Kalessin Action ― The Never Ending Endeavour ―

地震・火山専門の研究開発員のブログ。あららぎハカセ(理学)。つくばで高いところに行くモノ🛰の中身を作ってます。

世界の地熱 日本の地熱 [前編]

随分と間があいてしまいましたが、最近特に地熱発電をめぐる動きが活発になってきました。


マグマ (角川文庫)

マグマ (角川文庫)

原作は非常に丁寧な取材を元に書かれています。ドラマでは3.11以降の世界が舞台となり、思い切った設定変更がされています。


等、ニュースの材料にも事欠かない情勢が続いています。最近では雑誌WEDGE「来るか地熱発電ブーム」という特集が組まれたり日経ビジネス他の経済誌に取り上げられたりするなど、メディアの注目も非常に高くなっています。


最近メディアで地熱発電が取り上げられる際によくアイスランドがモデルケースのような形として出てきます。


確かに、アイスランドは電力供給における地熱の割合が非常に高い国です。ここで詳しい人、もしくはちゃんと調べた人はこんな事を言います。


「別に設備容量をみてみたらアイスランドと日本はたいして変わらないじゃないか。アイスランドが地熱先進国なんて何を言っているんだ。情弱め!


設備容量でそれほど変わらないのは、確かにそうです。が、出来ればもう少し知ってほしいことがあります。今回は世界の地熱発電の設備容量などを中心に地熱の可能性や現状を説明したいと思います。後編で箇条書きでまとめていますので、そこだけつまみ食いして貰っても結構です。地熱の開発状況については
日本と世界の地熱発電の発展
にも詳しく解説されているのでそちらも合わせて読まれるといいと思います。


世界の地熱の移り変わり

原油高の影響を受けて、2000年代後半から日本以外では各国で地熱発電の開発が進んでいます。日本以外では年々発電の設備容量が変わっているのですが、2011年の順位は以下のようになっています。尚商用の発電所のみの合計です。


Country Capacity [MW]
USA 3111.6
Philippines 1967
Indonesia 1189
Mexico 886.6
Italy 863
New Zealand 769.3
Iceland 665
Japan 502

出典 BP Statistical Review of World Energy June 2012 PDF


あくまで設備容量ですので、実際の利用率は70%前後ですが、このあたりは国によって差は余り無いと思います。突出しているのはアメリカとフィリピンです。この2国はもともと地熱発電が多い国でした。最近ではインドネシア国策として特に力を入れており、最近も日本企業との共同開発のニュースが報じられたばかりです。


さて、日本はというと現在世界8位です。ニュージーランドアイスランドの後塵を拝する形になっています。ところがこれだけではないのです。先程のBPの統計から、最近10年の設備容量の変化をグラフにしてみました。



日本だけではありませんが、過去10年新規開発が完全にストップ*1してしまい、結果アイスランドニュージーランドに抜かれたというのがお分かりいただけるかと思います。確かに地熱発電が消費電力に占める割合が高いアイスランドにおいては設備容量もそれなりに多いですが、単純に現在の設備容量の違いだけではなく、開発プロジェクトが複数持ち上がっており、現在も地熱開発に積極的なアイスランドニュージーランドと、現状プロジェクトを推進するのが困難な日本とでは状況が全く違うことを知っていただけると有難いです。現在停滞中の国でもプロジェクトを抱えており、地熱発電上位国では日本以外では5年後には数百MW程度容量が増える国が大半です*2
 尚、アイスランドの地熱の発電量について単純に日本との人口比から電力量を無理やり推定して日本の1/5などとする主張や、日本の地熱の設備容量が世界3位でアイスランド地熱発電量は日本の1/20というのは、値の取り扱いを混同した単純な事実誤認です。設備容量ではなく、資源量について日本が世界3位であるのは事実です。
 アイスランドでは地熱は給湯にも用いられており、その分を考慮した、一次エネルギーに地熱が占める割合は60%以上にも上ります(下グラフ参照)。アイスランドでは地熱開発の場所と居住区が比較的近いという地理的に有利な事情もありますが、温泉だけに限らずに社会が地熱エネルギーを上手く利用できている例ではあるのです。



出典 ENERGY STATISTICS IN ICELAND 2010 (PDF)
アイスランドの一次エネルギーの割合。地熱がかなり占めているのが直感的によくわかると思います。

*1:最後に作られたのは東電の小規模なもの

*2:Bertani R., 2010, Proceedings World Geothermal Congress 2010