いつともなくどこへともなく

2001年から続けている、生と死と言葉とのかかわりについて考えたことの備忘録です。

「途中」としての生と言葉

「途中」ということについて考えよう。われわれは途中という状態にいることが非常に多い、というか、途中が全て、とも言い得る。 たとえば、通勤の途中であるとか、プロジェクトの途中であるとか、休暇の途中であるとかだ。そもそも人生やら生活やらに関する…

脳のリハビリ

「この前」書いたと思っていた前回のブログエントリーが5年前のものだと気づいて、少々愕然とした。毎日とか毎週ではないにせよブログを長期にわたって書かないというのは、わたしのようなタイプの、考えてばかりで行動があとになるタイプの人間にとっては「…

親愛なるフランスの友へ / 震災当初の草稿から

震災から2年経った。震災直後、外資企業に勤めるわたしは家族とともに東京から大阪、続いて福岡に移動していた。下記はそのころ、フランス語に訳してフランスの新聞に寄稿しようとしていた文章だ。当時、各国が日本産品の禁輸措置、日本からの資金引き揚げな…

「幸福論」の系譜の末尾に付け加える蛇足

「幸せってなんだっけ、なんだっけ?」というバカげたCMソングが以前よくテレビから流れて来て、イライラしたものだ。しかし、古来、「幸せ」とはなにかについて、偉大な哲学者たちがそれぞれ、立派な説を唱えて来たのもまた、事実であるようだ。いままで、…

動物の視線

震災からちょうど5ヶ月たったわけだが、それとはほとんど関係なく、動物、それから創造、ということについて書く。2年ほど前から、小鳥を飼っている。1羽2000円ほどのセキセイインコの雛を、2人の息子それぞれの所有権を認めつつ買って育てている。 それ…

終わりであり始まりである死

4日前に、父が死んだ。病室で、わたしにとっての固有の、唯一無二の存在、唯一無二の肉体、精神、魂、そうしたものが、少なくとも目に見える形では活動しなくなるのを眼前に見た。 医師の指先が父の上下の瞼を開き、手にしたライトで眼球を照らし出した。 わ…

「他者」に、会いに行く

昨年末、米国発の某ビジネス系SNSを経由してヘッドハンターからアプローチがあった。 彼の紹介で、某欧州系グローバル企業の面接を受けるハメとなり、その最終面接があと数日に近づいている。決まれば、3週間の欧州数カ所での研修の後、日本法人での着任、と…

神とは。精神とは。

神とはなんだろう。 神は本当に「存在する」のか。 神は本当に「存在しない」のか。 誰もが抱く、幾分ナイーブな問いだ。こんなことを言い始めると、おせっかいな人々は忠告するだろう。 ーーこの期に及んで、またぞろ「死んだはずの神」を引っ張りだそうと…

不眠が覚醒なき覚醒として、不在が存在に先行する不在として「ある」とはどういうことか

iTunesストアを開くと3位に「小柳ゆき」がランクインされていて、ちょっとビックリ。 近年の日本人女性歌手といえば、すばらしい才能が目白押しだ。思いつくだけでも、絢香、青山テルマ、juju、加藤ミリヤ、木村カエラ、西野カナ、枚挙にいとまがない。個人…

来るべきもの、来るべきとき、あるいは「待つ」こと

「運命は、」などと書き始めることの気恥ずかしさはとりあえず置いておくことにして。 運命は、ふいに回り始める。 この事実、いや、「経験的に知った、現実に対するある種の印象」ばかりは、どうにも打ち消しようがない。 笑うくらい打つ手がない、とすら言…

デリダの「詩と真実」

くどいようだが、デリダの「憑在論」は、やはり彼一流のジョーク、ダジャレである、と思う。 そしてまたくどいようだが、20世紀末に生きた人間の「考え」にとって、とても重要な概念でもある。 マジメに考えてもしかたがないような言葉遊び、冗談を、概念=…

「個人」にとり憑いた亡霊

一年ぶりの更新となります。一年とひとくちに言っても。。。ため息以外出ない。 私生活上のことを少しだけ書くと、転職はしていないが、職種が変わった。 紙の雑誌編集者から、いわゆる「ウェブプロデューサー」へ。 まったく華麗でない転身だ。 昨年3月、前…

「作者の死」と新世界秩序における自由

少し前のことになるが、下記のようなニュースが報じられ、諸方で失笑を買った。 日本音楽著作権協会(JASRAC)や実演家著作隣接権センター(CPRA)など著作権者側の87団体は1月15日、「文化」の重要性を訴え、私的録音録画補償金制度の堅持を求める運動「Cul…

『ゴッドスター』  古川 日出男 著

古川 日出男作品の「通読初体験」だったのだが、入口を間違えたらしい。久々に叩き甲斐のある作品に出逢えたという、不健全なトキメキを感じた。単純に、地の文で「高速で」とか書きながら高速の描写で「突っ走っていく」というのは、いくらなんでも古くさい…

