梶ピエールの備忘録。 RSSフィード

2009-01-03

[][]人民元の変動をめぐって―データを見ろ―

 あけましておめでとうございます。新春早々無粋な話で失礼します。

 前のエントリに対する批判的なコメントがあったため、それに応えるついでに、昨年5月以降におけるドル−元レートの日々の変動をあらわすグラフを作ってみた。

f:id:kaikaji:20090104012626g:image

 こうすると確かに、2005年7月にドルペッグ制が停止されて以来続いてきた緩やかな元の対ドル増価トレンドが、7月中旬に大きな転換点を迎えていることがわかる。そしてそれ以降は短期間の間には何度も元安局面が生じている。「政府の元安介入があるのではないか」とささやかれたのは12月の初頭であったが(赤い矢印の部分)、こうして中期的なトレンドを見てみると、実際のところ大騒ぎするような動きは何もなかったことがわかる。たまたま時期がポールソンの訪中に重なっていたところからいろいろな憶測を呼んだだけだったのだろう。日本経済新聞をはじめ、世論をミスリードするようなニュースを流した新聞各紙には、飯田泰之氏の顰にならって「(「消息筋」からの情報に頼る前に)データを見ろ」と言っておきたい。

 では、7月中旬以降の「転換」はどう捉えればよいだろうか。ここで基本に立ちかえって国際収支の恒等式を確認しておこう。

経常収支黒字+資本収支黒字+誤差脱漏=外貨準備の増加分

 たとえば左辺における資本収支黒字が大きく増加したとき、自国通貨には増価圧力がかかるため、それを防ごうと思えば通貨当局は外貨(ドル)買い介入を行わねばならず、その結果右辺の外貨準備が増加するわけである。津上俊哉氏のエントリにリンクされている図から示唆されるように、2008年6月までは、基本的にホットマネーの流入が続き、急激な元高を防ぐため当局がドル買い介入を行っていたため、緩やかな元高傾向のもとで外貨準備が増加していたと考えられる。しかし、2008年6月ごろから、むしろホットマネーの流出傾向が現れてきており、このためそれまでの緩やかな元高傾向がストップし、一時的な元安局面がみられるようになったものと考えられる。つまり、最近の元ドルレートに最も影響を与えているのはあくまでもマーケットの動向だ、というのが「データを見」た上での妥当な判断というものではないだろうか。

 それにしても、なぜ6(7)月なのだろうか。たとえば、本来ならば元安要因となるはずの、6年ぶりとなる第一弾の金利引き下げが行われたのは9月16日である。この点に関してはさまざまな可能性が考えられるが、中でも重要だと思われるのは歩厘さんも指摘するように、この時期以降「インフレ抑制よりも景気対策を優先させるべきだ」という国内の声が急速に高まっており、また同じ時期には輸出税の還付率の引き上げも行われている点である。これらの一連の動きが将来の利下げを含む金融緩和への期待を生み、資金の流れの反転が生じた、というのがとりあえずもっともらしい解釈なのではないだろうか。

 ただ、この間元-ドルレートはほとんど変化していないものの、リーマン・ショックの前後では市場におけるもう一つの「転換」があったかも知れない。そのことを示唆するのが前のエントリで論じた、昨年10月における外貨準備高の減少である。もちろんユーロの減価などの影響はあったにせよ、同時期に経常収支の黒字額に目立った変化がないことを考えれば、リーマン・ショックの影響によって民間部門におけるかなりの資本流出が生じたと考えてもそれほど的外れではないだろう。

 これは、ある意味で当然の現象である。深刻な金融危機によって、世界中で決済通貨たるドルの流動性への需要が高まっている中、新興国の通貨の中で中国の元だけがドルに対して増価を続けていくと投資家たちが考えるとしたら、そのことの方がむしろ不自然である。実際レアルにせよルーブルにせよインドルピーにせよ、リーマン・ショックのあとは大きく減価している。にもかかわらず、昨年10月以降もほとんど元安が進んでいないということは、当局は輸出企業を救済するための元売り介入どころか、元の急速な減価を防ぐために、豊富な外貨準備を用いてむしろ元買い介入を行っている可能性のほうが高いのではないだろうか。すなわち、「人民元レートが合理的な均衡水準上で基本的に安定することを維持」する、という中央経済工作会議の方針は、むしろ元安の急速な進行を警戒したものとみるべきだ、というのが私の見方である。

 いずれにせよ、「中国は政治の国だ」という先入観を捨てて基本的な経済データの動向をじっくり見ていけば、意外といろいろなことが整合性を持ってみえてくるものである。というわけで「中国経済を論じるときもまずデータを見ろ」、この言葉を2009年も肝に銘じることにしたい。

津上俊哉津上俊哉 2009/01/07 02:45 梶谷先生 明けましておめでとうございます。本年もヨロシクお願いします。
さて、本エントリに賛同します。ちなみに、歩厘さんが前回貴エントリに対して

>対ドルでの元高が今年の7月頃に急に止まっています・・・そのことだけでも立派に「中国政府は輸出企業を救済」しようとしている証拠だと思いますが。
>ちなみに、元は12月に入ってからユーロに対しては減価しています。
と書いておられます。

