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2011-10-06(木)

『攻殻』であるか『009』であるかが問題なのではない。


 神山健治監督の新作『009 Re:Cyborg』が発表された。

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 いやあ、『009』ですか。色々な意味で非常に興味深いね。九名のサイボーグ戦士たちは『攻殻』の公安九課を連想させてならないし、映像を見るかぎり相当に『攻殻』の資産を利用していることがわかる。こいつは楽しみ。

 まあ、一部には『攻殻』の続編発表でなかったことを残念がる向きもあるようだけれど、ぼくにはその理由がわからない。この映像を見るかぎり、これはもうあからさまに「『009』というパッケージで『攻殻』の発展型をやりますよ」と言っているようにしか見えないわけで、これを見て「いいから『攻殻』をやれよ」とか言っても意味がないのではないか。

 いや原作リスペクトが足りない、おれの島村ジョーはこうじゃない、といった意見もあるだろうけれど、それをいうなら『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』自体、原作の設定を流用しつつ全く異なることをやっているわけで、あまり意味のある意見とは思われない。

 あまりに『攻殻』色が強すぎて映像的に新味がない、という意見なら理解できる。しかし、公開まであと一年あるわけで、現時点ではあえて『攻殻』との類似点だけをクローズアップして持ってきたと見ることが正しいのではないか。

 『攻殻機動隊』ならOKで、『サイボーグ009』ではNG、という発想法をするひとは、神山監督がいうところの「箱」と「中身」を混同しているように思う。

 オリジナル企画「エグザスケルトン」に対し、「攻殻機動隊TVシリーズ」の企画を逆提案した石川社長。神山さんと、今まで企画に参画してきたメンバーはこの提案をどう受け止めたのかを聞かせてもらいました。

神山:「その時に僕は即答で攻殻機動隊をやります、と答えたんだけど、それには二つ理由があって、一つはどう考えてもそちらの方が早く決まるから。それはそのタイミングの僕にとっても良かったことだし、プロダクションI.Gにとっても良い企画だったと思う。そう判断したから。

堀川:納得するもの―攻殻では自分のやりたいことが入れられないってこと?

神山: 「企画というのは僕は入れ物のことだと思うんですよ。自分がやりたいことって言うのは企画じゃないんです。それは誰にでもあるもの。企画には自分以外の人も参入してくるわけですから、誰もが乗れるものじゃないとだめなんです。これが作れるかどうかが企画が決まるということなんですよね。箱と中身を混同しちゃいけない。「負け戦」を唱える人は、箱まで自分でつくらなきゃ負けだと思っているか、自分が持っているものは(攻殻機動隊という)箱には入らないんだと思っているかだね。箱と中身を同時に発明できるような天才であればさ、それに越したことは無いと思うよ。」

僕は打席に立てることの方が重要であってね

神山: 「今回監督として打席に立ちたいとか、プロデューサーとして打席に立ちたいとか、キャラクターデザインとして打席に立つというチャンスは提示されたのだから、それだけでもやりたいことは叶っているわけですよ。攻殻ではそれができないというのは、僕にはその理由はわからない。全部自分でやりたいと思っているのか、あえてひどい言い方をすれば、本当はやりたいことがないんじゃない、というかね、僕は打席に立てることの方が重要であってね、毎回最終回のツーアウト満塁で自分が打席に立って、満塁ホームランを打つっていうシチュエーション以外打席に立たないよっていうかさ、勝てる試合にしか登板しないというよりは、消化試合だろうと登板してね、じゃあ、消化試合でノーヒットノーランを見せてやるよって言う気概だったかな。」

 たとえば富野由悠季監督や庵野秀明監督は何度となく、『ガンダム』や『エヴァ』という「箱」に作品を入れ続けている。これを古い作品に固執している、と見ることは間違いだ。重要なのは作品タイトルが何であるかではなく、中身で新しいことをやっているかどうかなのだ。

 富野監督や庵野監督が『ガンダム』や『エヴァ』を作りつづけるのは、ひとつにはそれらの箱がきわめてキャパシティが大きく、「何でも入る」からである。中身さえ斬新なものであれば、箱は古くてもかまわない。これはきわめて合理的な思想だ。

 その意味では、少なくともぼくにとっては、企画タイトルが『攻殻機動隊』であるか『サイボーグ009』であるかはまったく問題ではない。そのタイトルでどのような中身を提示してくるか、それがすべてだ。いまから神山版『009』にはとても期待しているのである。

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