《破壊と過剰の文学》だけが求められている

またまたなにをいまさら、という話だが、仲俣暁生さんのブログの2007-10-14 Sunday『■アヴァン・ポップの亡霊に気をつけろ 』は、仲俣氏なりの《批評と真実》が端的に表れたいいエントリーだった。 http://d.hatena.ne.jp/solar/20071014 90年代に崩壊したの…

参院選--「まつりごと」とは言うけれど

日曜日の夜、自宅のテレビにはフジテレビの参院選開票速報が映っていた。いわく「麻生太郎は昔、女性誌に『ちょいワルおやじ』として載っていた」、いわく「日傘を差して遊説する某候補者」……わたしはまったく大人げないことに、というより、人としてどうか…

エドワード・ヤンの訃報

エドワード・ヤンの訃報に接し、正直、自分でも意外なほどのショックを受けた。パリにいた1996年に、ジル・ドゥルーズ自殺の報を聞いたとき以上の驚きと落胆だ。映画ファンとは言い難い自分は、エドワード・ヤンの代表作である『クーリンチェ少年殺人事件 《…

It only happens to be so

ほとんど沈黙、という日々にふさわしいエピソード。メールを整理していたら自分あての見慣れないメール・・・といっても、備忘録がわりに自分にメールを送ることはたまにあるから、そんなに珍しいことではないのだが。 It only happens to be so. You don't …

『KKKベストセラー』 中原 昌也

ISBN:4022501782 『名もなき孤児たちの墓』はある意味、中原作品に慣れ親しんでいる読者にとっては"ふつうの小説っぽさ"も備えていて、野間文芸賞受賞も順当wと思われるかもしれない。しかし『KKKベストセラーズ』に至っては、全編愚痴ばかり、そもそも元に…

『半島を出よ』  村上龍 著

ISBN:434400759X、ISBN:4344007603 いまさらというネタですが。身も蓋もない話だが、『半島を出よ』は読みごたえのあるすばらしい作品だった。……バカみたいな感想ですね。ただ、村上龍、というか現代日本文学そのものの熱心な読者とはとても言えないわたしに…

アンナ・ポリトコフスカヤの死

10月の初旬、これまでプーチン政権の"圧政"を痛烈に批判し、モスクワ劇場占拠事件では仲介役を務め、ベスラン学校占拠事件では毒を盛られて瀕死となるなどで注目されてきたロシアの女性ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤがなにものかに暗殺された。…

毎日掌編小説をアップ!?

これまでわざわざ訪れていただいた方々、長らく更新せずすみませんでした。とっととやめろ、という話もありますが・・・性懲りもなく毎日掌編小説をアップする『日々是掌編』http://blog.livedoor.jp/kakena/?blog_id=2025390 というブログを始めてみました…

ブログがジャーナリズムを変える 湯川鶴章 著

ISBN:4757101945中身や著者である鶴川氏については紹介の必要はないかもしれない。 ひとことで言うと、なかなかいい本だった。 正しい読み方ではないかもしれないが、本書を読んで「この著者は間違いなく善人だ」と思った。 善人という表現では言葉足らずだ…

拡大する中東の戦禍 〜われわれの「日々」はいつも同じではない

イスラエルによるレバノン侵攻の状況は、激化する一方だ。 『ヒズボラがロケット弾大量発射=イスラエル軍、6000人規模で侵攻−レバノン』 2006/08/03-01:03 時事通信 http://www.jiji.com/cgi-bin/content.cgi?content=060803010309X363&genre=int 『ベ…

ライス米国務長官、レバノン訪問

『ライス米国務長官がレバノン訪問、停戦に厳しい条件』 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060725-00000145-reu-intレバノンを訪問したライス国務長官は、イスラエルが掲げてきた ヒズボラが無条件でイスラエル兵を解放し ヒズボラの部隊を国境より20…

ソファの上で目が覚めると

ソファの上で目が覚めると、窓の外の空はすでに明るかった。首の後ろから肩にかけての部分が重い。夜半の二時半ころに入稿を終えて、そのままソファの上に倒れ込むように眠ってしまったのだった。編集部には自分のほかに、二人の人間が残っていた。ひとりは…

数年後に今日の日を

ひさびさの更新です。その間に見に来てくださった方、申し訳ございませんでした。総選挙で自民党圧勝の夜・・・数年後にこの日のことを本当に苦々しいものとして思い起こすことにならなければいいな、と思う。自民党の片隅にいた、かつての「お変人の純ちゃ…

『グリンゴ』手塚治虫

※今回は『グリンゴ』(手塚治虫)のネタバレを含みますので、ご注意ください。最近、ずいぶん前から構想を持っていて、実際に小説として50枚ほど書いて放り出していた作品に、もう一度取り掛かかろうと思い、資料を読み始めている。舞台としては東京、北関東…