しかし、7月以降元の対ドル上昇が止まったのは事実ですが、同時にそれ以降、今や中国にとって米国以上に大きな貿易パートナーである欧州のユーロに対して元は20%も切り上がったのです。中国の「通貨バスケットを参照している」という言明を想起すると、対ドル上昇を止めたことだけを以て「そのことだけでも立派に『中国政府は輸出企業を救済』しようとしている証拠」と断ずるのは早計ではないでしょうか。
なお、この半年のユーロの動きは、7月以降の暴落(対ドル1.60→1.24へ23%以上暴落)、12月にはプロも「訳分かんねぇ」とこぼす謎の18%上昇と、ジェットコースターみたいです。「元は12月に入ってからユーロに対しては減価」したのもこの謎の上昇のせいですが、12月以降の元対ユーロ減価を取り上げるなら、7月以降の元対ユーロ上昇も取り上げないとバランス悪いですヨ。

それと、上海証券報が年末に気になる記事を載せました(http://www.stockinfo.com.cn/08waihuizq/2008-12/24/content_3951050.htm)
12月の元安騒動以降、中国の居住者による外貨の内貨転換が激減、外貨購入量が激増した由、しかもその外貨保有額増加が外貨預金増につながらっておらず、国外流出している気配ありというのです。自分のブログにも書きましたが、中国で貿易動機から元安風を吹かすとキャピタルフライトを招きかねないので、危険極まりないです。当局も既にこの新しい動向に神経をとがらしている由、最近の元レート堅調にはそういう背景もあるようです。
10年前と違っていまの中国には「カネ」があります。為替レートについて輸出産業と外資導入のことだけ考えていれば済んだ時代はとうの昔に終わってます。

kaikajikaikaji 2009/01/08 00:21 津上さん、どうもありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。

>しかし、7月以降元の対ドル上昇が止まったのは事実ですが、同時にそれ以降、今や中国にとって米国以上に大きな貿易パートナーである欧州のユーロに対して元は20%も切り上がったのです。中国の「通貨バスケットを参照している」という言明を想起すると、対ドル上昇を止めたことだけを以て「そのことだけでも立派に『中国政府は輸出企業を救済』しようとしている証拠」と断ずるのは早計ではないでしょうか。

 おっしゃるとおり2008年7月はユーロが対ドルで急落しだした時期に当たりますね。その点を考慮すれば、その前後での中国の通貨当局の介入スタンスは実はまったく変わっていないのかもしれません。しかし、先日の外貨準備の目減りといい、バスケットの構成といい、中国はいつの間にユーロのウェートをそんなに増やしていたのでしょうか。この辺の不透明さがいつまでも市場の動きを読むのにデータの分析よりも政治的な憶測が要請される最大の原因なのでしょうね。

津上俊哉津上俊哉 2009/01/08 02:17 >この辺の不透明さがいつまでも市場の動きを読むのにデータの分析よりも政治的な憶測が要請される最大の原因なのでしょうね。
おっしゃるとおりです。今日ウェブを見ていたら、中国でも「もっと情報を公開しないと有害な憶測を呼ぶばかりだ」と苦言を呈する文章がありました。人民銀行は梶谷先生ご存じのとおり情報公開では模範的な役所の部類ですが、形式的には同行に所属するとされる外為管理局だけはまだまだ「秘密主義」のベールの向こうにいる感じですね・・・

歩厘歩厘 2009/01/11 02:12 書きたいことは色々あるのですが、まずはこれだけを。

昨年7月29日付のBloombergの記事によると、

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601080&sid=aYPnXlpAaxeE&refer=asia

胡錦濤主席が主催する会合に出席したばかりという清華大学の研究者が、「China will slow the pace of the yuan's gains as the government seeks to bolster economic growth」と述べています。「中国は経済成長を促進するために元高の流れを緩めます」とハッキリ言っているわけですね。CICのエコノミストまでが、中国人民銀行の文言の変化を受けて「The change in the central bank's wording is a clear sign that the yuan's appreciation will slow」と述べています。

さらに、この清華大学の研究者は「one of the major shifts in policies this year will be slowing yuan appreciation to deter international speculative capital」として、資金流出入の規制を目的に中国が元高政策の転換を図ることをこれもハッキリと述べています。

また、同研究者は「Possible shifts in policy focus later in the year may also include more credit support to small- and medium-sized companies, restoring tax rebates for some exporters and more reforms to tax benefits」と述べ、輸出業者を対象にした税制優遇措置が行われることを匂わせています。私が以前のコメントに書いたように8月に

・輸出税の還付率引き上げ
・資金流出入の管理強化を目的にした改正外貨管理条例施行

の2つが現実のものになっていることを考えると、この研究者は中国が次にどのような政策を行うかを事前にかなり正確に語っているわけですね。このことを見ても、先生がおっしゃるような「資本市場におけるマネーの流れの変化」として元高が止まったのではなく、中国が輸出企業援助と資金流出入規制を目的に「意図的に」元高を止めたことが明らかだと思います。

