ヴィクトリアマイル

過去のヴィクトリアマイルを振り返っていると、やはり去年が印象深い。史上最高の大荒れになったのは56秒台で大逃げして直線耐え抜いたミナレットと江田照男のおかげ。またミナレットを行かせて実質自分が単騎で行ける展開を作れたケイアイエレガントも、人気はなかったけど逃げたらもともと強い馬なので、これがノーマークで逃げて粘るのも分かる気はする。
しかし一番驚かされるのは勝ったストレイトガールの強さ。5番手で追走したこの馬の1000のラップは58.9。直線入り口では前とは大きく差が開いていたのに、そこから33.0の末脚を繰り出して最後はケイアイエレガントを捕らえてしまったのだから恐れ入る。この上がりはメンバー中3位。最後方で溜めていたディアデラマドレやスマートレイアーで32.8や32.9だから、それと同等の極限のキレ味を先行馬として繰り出したことになる。こんな芸当は中距離のペースに慣れた馬には不可能だ。上がりで追い込み2頭に僅かに劣ったのは直線手前でこの2頭が早めに動いたからであって、ラスト1ハロンではむしろストレイトガールの方が伸びていたし余力もあった。
直線ではヌーヴォレコルトやカフェブリリアントら他の馬との差をどんどん広げる一方だった。もし大逃げ2頭がいなかったら後続に4馬身近い差を付けた独走になっていたわけで、展開云々ではなく圧倒的な力の差を見せ付けた強い勝ち方だったと思う。勝ち時計1.31.9はレースレコードタイ。他のレースを見る限りそれほど異常な馬場だったようには見えない。前半もう少し流れていればもっと時計を詰めることも十分出来たはずだった。


一昨年のこのレースでも、せっかくスタートは良かったのにずるずると内に押し込められてしまい、直線を向いた時点では11番手とほぼ絶望的な位置取り。目の前には1番人気のスマートレイアーや前年覇者ホエールキャプチャがいてなかなか伸びあぐねている中で、この馬たちを後ろから交わして上がり2位の33.2の末脚で3着まで追い込んできたわけなので、枠に恵まれたでは片付けられない強さだった。昨年秋にはスローのスプリンターズSで後方から一気に差し切ってGI2勝目を上げた。そこそこのペースで流れてなお極限の上がりを繰り出すことに関してはこのメンバー中で敵はいないと思う。
過去2年に比べると多少枠が外になったけど、ほかにあまり速い馬もいないし、レッツゴードンキが前に行くのを見ながら自然と好位を確保できるはず。騎手も乗り慣れているし、リピーターが強いコースでもある。今年も同等の力を保っていれば最有力候補だろう。


問題は加齢による衰えや調子の低下があるかどうか。前走見せ場なく大敗したことでまた人気を落としているけど、去年も高松宮記念惨敗からヴィクトリアマイルで一変し、セントウルS4着からスプリンターズSで巻き返したように、一叩きして良くなるタイプなので前走は度外視できる。
そもそも藤原英昭厩舎自体、「前哨戦はあくまで敗戦前提の叩き台で、本番に勝負仕上げで臨む」というパターンを、特に年齢を重ねた古馬に対して意識的に行っている厩舎だと思う。エイシンフラッシュやステファノスの天皇賞、デアリングハートのヴィクトリアマイルのように前走大敗から本番で一変するのがお約束。フィエロやトーセンラーもトライアルを勝てないわりにGI本番でパフォーマンスを上げてくるタイプだったし、昔のテンザンセイザあたりも含めて、この厩舎の古馬のGI好走パターンは毎回こう。前哨戦も含めて勝った例がエイジアンウインズ以外にないくらい。前回の負けも、弱気に映るコメントも全部計算尽くなのだ。

  • 66.5-51.9-37.9-11.7 15年高松宮記念13着(1週前)
  • 65.6-49.9-36.9-12.0 15年ヴィクトリアマイル1着
  • 68.7-52.4-37.7-11.8 15年セントウルS4着
  • 66.3-50.6-37.8-12.0 15年スプリンターズS1着
  • 67.4-51.3-37.4-11.7 16年阪神牝馬S9着
  • 64.8-49.9-36.9-12.1 16年ヴィクトリアマイル →?着

栗東CWでの追い切り時計を見比べても、調教で走った時はレースでもしっかり好走している。今回の追い切り時計は去年と何ら遜色ない。これなら能力発揮に何の問題も無さそうだ。前日売りで単勝100万円の大口投票が入って単勝だけ売れてるけど、連勝では実質7番人気で単勝換算16倍相当。このオッズなら文句なし。この馬の2連覇に期待したい。



◎ストレイトガール
○マジックタイム
▲ウキヨノカゼ




あとは東京の馬場をどう見るか。どんな馬場でも力を出せればストレイトガールが一番強いと思ってるので◎は動かないけど、ヒモは大きく変わってくる。
先週までは逃げ・先行に極端に偏っていたので今週もそのつもりだったけど、Bコース替わりの土曜競馬が思いのほか外差しが届いていた。土曜は差しが届いていたのに日曜は先行有利になっていてヴィクトリアマイルでは先行馬が残る、というのが毎年のパターンではあるけど、京王杯SCでのサトノアラジンとサンライズメジャーの上がり32秒4という滅茶苦茶な数字を見せられるとさすがに例年とは違う気がしなくもない。ミッキークイーンやショウナンパンドラは完全に消すつもりだったけど、外の芝が異常に速いのなら出番があるかもしれない。


とりあえず押さえておきたいのはマジックタイムとウキヨノカゼくらい。ここから三連単を手広く流す程度にして、勝負は◎の単勝にしようかな。


マジックタイムは加速に手間取るタイプでなかなか勝ち切れないことも多いけど、長い直線でもしっかり最後まで伸びる末脚を持っていて、最近はその末脚がキレを増して成績が安定してきた。京都牝馬Sではクイーンズリングに負けたけど最後はかなり追い詰めていたし、先行有利の馬場と道中の位置取りを思えばこちらの方がかなり強い内容だったと思う。ダービー卿CTでは内をうまく突いて強豪牡馬を圧倒した。東京マイルは3歳時のクイーン2着もあってこれまで一番実績のあるコース。問題は道中の位置取り。好枠を引いたのでうまく馬群を抜けてこれれば勝ち負けになりそうだけど、スタートがあまり良くないので後ろに置かれるようだと厳しくなる。



ウキヨノカゼもスプリントホースのイメージが定着してきたけど、元々は東京マイルでデビュー戦を勝ち上がり、フェアリーS同タイム2着の後でクイーンCを制したようなマイラーだった。疲れが抜けずクラシックを棒に振って復帰後もしばらくは泣かず飛ばずだったけど、5歳夏の北海道でスプリントの追い込み馬として再び素質が開花した。前走高松宮記念では痛恨の出遅れ。超高速馬場のスピード勝負に全くついていけずに最後方からの競馬を余儀なくされたけど、直線の伸び脚は素晴らしく、ラスト200での脚色を見れば掲示板はあるかもという勢いだった。結局下がってきた馬を捌けず急失速してしまい13着に留まったけど、それでも上がりは最速。単純なキレ味だけなら現役最高レベルに到達している。
スタートがど下手糞で頻繁に出遅れる上に、1200の前半のスピードにもついていけてなかったので、スタミナさえ持つのなら距離延長したここは狙い目だと思う。マイル戦を使っていた頃は無理なく2,3番手で先行して直線も伸びていたし、スタートさえ五分に出れば置かれずにそれなりのポジションを確保できる可能性はある。あとは展開と馬場次第。