ホイットニー・ヒューストンの死因はアルコールと処方箋薬(Xanax)の相互作用の可能性が高い

Scientific Americanのオンライン版の記事Deadly Duo: Mixing Alcohol and Prescription Drugs Can Result in Addiction or Accidental Deathによれば、ホイットニー・ヒューストンの死因はアルコールと処方箋薬(Xanax)の相互作用の可能性が高いそうです。

Xanaxは日本ではソラナックスという名前で売られている抗不安薬で、アメリカでの売り上げは抗不安薬としてはNO.1の薬です。タイトルは忘れましたが以前読んだアメリカの小説には、「"Xanax express"に乗って不安とおさらばする旅に出よう」みたいなセリフがでてきました。それほど一般的で誰もが知っている薬ということでしょう。

俳優のヒース・レジャーマイケル・ジャクソンの死因にもXanaxのような鎮静作用を持つ処方箋薬が関係している可能性が高いそうです。ただし処方箋薬の問題はセレブに特有の問題という訳ではなく、アメリカ社会全体の問題のようです。2007年には27,000人のアメリカ人が処方箋薬の意図的でない(要するに自殺でないということ)過剰摂取(オーバードース)で死亡したという統計があります。

オーバードースによる死者が交通事故の死者を上回る州もあるというのはかなり衝撃ではないでしょうか?

そもそもなんで自殺したいわけでもないのに薬を過剰摂取してしまうのかというと、中毒になってしまっているからです。鎮痛剤治療を受けている患者の3-5%は中毒に陥っているとのデータがあります。またアルコール中毒や喫煙などの前歴を持つ人は処方箋薬中毒になりやすいようです。麻薬の代用として処方箋薬を使用する人もいることはMTVのドキュメンタリーとかでおなじみですね。

しかし、これらの鎮静剤を単独でオーバードースした場合よりもさらに危険なのはアルコールと一緒に過剰摂取した場合です。アルコールと鎮痛剤はそれぞれ違ったメカニズムで呼吸をゆっくりにするため、両者が作用すると呼吸が完全に停止する可能性があるのです。

ホイットニーの部屋から見つかったXanaxという薬を分解する酵素はアルコールを分解する酵素と同じため、Xanaxとアルコールが酵素の取り合いをして長く体に残ってしまうそうです。Xanaxもアルコールも中枢神経系を阻害して心拍数と呼吸を低下させる作用がありますが、さらに悪いことにこの二つの物質はシナジー効果を発揮してしまうらしいのです。どういうことかというと、アルコール単独の効果とXanax単独の効果を単純に合計した以上の効果が両者を飲み合わせたときに発生するということです(1+1が2以上になってしまう訳です)。またアルコールとXanaxには記憶を喪失させる効果もあるため、既に薬を飲んでいるにもかかわらず、そのことをすっかり忘れてもう一度飲む危険性があります。

こうした鎮静剤は規制緩和のおかげで1999年以来、販売量が四倍まで膨れ上がりました。また処方箋を持っていない客に対しても鎮静剤を販売するインターネットショップの存在も問題視されていますが、規制が難しい(特にアメリカ国外のサーバーで営業している場合)ようです。