梶ピエールの備忘録。 RSSフィード

2009-11-07

[][]商人の倫理、統治の論理


 中国ではブロックされて見ることが叶わなかったkokさんのブログの記事より。

同じような“非民主主義国”でも、ロシアには、アンナ・ポリトコフスカヤというチェチェン問題を自らの命をかけて追及したジャーナリストがいる。彼女の暗殺が、ロシアの暗黒部分を西側に伝えた。このような人材のなさがまた、ウイグルとチベットには哀しいことである。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20091026/208026/?P=6

吉田さん。ちょっとお聞きしますが、アンナ・ポリトコフスカヤはチェチェン人なのですか?違うでしょう。支配民族のロシア人です。比較するなら告発する漢族中国人のジャーナリストなり、知識人を言わなければならないのではないですか。あなたは知らないだけでしょうが漢族にも王力雄という人がいます。そして「中国を追われたウイグル人」を読んで御覧なさい。命をかけて中国の核実験被害を告発したアニワル・トフティをはじめとする何人もの「人材」がいます。

 kokさんのおっしゃるとおりだと思います。

 だが、より根深い問題は、結局のところ「反テロ」戦争の文脈や米中両大国の鞘当てといった「統治の論理」でしかラビア・カーディルという人の言動が受け止められないところにあるのだと思う。そういった日本のジャーナリズムの文脈では、彼女の自伝は、どうしても後半の獄中生活やアメリカへの亡命のくだりが注目されてしまうのかもしれない。だが、この本の本当に重要で面白い部分は彼女が改革開放の波に乗って財を成しながら、「誰もが平等に金儲けのチャンスが与えられる社会」を目指す、という形で民族のおかれた状況を改善していこうとする部分にある。

 

 したがってこの自伝は本来、「現代中国における商人道とその挫折」といった副題をつけるべきものなのだ。ラビア・カーディルとは何よりもジェイン・ジェイコブズの解くところの「市場(商人)の倫理」を体現した人物に他ならないからだ(さらに言えばそんな根っからの「商売人」である彼女が政治的な抵抗運動のシンボルとならざるを得ないところにこそ、現代のウイグル人並びに中国の悲劇がある)。そのことを彼女の「自伝」から読みとり損ねている、という点において、日経ビジネスオンラインの記事のインタヴューアーは中国政府と同じ過ちを犯している、といえるのではないだろうか。

ジェイコブズによる「市場の倫理」(松尾匡『商人道ノススメ』より引用)

・暴力を締め出せ

・自発的に合意せよ

・正直たれ

・他人や外国人とも気安く協力せよ

・競争せよ

・契約尊重

・創意工夫の発揮

・新奇・発明を取り入れよ

・効率を高めよ

・快適と便利さの向上

・目的のために異説を唱えよ

・勤勉なれ

・節倹なれ

・楽観せよ

商人道ノスヽメ

商人道ノスヽメ

水谷尚子水谷尚子 2009/11/08 01:08 表題は、監修者や訳者には付ける権利はなく、出版側が売るためにつける、というのが日本の出版業界の慣例になっています。
私も、梶谷さんの考えにまったくもって同意するのですが、こればかりは残念なことに、私には不可抗力。

kaikajikaikaji 2009/11/08 01:28 監修作業どうもお疲れ様でした。タイトル・副題については確かにそうですね。しかし自分で引用しておいてなんですが、上記のジェイコブズによる「市場の倫理」は本当によくできていて、まさにラビア・カーディルの行動原理そのまんま。よりによってこういう人を「テロリストの親玉」呼ばわりする中共も相当センスが悪いと思う。

水谷尚子水谷尚子 2009/11/08 01:39 おっしゃるとおり、まさに彼女は商売人。王道の商人道を行ってます。彼女の運動のやりかたも、まさにソレなんですよねえ・・・。
私はね、ラビアさんの伝記から『黄金の日々』の納屋助左衛門とかを思い出しちゃいましたよ。

kaikajikaikaji 2009/11/08 09:42 なるほど「黄金の日々」ですか。松本幸四郎・・根津甚八・・川谷拓三・・懐かしい!(年がばれる)

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