新潟直線コースと「斤量比」

新潟改装以降5年間、直線1000㍍の名物重賞アイビスサマーダッシュは8月の後半に行われ、外枠有利が続いていた。今年からはスプリント重賞路線の整備のついでに、7月の開幕週に移行されたらしい。これであの著しいトラックバイアスも相当緩和されると期待してよさそうだ。


だが枠順以外にも、このコースには気になるデータがある。
それは斤量。
というか、斤量と馬体重の比である。


以下ではこの「斤量と馬体重の比」のことを「斤量比」と呼ぶことにする。たとえば500㌔の馬体重の馬が55㌔の斤量を背負っていれば、「斤量比」は11%になる。



斤量比(新潟1000㍍)
  • 〜11.0% ( 25 23 16 223 ) 勝率8.7% 回収率124%
  • 〜11.5% ( 38 39 34 367 ) 勝率7.9% 回収率68%
  • 〜12.0% ( 45 39 50 507 ) 勝率7.0% 回収率84%
  • 〜12.5% ( 29 31 36 406 ) 勝率5.8% 回収率45%
  • 12.5%〜 ( 14 20 16 347 ) 勝率3.5% 回収率25%

過去5年間全ての新潟直線レースについて調べてみた。明らかに「斤量比」が軽い方が好成績を収めていることがわかる。それも5年間、毎年欠かさずである。
一応、他にも去年一年間の全ての競馬場における1000〜1200㍍コースについても同様に調べてみたが、これほど「斤量比」の効果が顕著に現れたのはこの新潟1000㍍ぐらいしか見当たらなかった。



そしてもう1つ大事な傾向は、レースレベルが上がれば上がるほど、「斤量比」が果たす役割がより一層大きくなることだ。下級条件なら馬の能力さえ高ければ勝てるが、能力が拮抗する上位クラスでは、少しでも「斤量比」が軽ければかなり有利に立つことができる。



上のデータから下級条件のものを除外し、準オープン以上に絞ってみると、

  • 〜11.0% ( 4 6 3 33 ) 勝率8.7% 回収率196%
  • 〜11.5% ( 7 6 5 35 ) 勝率13.2% 回収率80%
  • 〜12.0% ( 3 2 4 38 ) 勝率6.4% 回収率12%
  • 〜12.5% ( 0 0 2 13 ) 勝率0% 回収率0%
  • 12.5%〜 ( 0 0 0 5 ) 勝率0% 回収率0%

このように、12%を超えた馬はほとんど勝負にならなくなる。



さらに、No.1決定戦であるアイビスサマーダッシュに限定すると

  • 〜11.0% ( 2 3 1 14 ) 勝率10.0% 回収率131%
  • 〜11.5% ( 3 2 3 17 ) 勝率12.0% 回収率64%
  • 〜12.0% ( 0 0 0 11 ) 勝率0% 回収率0%
  • 〜12.5% ( 0 0 1 6 ) 勝率0% 回収率0%
  • 12.5%〜 ( 0 0 0 2 ) 勝率0% 回収率0%

好走するために課せられる条件はさらに厳しくなってしまう。つまり「斤量比」が11.5%以下であることが要求されるわけだ。



アイビスサマーダッシュはJRAの全てのレースの中でも最も斤量の影響を考慮しなければいけないレースだということになる。
一見すると当たり前のように思えるが、これはなかなか凄いことではないか。
なぜなら新潟直線コースには、もともと「外枠絶対有利」という大前提があるからだ。外枠に入るだけでかなりのアドバンテージを得ることができるため、それ以外の勝負要素*1が結果に対して占める影響度は相対的に小さくなるはずなのである。にも関わらず、「斤量比が軽い馬のほうが圧倒的有利」というもう1つの傾向がこれだけ顕著に存在していた。枠順が多少内側であったとしても「斤量比」さえ軽ければ十分渡り合えるということになる。
ならば「馬の強さ」が占める割合はどれだけ小さくなってしまうのだろう。




去年のアイビスサマーダッシュを振り返ってみると、単勝1.8倍の大本命カルストンライトオが人気を裏切って4着に敗れた。1枠1番の枠順が大きな敗因であったことは間違いないが、59㌔という負担重量も相当厳しかったに違いない。
かつてカルストンがこのレースを2度制覇したときの「斤量比」が11.2〜11.3%だったのに対し、この年の「斤量比」は実に12%にも上っていた。その結果、終始ハナにすら立てないまま馬券圏内から消えてしまったのだ。
一方、去年の出走メンバーで、「斤量比」11%以下を満たした馬が5頭いた。そのうちテイエムチュラサンとウェディングバレーが1着、2着。馬単は116倍の配当がついた。


ちなみにこの「斤量比」が11%以下であるためには、

  • 49㌔→445㌔
  • 50㌔→455㌔
  • 51㌔→464㌔
  • 52㌔→473㌔
  • 53㌔→482㌔
  • 54㌔→491㌔
  • 55㌔→500㌔
  • 56㌔→510㌔
  • 57㌔→519㌔
  • 58㌔→528㌔
  • 59㌔→537㌔
  • 60㌔→545㌔

斤量別に見て、これ以上の馬格が必要ということになる。これを見れば、530㌔の巨漢牝馬ウェディングバレーが新潟直線コースの鬼と化していることも頷けるだろう。

*1:つまり馬の強さ、騎手、ローテーション、血統などなど