「データを見れば」明らかなように、市場で資金の動きが変化したのは去年の7月が世界史上初めてではなく、その前もそしてその後も市場では資金の流れは変化し続けています。元高は、市場で資金の流れが変化し続けていたにも拘らず、2005年から3年間何事もなかったかのように続いていました。そもそも、去年の7月以降も市場では資金の流れは変化し続けていますが、元はドルに対して12月初旬を除いて安定的に推移しています。他通貨はこの間もかなり変動しているわけですね。これだけでも中国が為替を「意図的に」操作しているのは明らかだと思います。そもそも、元はドルや円のように市場で自由に流通しているわけではないので、元を市場の動きのみで捉えるのはナンセンスだと思うのですが。


津上さんへ

「為替レートについて輸出産業と外資導入のことだけ考えていれば済んだ時代はとうの昔に終わって」いるのなら、なぜ、昨年の11月に周小川・中国人民銀行総裁が、中国は輸出企業を支援するため人民元を切り下げるべきかとの記者団からの質問に対し「どのような可能性も排除しない」と述べたのでしょうか?

また、先月に人民日報は、なぜ、「But the yuan should not rise too fast because that would hurt exporters, who are already reeling under the impact of the global financial crisis」、「Experts have said the yuan should be revaluated slowly - or should even be allowed to fall - to help exporters and make the stimulus package more effective」という文章を載せたのでしょうか?

「為替レートについて輸出産業と外資導入のことだけ考えていれば済んだ時代はとうの昔に終わって」いると考えているのは津上さんだけかもしれませんヨ。

kaikajikaikaji 2009/01/13 01:00 歩厘さん、Bloombergの記事についてご示唆ありがとうございます。昨年7月前後に中国政府がそれまでの引き締め政策から金融緩和へとかなり明確な方向転換を行おうとしたのは事実だと思います。ただそのことをもって通貨当局が輸出企業救済のために元安誘導を行っている、とみることはできないと思います。それは?津上さんが指摘されるように7月にはユーロが対ドルで大きく減価している、?中国の金融政策のスタンスの変化は輸出企業のみの救済というより国内の不況全体への対応という意味合いが強い、という理由からです。いずれにせよ、昨年7月以降元の対ドル値がそれまでと異なり安定的に推移しているのは
・バスケットの構成通貨であるユーロが大きく減価したため。
・金融政策が緩和に転じたという期待が市場で共有されたたため
という「市場的要因」で十分に説明可能だと考えています。もちろん最終的に通貨の変動幅を調整するのは政府ですが、どのような通貨政策のスタンスの変化であれ、市場的な要因の変化に裏打ちされたものでなければ持続可能なはずがない、ということは理解しておく必要があるかと思います。

kaikajikaikaji 2009/01/13 01:11 また、これは前のエントリについて書いたことのの繰り返しになりますが、もう一度「国際収支の恒等式」を確認なさってください。2005年以降、恒等式の左辺を構成している経常収支・資本収支ともに常に大きな黒字の状態が続いていました。これをそのまま放置していたのでは、急激に元高の方向に触れてしまうため、それをこれまでの一定の範囲内に抑えるためには元を売ってドルを買う、「元安介入」が必要でした。政府は決して「元高介入」を行っていたわけではありません。だからこそ2005年の元切り上げ以降も外貨準備はどんどん増え続けていたわけです。
 しかし、2008年10月にはとうとう外貨準備がマイナスになっています。これは経常収支のプラスを上回る資本収支のマイナスが存在するということを意味するので、ほうっておいても元は減価するはずです。もし政府が輸出企業の救済による元安政策を一貫して採ろうとしているのであれば、なぜこのような千載一遇のチャンスである、市場における元安圧力をそのまま放置しないのでしょうか。
 わたしは、中国であれどこであれ、為替レートの動向のような現象はまず基本的な経済学のロジックにのっとって理解すべきであり、あまりそのときそのときの政治家や役人の発言に気をとられるべきではない、と考えています。その点をまずご理解いただきたいと思います。

津上俊哉津上俊哉 2009/01/15 10:58 私も梶谷さんとほぼ同意見で、少なくとも12月の元急落が「元安誘導」でなかったことはその後元レートが復元したことで明らか、本件はこれでピリオドだと思っています。
他方、昨日の統計公表で「アレッ」と思ったのは、12月単月で外貨準備が613億ドル増えたことでした。ユーロの戻し、貿易黒字の急増(輸入大急減のせい)も一因でしょうが、額の大きさから見て、ホットマネー流出の傍らで当局もドル買い介入を大規模にやっていた可能性があります。12月は元レートが元高に復元した時期でもあることを考えると、市場介入がなければもっと元高に振れていたということ? その資金流入ってナニ??狐につままれる想いです。
あれやこれや考えるうちに、元高調整、市場介入を巡る“pro & con”がこの半年で大きく変化したことに思い当たりました。輸出企業の悲鳴にもかかわらず当局が元高を加速させたのは、介入の裏側で起きる通貨膨張(→資産バブル、インフレ)を阻止するためでした。でも、資産バブルは崩壊、物価はむしろデフレ再来を懸念し始めた。そして人民銀行は成長維持を金融面から支援するためにマネーサプライ (M2) の本年伸び目標を17%に定めました。現下の景気情勢から見て、ちと無理筋では?と思うくらい高い数字です。その点から言えば金融当局から見た「市場介入のやりにくさ」は消えたのです。だからといって 「元安」はないと思いますが、「元レートの安定」、歩厘さんのいう「元高の流れを緩め」るというかぎりでは「輸出業者救済」を求める声に応じやすくなったのは事実かと・・・。
そこらへんをまとめて自分のブログにアップしました。お暇があれば覗いてみてください。http://www.tsugami-workshop.jp/blog/index.php?categ=1&year=2009&month=1&id=1231960368

