タイトターン

kakeru33072004-03-22

椎名誠の小説というと、フォークを目玉にずぶりずぶりと突き刺すような暴力描写だったり、ぬらぬらねとねとなナニカが登場するSFだったり……というわけで、いつものGoogleのイメージ検索で「ぬらぬら」を検索してみたら、案の定、こんなのが!
もちろん本物じゃないし、芯までラテックスですから、というわけで無修正。

あ……もしかして芯は固いシリコンとか入ってるのかも。

「岳物語」

岳物語 (集英社文庫)

椎名誠といったらスーパーエッセイ、そしてそこから発展した私小説が評価されている人で、僕の大好きな「武装島田倉庫」みたいなSFはあまり評価されていない(刷り部数で倍どころではない差があるらしい)。

その私小説の中でも、一番有名なのが「岳物語」だろう。
そして、ある種の中高校生への認知はかなり高い。じつはこの作品、中学入試の頻出作品の一つなのだ(他に「白い手」も)。なんてことは知ってたんだけど、頭からきちんと読んだのは初めてだった。

結論から言うと、「哀愁の町に霧が降るのだ」のハチャメチャなエネルギーを期待していたので肩すかしをくらってしまった。
もっとも、家族モノ親子モノなんだから、何らかの割合でサザエさん化ちびまる子化してしまうのはしかたないんだろう。見当違いな期待をしていた方が悪い。

「哀愁の街……」で木村晋介(キムラ弁護士)や沢野ひとし(ワニ目イラストレーター)とバトルロイヤル的共同生活をしていた頃のハチャメチャエネルギーは、やがて「さらば国分寺書店のオババ」のようなオリジナリティーあふれる作品となり、彼をスーパーエッセイ、昭和軽薄体の旗手にした。
その後、いつの頃からか、彼は著作で日本社会を「ハイテクだけで歴史も文化もない国」と断罪したり、ひいては「週刊金曜日」な人になってしまっていたわけだけれど、そんな左旋回がスポイルした何かもあったのではないか。彼の近作を読んで思うのはそんなことだ。
ブンガクなんていうのは、作者が存命中に教科書に載ったり、入試で頻出するようになったらオシマイだよね……なんてゴールデン街っぽいことを考えてみたとき、教科書への掲載が問題になった筒井康隆(「無人警察」)や村上春樹(「パン屋再襲撃」)は、まだまだ過激にブンガクな人なんだなあ、と思った。

  • 白い手 (集英社文庫)「白い手」
  • さらば国分寺書店のオババ (新潮文庫)「さらば国分寺書店のオババ」

椎名誠トリビア
椎名誠の椎名性はペンネームかつ旧姓。
妻や娘と名字が違うのは……? とか思っていたら、なんのことはない結婚の時に妻の姓になっていただけだった。離婚とか面倒なことじゃなくてよかった……って、他人が安心してもしょうがないんだけど。