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2008-12-24(水)

「脱オタ」が無意味になる時代は来るか?


 id:GiGirさんの最新記事がおもしろい。

 簡単に書くと、一連の「超ライトオタク論争」をまとめたもので、オタク文化と非オタク文化(この場合はクラブカルチャー)のあいだで「越境」が始まっているのではないか、というような内容。

 もう少し正確にいうと、「越境」それじたいは以前からあった。ただ、ニコニコ動画というツールが誕生することによって、その流れが加速化したようだ、ということでしょうか。

 超ライトオタクが生まれつつあるとか、いや、そういう連中は昔からいたとかいう、錯綜する話題をうまくまとめて一つの記事に仕立て上げていると思う。

 ぼくが感銘を受けたのは以下の箇所。

 今まで他文化へ接続しようと思ったらそこに肩までずっぽりと浸かりきるくらいの覚悟が必要で、それゆえにトライブ化、文化の断絶というのがあった。それがニコニコ動画という場を通すことでいとも簡単に越境できる。こんなに近くにいたんだということを改めて知ることが出来る。それが本当に面白くて面白くて仕方がない。

 うんうん、おもしろいですね。

 もっとも、どうやら「ライトオタク」とでもいうべき連中が増えてきているようだ、という言説はニコニコ動画以前からあったものです。

 ぼくの場合、初めて「ライトオタク」という用語を目にしたのは、岡野勇さんの長文記事「今、そこにあるオタクの危機」でした。

 岡野さんは岡田斗司夫『オタク学入門』の書名を挙げ、そこで提示されている「本来のカテゴライズでの“オタク”」と、最近増えているオタクは別物であるとし、こう語っています。

 正しい言い方するなら、それらはファンでありマニアでありコレクターです。

 明らかに視点がクロスしないため、こういう層を僕は最近「ライトオタク」層と呼んで分けています。
 あるいは「自称・オタク」層。

 その上でこんなことも書いている。

 こう書くと「じゃあ、ライト層はオタクより格下なのか?!」という反応があるかも知れませんが、簡潔に書けば「その通り」です。(ミもフタも無さ過ぎですかね。)
 格下という言葉が適切かどうかはわかりません。前回も書いたとおり視点が全くクロスしていませんし、「分けちゃった方が双方幸せ」だと書いたように「ある意味別物」だと思っていますから。
 でも、“能力”的に下であることは確かです。
 「新しい能力」「昔のオタクと別の能力」ではないんですよ。
 明らかに「ライト層はオタクよりも能力的に劣っている」。

 この時点では、「ライトオタク」とはあくまでも唾棄すべき新参者に過ぎなかったわけです。この種の言説を、id:GiGirさんはこう解説しています。

 それでですね。こういった「語るオタク」というのは、語らないで受容するだけの人たちを一段低く見るというか馬鹿にしているというか、そういった風潮があった。座談会の中でも東浩紀さんが「焼畑農業」という言葉を用いていたりするのですが、創作物に対してその意味を斟酌せずにただ大量に浴びるように享受して食い尽くしたら別の場所へ移動して同じことを繰り返す…そうゆう連中とは自分たちは違うんだぜ、ちゃんと文化として語ってるんだぜといった、一種のエリーティズムのようなもので壁を作っていた。語らなければオタクに在らず。そういった自己規定によって、オタクとそれ以外を切り分けていた。

 納得のいく意見です。

 ぼくはこの「一種のエリーティズム」に一貫して反対してきました。ライトオタクで何が悪い、と思っていたし、いまでもそう思っている。そういうわけで、低コストで文化を「越境」できる時代はすばらしいと思います。

 そもそも、自分をあるクラスタの住人だと規定して、そこにひきこもる必要性なんて何もないわけです。自分は「オタク」だからこれには興味がない、という発想は貧しいと思う。

 本当にその文化に興味がないならそれで良いけれども、「オタク」だからこうだ、こうであるはずだ、という鎖に縛られる必要はない。ぼくたちはいくらでも自由に行動できるはず。

 「オタク」という言葉がかぎりなく軽くなった時代には、「脱オタ」などということも意味をなくし、「オタク」という言葉をめぐるアイデンティティの葛藤が、いかにも古色蒼然としたものとして語られることでしょう。

 ライトオタクがオタク文化を亡ぼすなんてとんでもない。ライトオタクを正当に評価することによってのみ、オタク文化は健全たりえるのだと信じます。そういう意味で、もし超ライトオタクが出現しているのだとすれば、それは慶賀すべきことだと思う。

 「オタク」という言葉にプライドを抱いている層からすれば、悪夢のような時代でしょうが、ぼくはそれこそまともな時代だと思います。

 「オタク」に終焉の時を!