歩厘歩厘 2009/01/18 21:00 中国が輸出産業支援のために昨年7月に元高を止めたのは明白だと思います。

昨年7月23日付Bloombergの記事によると、
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601087&sid=aj4nZT_iTOY8&refer=home
Bloombergのインタビューに対して中国社会科学院の研究者が「China will slow the yuan's gains to about 3 percent in the second half of the year to help exporters weather a decline in global demand and rising costs(中国は、輸出業者が外需の落ち込みとコスト高を乗り切るのを支援するために、年後半に元の増価率を3%に抑えるでしょう)」と述べると共に、「The fast appreciation has drawn opposition from exporters and some government departments(急激な元高は輸出業者や政府省庁からの反対を引き起こしている)」、「The government will slow yuan gains as bankruptcies rise in coastal provinces(沿岸地域で企業破綻が増加しているので、中国政府は元高を緩めるでしょう)」と語っています。実際にこの研究者の発言を裏付けるように、27日の中国人民銀行金融政策委員会で元高政策の終焉が公にされました。ただ、現実には元高は緩やかになったというより、完全に止まったわけですが。

また、同記事によると、「The Ministry of Commerce has urged the cabinet to slow yuan appreciation and raise tax rebates to boost exports(商務部は輸出を促進するために元高緩和と輸出税の還付率増加を指導部に要請している)」ということです。ご存知の通り、商務部の狙い通りに元高は緩和され(というか止まり)、輸出税の還付率も増加しました。

また、7月31日付のBloombergで、
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601089&sid=aYkipLQT8vaM&refer=china
中国人力資源社会保障部のスポークスマンが「The appreciation of China's currency has hurt employment in the country's east, where most exporters are based(元高になると輸出業者が基盤を置く東部での雇用が損なわれる)」と述べています。中国政府上層部では「元高→輸出減」という認識が広く共有されていることが分かります。

私が11日のコメントで示した発言は7月29日付けでした。それを合わせると昨年7月の元高政策転換の目的が
・資金流出入規制
・輸出企業支援
の2つであったのは明白だと思います。Bloombergは日本でしか通用しない日経のような「ローカル紙」と違い、世界的な情報機関です。中国は意図的に上記のようなコメントを流してサインを世界に送っているんですよ。

経済学のロジックで後付け解釈するのは先生の自由ですが、為政者は必ずしもその様なロジックで動いていないということです。

それと、2005年から続いた元高は中国が「誘導」したのであり、津上さんの言う通りインフレ阻止のためです。中国がインフレ阻止のために元高を続けることを明白にしていたので、元高を狙って投機資金が流れ込んでいたのです。だから外貨準備が急激に膨らんだのです。投機資金は何の理由もなく勝手に流れ込んでいたのではありません。また、そのような投機資金を抑える目的もあって中国が元高を止めたのは、私が11日に示した清華大学の研究者の発言からも明らかです。今は元高が止まっているので投機資金が逃げているのです。

私は12月の元安も中国による意図的な誘導であったと思っていますが、そのことについてはまた次回書きましょう。元が以前のレートに戻ったので政策転換ではなかったというのは不可解ですし、「元安にしようと思ったのだが慌てて止めた」となぜ考えないのか不思議です。実際、世界中の市場参加者(トレーダー、ディーラー、アナリスト、エコノミスト等)で12月の元安を「市場の力」によるものと考えている人はほとんどいないと思います。

津上俊哉津上俊哉 2009/01/21 00:48 歩厘さん
  なかなか議論が噛み合いませんね。昨年7月以降、人民元が対米ドルで上昇を止めたという認識については、誰も異議を唱えないと思います。しかし、対ドルの動きだけを見て「元高が止まった、元安政策だ」と見るのはどうかと申し上げている訳です。
  同じ時期に人民元はユーロに対していっときは20%以上切り上がり、今も7月対比で17%以上切り上がったままだからです。いまの中国にとってEUは米国よりも大きな最大の輸出先なのです(全輸出額に占めるシェアは2008年1〜10月でEUが20.5%、米国は17.7%、ちなみに日本はASEANと同率の8%)。
  昨年上半期、下半期(〜現在)の人民元対主要通貨の変動を見ると、対米ドルは上半期に6.0%上昇、下半期は0.2%上昇、対ユーロは上半期0.5%下落、下半期17.8%上昇、対円は上半期2.8%上昇、下半期は17.2%下落です。
  中国は為替管理に当たって通貨バスケットを採用していると表明していますが、バスケットの構成比は明らかではありません。仮に米ドル70%、ユーロ20%、円10%のウェイトだとします。そうすると、バスケットは昨年上半期に4.4%上昇したのに対して、下半期は2.4%しか上昇していないことになります。この仮定から出発すると、少なくとも下半期は「元高のスピードが落ちた」と言えそうです。しかし、ウェイトを置き直し、米ドル62%、ユーロ28%、円10%と仮定すると、上・下半期のバスケットはともに3.8%の上昇で「元高速度は変わっていない」という別の結論になるのです。
  実際のバスケットはもっと複雑だと思いますが、このようにバスケットのウェイトの置き方一つで評価は変わってくるので、対ドルレートだけを見て「元高」、「元安」を判断するのは避けるべきだと思うのです。
また、あまり言いたくないことですが、中国国内には当然ながら、人民元レート問題について海外の英字情報をはるかに上回る中国語情報が流通しています。その中には歩厘さんの見方をサポートするものもたくさんありますが、反対の見方もたくさんあります。よって、英字で流れた一部の研究者の見方を取り上げて、「為政者」の意思を解釈するのは適当ではないと思います。ちなみに、
>(7月)「27日の中国人民銀行金融政策委員会で元高政策の終焉が公にされました。」
と書いておられますが、ソースは何でしょうか?指しているのは貨幣政策執行委員会のことだと思います(同日第2四半期の会議を開催しています)。しかし、そのプレスリリースには「保持人民幣匯率(匯率=為替レート)在合理均衡水平上基本稳定」とあり(中国語ですが、だいたいの意味はとってもらえると思います)、「元高政策の終焉を公にした」とは読めないのです。(なお、この言い方は驚いたことに、05年7月に為替制度を変更する前からずっと変わっていません。「元高政策が表明された」こともないのです)。

