにシナリオが組まれているのかという事実と裏腹でもある。

 よく中二病的といわれる奈須シナリオだけれど、じっさいには、地味な部分の裏打ちがあって初めて成立しているのだと思います。その部分は紛れもない「技術」だといっていいんじゃないかと。

 スポーツの話にたとえるとわかりやすいかも。バスケでもパス回しが得意なひとやシュートが得意なひとやリバウンドが得意なひとがいるように、クリエイタにも得意分野があるということ。

 欠点があるのに通用しているクリエイタとは、欠点を補うほど大きな長所をもったクリエイタであるわけで、それはそれでやっぱりすごいことだと思うのです。もちろん、だから欠点がなくなるわけではないけれど。

フェイト/ステイナイト[レアルタ・ヌア] (通常版)

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