kaikajikaikaji 2009/01/21 11:05 このところ香港に行ったり風邪でダウンしていたりで反応が遅れました。
津上さん、いつも明確な解説をありがとうございます。私から付け加えることはほとんどありません。特に中国報道に関して、海外メディアでときどき流れる「関係者」の発言の扱いには十分注意を払うべきだ、という点には全面的に賛意を表しておきたいと思います。この問題について、特に経済学的には論点はすでに尽きていると思いますので、ここでの議論はこの辺でとりあえず打ち切りにさせていただきたいと思います。

歩厘歩厘 2009/02/01 19:59 (津上さんから質問がありましたので、回答も含めて書かせていただきます)

津上さん
 まず、申し上げておきたいことは、私が今月18日にアップしたコメントは梶先生の「ただそのことをもって通貨当局が輸出企業救済のために元安誘導を行っている、とみることはできないと思います」という私宛のコメントに対するものであって、いきなり「なかなか議論が噛み合いませんね」と言われても何のことやら良く分からないです。
 「人民元が対米ドルで上昇を止めたという認識」を梶先生も津上さんも持ち合わせていることは私も承知しています。しかし、私と梶先生の論点の最大の相違は、先生が7月の元高止めを「市場的要因」と言っているのに対して、私は「中国が意図的に止めた」と主張しているのです。そのために、いろいろな証拠を出しているのです。
 バスケットの計算は私にも分かります。しかし、津上さんが嘗て所属していた経済産業研究所のウェブサイト(http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/07111601.html)によると、伊藤隆敏教授は、中国の通貨バスケットは「シンガポールが採用するような真の通貨バスケット制とは程遠いのが現状のよう」であり、「中国の人民元改革には実質的効果が無く、中国人民元ではドルペッグが続いている」と結論付けています。また、OECDで嘗てエコノミストをしていた元官僚の方はご自身のブログ(http://blog.guts-kaneko.com/2007/12/post_369.php)で、中国は「「人民元をドルペッグから通貨バスケット制に変更しましたよ」と大宣伝をして、実際には実質的なドルペッグを続けて市場関係者をだました」と書いています。
 いずれも2007年末に書かれたものですが、その後、中国の通貨バスケット制が根本的に改善(?)したという証拠がない限り、中国の通貨バスケットの中身を論じることは無意味だと思います。バスケット制を導入したと言いながら実際はドルペッグを続けている国は中国だけではないので別に驚きはしないのですが、実質ドルペッグの通貨を論じる際に「対ドルを使うな!」と言われても不可解です。
 英字紙の信憑性に疑問を持っておられるようですが、BloombergやFTなど英米の一流紙は普通の情報媒体ではないということを指摘しておきます。為替というのは容易に外交問題に発展する重要な議題で、最近のガイトナー発言に表れているように人民元は中国とアメリカとの間で耐えざる論争のもとになっています。津上さんは、「一部の研究者」が―それが中国社会科学院という中国政府直属かつ中国で最重要のシンクタンクの研究員であれ、胡錦濤主席が主催する会合に出席したばかりという清華大学の研究者であれ―中国指導部の何の承認もなく、まさにアメリカとの間で問題になりうる元高政策の転換を、アメリカ発の世界的金融情報機関でありアメリカ政府・民間問わず日々必ずチェックするであろうBloombergのインタビューに対して、テキトーに私見をペラペラとしゃべるとでもお考えでしょうか?
 津上さんがマーケット業務に携わったことがあるかどうか知りませんが、Bloombergは専門のPC端末があり、世界中の市場参加者(ディーラー、トレーダー、アナリスト、エコノミスト等)がその端末のニュース・データを見ながら何百億、何千億もの金額を動かしており、当然、先の情報もその端末を流れるわけですね。元高を狙って投機資金が中国に集まっているときに、私が引用したような情報が世界を駆け巡るとどういうことになるか、指導部から何の指示も承認もなく、かつ自分が中国政府に近い立場にあると世界中から見られることに全く無頓着で、勝手に自らの見解を語るほど「一部の研究者」は無能だと津上さんはお考えでしょうか?
 しかも、彼らの言う通り、元高政策は転換され、資金流入に対する規制が厳しくなり、輸出税の還付率は引き上げられています。彼らの言うことを信用しない理由があるのでしょうか?

歩厘歩厘 2009/02/01 20:01 >(7月)「27日の中国人民銀行金融政策委員会で元高政策の終焉が公にされました。」と書いておられますが、ソースは何でしょうか?

 別にソースに当たらなくても読めば分かると思います。ソースの一つは、私がこのポストに書いた1月11日付コメントの中にあるBloombergの記事です。私自身がそのコメント中に「CICのエコノミストまでが、中国人民銀行の文言の変化を受けて「The change in the central bank's wording is a clear sign that the yuan's appreciation will slow」と述べています」と翻訳していますが、その部分を原文で抜き出すと

The People's Bank of China didn't reiterate the pledge to ``increase the exchange rate's flexibility'' in a statement published July 27 after the second-quarter meeting of the monetary policy.

“The change in the central bank's wording is a clear sign that the yuan's appreciation will slow,” said Ha Jiming, a Hong Kong-based chief economist at China International Capital Corp., the nation's first Sino-foreign investment bank.

となります。まず、7月の声明文とそれ以前を比較すると、7月は経済成長が前面に出てくる代わりに「金融政策を引き締める(tight monetary policy; 従緊貨幣政策)」という言葉がなくなって、金融政策のスタンスを表現する言葉そのものが消えます。そのことだけでも元高政策の転換が示唆されていますが。さらに、もっと露骨なのは、上記のBloombergの記事にもあるように7月の声明文から「人民元の柔軟性を増す(increasing RMB exchange rate flexibility; 増強人民幣匯率弾性)」という言葉がなくなっています。それまでは「保持人民幣匯率在合理、均衡水平上基本穏定」の前にその言葉がありました。「人民元の柔軟性を増す」とは、取りも直さず「元高にする」という意味です。その言葉が消えることがどういう意味を持つかは言うまでもないことです。ちなみに、中国人民銀行がこれらを単独で変更できるものではなく、声明文発表2日前の7月25日に開かれた中国共産党中央政治局会議の決定に沿って中国人民銀行が声明文を変えています。
 次のリンクはその7月25日に行われた中央政治局会議に関するロイターの記事ですが(http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-32921520080726)、2日後に発表された中国人民銀行の声明文とほとんど同じです。同記事によると、中央政治局は「インフレを抑制しつつ健全な成長率を維持することが、2008年下半期の経済政策の優先課題との認識を明らかにした」のですが、それは「経済の過熱回避に焦点を当てたこれまでの声明からトーンが大幅に変化」しているということです。「政府は『金融・財政上』の調整を進めるべきとしたが、金融政策の『引き締め』を継続するかについては言及しなかった」ことは中国人民銀行の声明文と同じです。また、「通商政策の変更の可能性や為替政策にも触れていない」理由は元高政策を終焉させるためだと推測されます。さらに、「世界的な金融危機や四川大地震などの自然災害による影響は、中国の基礎的な成長要因を阻害していないと述べた。その一方で、世界的に不透明感が高まっているとして、新たな課題への対処に特別な能力が求められると指摘した」ことも中国人民銀行の声明文と同じです。
 最後に付け加えると、中国人民銀行が「我々は元高を止めます」なんてハッキリと書くわけはありません。中国はそんなバカじゃないですよ。日本だって2004年に為替介入を行っていますが、その時に「えーと、すみません、○月○日に円売り介入します」なんて言わないでしょ。

歩厘歩厘 2009/02/01 20:03 梶先生

この件について書くのはこれで最後になるかもしれませんが、これまでも述べてきました通り、私は昨年7月に中国が
・資金流出入規制
・輸出企業支援
を目的に「意図的に」元高を止めたのは間違いないと思います。それは「市場的要因」ではないということです。

 今日は、あるブログの記事(http://ivanwil.cocolog-nifty.com/ivan/2008/07/post_da68.html)をご紹介します。このブログは独立行政法人 科学技術振興機構北京事務所長の方が書いているのですが、それによると、昨年7月に「実に多くの国家指導者たちが、沿岸部等の中国経済の『機関車』となっている地区を相次いで訪問して」いるということです。引用すると、

・陳徳銘商務部長:7月第1週、浙江省(温州、台州等)
・温家宝総理:7月4日〜の6日、江蘇省蘇州、上海
・習近平政治局常務委員:7月4日〜5日、広東省(深セン、東莞)
※この訪問は香港訪問の途上に行ったもの
・王岐山副総理:7月3日〜5日、山東省(烟台、威海)
・李克強政治局常務委員・副総理:7月6日〜8日、浙江省(温州、杭州等)
・呉邦国政治局常務委員・全国人民代表大会常務委員会委員長:7月7日〜10日、内モンゴル自治区(フルンベル、満州里、オルドス、フフホト等)
・温家宝総理:7月19日〜20日:広東省(広州、東莞、深セン)
・胡錦濤主席:7月20日、山東省青島
・賈慶林政治局常務委員・全国政治協商会議主席:7月21日〜23日:天津

であり、このブログを書いた方は「これだけそうそうたるメンバーの国家指導者の方々がほぼ時期を同じくして各地を視察するのは極めて異例のこと」であり、「中国の輸出産業には大きなブレーキが掛かったことが上記の国家指導者の沿岸地域での視察に繋がって」おり、「温家宝総理がその講話の中で「直面する困難と問題を高度に重要視し、危機意識と憂慮の意識を強め」といった緊迫感を持った表現を使っていることからも国家指導者の中国輸出産業に対する危機意識が窺えると思います」と指摘していますが、極めて正しい見解だと思います。
 また、「7月21日に胡錦濤総書記は中国共産党以外の民主党派の幹部や無党派の知識人を招いた会議を開いて検討会が開催された」(http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-07/25/content_8770190.htm)ということですが、私が1月11日のコメントで引用した「胡錦濤主席が主催する会合に出席したばかりという清華大学の研究者」とは李稻葵(Li Daokui)氏のことで、その21日の会議に出席していることは新華社の上記リンクから確認できます。この方はHarvardで経済学のPhDを取っています。おそらく、この会議の席上で先のBloombergの記事にあったように元高政策の転換が議論されたのだと思います。
 あるいは、科学技術振興機構の方がブログに書いているように、「7月8日〜11日に、中国政府の国務院は連続して3つの経済情勢に関する検討会を開催」され、「一つ目は7月8日に開催した地方の責任者からの報告と意見を聞く討論会、二つ目は7月10日に開かれた経済学の専門家によるマクロ経済情勢に関する検討会、三つ目は7月11日に開催された専門家による金融及び不動産情勢に関する検討会」であり、かつ、「引き続いて7月15日と16日の二日間、半日づつかけて温家宝総理は、国務院常務会議を開き、2008年上半期の経済情勢の分析と下半期の経済政策について議論を行った」とのことなので、実際には、そこでの議論に基づいて7月上旬に既に元高政策の転換がほぼ決定されていたのかもしれません。李稻葵氏もBloombergのインタビューに対して「Most economists agreed the government needs to break the one-way appreciation of the yuan」と答えていますので、元高に対して、あちらこちらからかなり不満があったのでしょう。私が1月18日のコメントで引用したBloombergの記事は7月23日付であり、中国社会科学院の若い研究者である張明(Zhang Ming)氏は既にほぼ決定済み元高政策転換に関して、使いっ走りのスポークスマンのような役割を演じさせられたのかもしれません。25日の中央政治局会議前に流れは決まっていたのではないでしょうか。

つまり、事実としては
・昨年7月に中国指導部が相当の危機感を持って輸出産業の中心地である沿海部を集中的に訪問した
・それと並行して専門家を交えて経済問題に関する議論が何回も行われた
・そして中央政治局が「健全な成長率維持」に方針を転換し、
・中国人民銀行がその声明文の中から元高を意味する言葉を削除した
ということです。

ここで偶然に都合よく「市場的要因」で元高が止まるものなのでしょうか?

 先生は経常収支黒字で通貨高を説明したいようですが、経常収支黒字国の通貨が必ずしも増価しないことは韓国や台湾、シンガポールなどアジア諸国の例を見れば明らかだと思います。もともと、国際収支の動向で名目為替レートを説明するのは無理があります。

kaikajikaikaji 2009/02/03 01:35 歩厘さん:

いろいろソースを挙げて力のこもった議論をしてくださるのはありがたいのですが、基本的に今回の歩厘さんが出された疑問点についても、従来の私あるいは津上さんのコメントを注意深く呼んでいただければそれに対する答えが出ているものばかりだと思います。従いまして、これ以上このコメント欄に書き込みを続けていただいてもおそらくこれ以上議論が深まることはないように思えます。むしろ、一度論点を整理されてご自身のブログなどにエントリをまとめられたほうがよいのではないでしょうか。

 とりあえず二点ほど明らかに誤解があると思われる点を指摘しておきます。

 まず、私は2008年7月前後にに中国政府が金融政策を大きく転換した、ということについてはまったく否定していません。ただ、その政策変更に対する「市場の反応」の効果を無視することはできない、と申し上げているわけです。そのことは、実は歩厘さんもお認めになっているのではないでしょうか?たとえば、歩厘さんは以下のようにお書きになっていますが、

>元高を狙って投機資金が中国に集まっているときに、私が引用したような情報が世界を駆け巡るとどういうことになるか、指導部から何の指示も承認もなく、かつ自分が中国政府に近い立場にあると世界中から見られることに全く無頓着で、勝手に自らの見解を語るほど「一部の研究者」は無能だと津上さんはお考えでしょうか?

 中国政府の政策転換あるいはそのアナウンスによって「元高を狙った投機資金」の流れが変わること、これが「市場の反応」でないとしたら一体何なのでしょうか?決して無能でなく、したがって世界中から見られることに無頓着ではない政府関係者が、中国政府の金融政策の転換について世界的に影響力のあるメディアを通じて発信しているという事実こそ、中国の為替レートの動向について「市場」の影響力がいかに大きいか、ということを雄弁に物語っているのではないでしょうか。

 もう一点は、

>先生は経常収支黒字で通貨高を説明したいようですが、経常収支黒字国の通貨が必ずしも増価しないことは韓国や台湾、シンガポールなどアジア諸国の例を見れば明らかだと思います。もともと、国際収支の動向で名目為替レートを説明するのは無理があります。

 私は為替レートが経常収支の動向によって決まるということは一言も申しておりません。なぜなら為替レートは常に経常収支に資本収支を加えた国際収支のバランスによって決まるからです。経常収支が黒字であっても資本収支が急激に赤字になれば韓国のように為替レートが減価するのは当然のことです。というわけで、「国際収支の動向で名目為替レートを説明するのは無理があります」というのは国際収支と経常収支を混同したご発言だと理解せざるを得ません。
 前に書いたことの繰り返しになりますが、為替レートの動向があくまでも経済学的な現象である以上、この問題に関する100の政治家の発言を追いかけるよりは、国際マクロに関する基本的な理解を一つ深められたほうが、現実についての正しい認識に早く到達されるのではないかと思います。

歩厘歩厘 2009/02/09 00:50 先生は、

「中国が輸出産業支援のために元高政策を転換した」

ことに賛成しているということでよろしいのでしょうか?

kaikajikaikaji 2009/02/09 01:11 すでに述べたことの繰り返しになりますが、昨年7月ごろに中国政府が金融政策を転換したことは明らかですが、それは輸出産業支援「だけ」のためではありませんし、またそれまでの政策も「元高政策」と呼ぶのは適当ではないと考えています。

歩厘歩厘 2009/02/14 09:55 書くのが面倒になってきましたが、国際収支の見方が間違ってますよ。経常収支黒字は常に同額の資本収支赤字を生み出します。仮に資本収支が黒字になっているとすれば、それは中央銀行が為替介入をして外貨準備を増やしたからです。

>たとえば左辺における資本収支黒字が大きく増加したとき、自国通貨には増価圧力がかかるため、それを防ごうと思えば通貨当局は外貨(ドル)買い介入を行わねばならず、その結果右辺の外貨準備が増加するわけである。

というのは、国際収支表の見方が理解できていないナンセンスです。ご所望ならもっと詳しく説明しますが。

kaikajikaikaji 2009/02/14 21:01 >経常収支黒字は常に同額の資本収支赤字を生み出します。
 海外との経済取引は必ず経常勘定と資本勘定に二重記載されますので、経常勘定と、民間の資本収支と公的準備取引収支をあわせた資本勘定の合計が常に0になるというのはおっしゃるとおりです。しかし私が「資本収支」と使う場合は一貫して民間主体によるう資本取引の収支のみを対象にしています。「恒等式」でわざわざ「外貨準備の増減」という項目をあげているのですから、そこに誤解の余地はないと思うのですが。

歩厘歩厘 2009/02/22 23:43 やはり国際収支表の仕組みが理解できていないようですね。私が書いているように、

「仮に資本収支が黒字になっているとすれば、それは中央銀行が為替介入をして外貨準備を増やしたから」

です。

「資本収支黒字が大きく増加したとき、自国通貨には増価圧力がかかるため、それを防ごうと思えば通貨当局は外貨(ドル)買い介入を行わねばならず、その結果右辺の外貨準備が増加する」

などというのはマクロ経済学の初歩である国際収支表が理解できていないトンデモ理論です。経常収支や、当局による為替介入の動向を無視して勝手に資本収支が増えるなんてありえません。先生の上の理論が正しいとするならば、中央銀行は「経常収支黒字+資本収支黒字」にちょうど合った分だけ為替介入をしなければなりません。仮に「経常収支黒字+資本収支黒字」が157億4503万3211ドル83セントならば、その83セントまできっちり測って為替介入をしないといけないことになります。つまり、各国の中央銀行は「国際収支表を横において」金融政策を展開しなければならないことになりますが、そんなバカな中央銀行はこの世界には存在しません。中央銀行は国際収支表の帳尻を合わせるために為替介入しているわけじゃないんですよ。先生は資本収支を「民間」と「公的」に分けて妙な理論を構築していますが、そんなものは「はぁ?」ってな感じですね。日本式の

経常収支+資本収支≡外貨準備高増減

を前提とするならば、「中央銀行が為替介入をして外貨準備が増えない限り、経常収支と資本収支の合計は常にゼロになる」ということです。もちろん、誤差は除きますが。経常収支黒字国で資本収支が黒字になるのは中央銀行が通貨安にしようと為替介入をしているからです。つまり、中央銀行が為替介入をした結果、資本収支が黒字になるのであって、「資本収支が黒字になったから結果的に中央銀行が為替介入をする」わけではありません。

日本でも数年前に巨額の為替介入をした時は資本収支が黒字になっています。国際収支表は複式簿記の考え方で作られているので、それが理解できれば簡単に

>経常収支が黒字であっても資本収支が急激に赤字になれば韓国のように為替レートが減価するのは当然のことです。というわけで、「国際収支の動向で名目為替レートを説明するのは無理があります」というのは国際収支と経常収支を混同したご発言だと理解せざるを得ません

とかはトンチンカンであることがすぐに分かります。経済学を一から勉強したほうがいいですね。

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