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かまくらブックフェスタ ブログ

2015-10-13

第5回かまくらブックフェスタ無事終了しました。


連休の2日間、秋の雨が通り過ぎた瞬間もありましたが、大勢のお客様にいらしていただきました。さまざまな木々や草花たち、庭の脇を通り過ぎる江ノ電の音、古い木の家具の上に置かれた書物たち、人々の話す声とコーヒー香り……。皆様をお迎えする主催者の役割も忘れてしまいそうな、ぜいたくな時間でした。
トークイベントも、それぞれに充実したものとなりました。1日目の「俳句場外乱闘!?」では、長嶋有さんと佐藤文香さんの息のあった掛け合いが、何度も何度も笑いの渦をわきおこしつつ、他では味わえない俳句の楽しさへと誘ってくださいました。終了後のサイン会でもずっと、長嶋さん、佐藤さん、お客様の笑顔が続いていたのが印象的でした。
2日目の「本の美しさとはなにか」は、郡淳一郎さんと平出隆さんの静かな語りから溢れ出てしまう本への思いに包み込まれるような豊かな時間でした。平出さんが14歳、15歳のときにつくった書物の写真、編集者時代の裏話なども出て、客席におられた本のことをよく知る方々、さまざまな立場で本を職業となさっている方々さえもが驚きや感嘆の唸り声を上げる瞬間も何度かありました。
ご来場くださった皆さま、出展してくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。
このブックフェスタで、人の手から人の手へと渡された書物たちが、いつまでも幸福でありますように。

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2015-10-08

トークイベント「本の美しさとはなにか」


第1回目のブックフェスタから続けて出展くださっている「via wwalnuts社」は、詩人平出隆さんの出版プロジェクト。via wwalnuts叢書は、手紙の形で届く「書物」。ブックフェスタ会場で申し込みすると、平出さんのイニシャルサイン入りで、後日手元に届きます。切手や消印、郵便物として運ばれる間の汚れも含めての、美しい書物です。
via wwalnuts社 http://viawwalnuts.jp

そしてまた、第1回目から平出隆さんにはトークイベントの出演をお願いしており、毎年楽しみに来ていただいているお客様もいらっしゃるようです。今年の対談のお相手は、オルタナ編集者の郡淳一郎さんです。
郡淳一郎さんは、雑誌『ユリイカ』や多くの単行本の編集を手がけられてきていらっしゃいますが、特筆すべきお仕事として、雑誌『アイデア』での3回にわたる特集「日本オルタナ出版史」があります。

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「日本オルタナ出版史」は、正確にいうと、敗戦までをとりあげる「日本オルタナ出版史 1923-1945 ほんとうに美しい本」、戦後の「日本オルタナ文学誌 1945-1969 戦後・活字・韻律」「日本オルタナ精神譜 1970-1994 否定形のブックデザイン」の3部作になっていて、合わせて1500点もの書物が写真入りで紹介されています。それぞれ独自の美しさをもつ書物がこれほどの点数集められたということ自体がものすごいことなのですが、それらが、ただカタログ的に羅列されているのではなく、「出版とは何か」「書物の美しさとは何か」という問いかけとして精密に編まれているのです。詳細なデータ、活字や印刷製本にかんする言及、こっそり忍ばせてある数々の編集的仕掛け……ちょっとやそっとでは咀嚼しきれない、壮大で複雑怪奇、そして過激なプロジェクトです。
3部作の最初にあたる「日本オルタナ出版史」の冒頭に置かれた郡さんの文章「オルタナ出版史のためのプログラム」(2012年発表)から引用します。

わたしたちはこれから、1923年9月1日の関東大震災から、1945年8月15日の日本敗戦までにおける「もう一つ」の出版史を見てゆこうとする。22年間のタイムラインの起点と終点、そして2012年現在という三つの夏があり、二つ目の広島長崎の夏は昨年の福島の春とも二重写しになる。前の二つの夏において近代日本出版史は2回、強制終了・再起動されたが、そこには現在の出版産業崩壊にあたってわたしたちが取り得る行動の可能性が網羅されている。
(中略)
制作にあたって、たとえば、次のことを心掛けた。
・しゃべり言葉の延長にあって所詮、コミュニケーションの道具に過ぎない散文でなく、叫び、祈りの末裔としての韻文を尊んだ(小説本を足蹴にし、詩集を大切にした)。
・書物における内容と形態の有機的な結合に注目するよう努めた。人間の心と体が、けして切り離せないように。
書影は、カバー、函、帯などの外装を外して撮影することを基本とした。服飾を剥ぎ取って、一冊一冊のボディ(本体、身体、体躯)が取りうる姿態をつぶさに眺めようとした。
(後略)


たとえば「現在の出版産業崩壊」という一語のなかに、郡さんの問題意識がはっきりと出ています。郡さんの本への愛情、叫び、祈りとして、この言葉を受け取る人も、もちろん大勢いると思います。
3部作の最初に取り上げられているのは宮武外骨、そして、最後が、平出隆さんです。つまり、郡さんは、平出隆さんのお仕事を、無数の人々がつないできた「出版の精神」というバトンを受け取って走り続けている、最後のランナーととらえているようです。

当日の会場では、オルタナ出版史で紹介された書物からの48点、また、平出さんが手がけられた書物の画像を投影します。平出さんのこれまでのお仕事を深く愛しておられる郡さんからの鋭い問いかけによって初めて明らかになる秘密や新しく見出される事実も飛び出しそうです。
また、来場者のかたには、他では入手できない組継本による冊子「仮名手本オルタナ出版史」が配布されます。

トークは11日14時半から(開場は14時)。入場料1000円。会場はブックフェスタ会場から徒歩30秒の由比ヶ浜公会堂です。
残席が残り少なくなっていますので、ご予約はお早めに港の人へご連絡ください。たらば書房、ブックスモブロ、MODERATO ROASTING COFFEEでチケット販売もおこなっています。

2015-10-07

トークイベント「長嶋有×佐藤文香 俳句場外乱闘!?」


ブックフェスタ会期中、両日それぞれのトークイベントをおこないますが、第1日目、10月10日におこなわれる「長嶋有×佐藤文香 俳句場外乱闘!?」について、ご紹介します。
佐藤文香さんは、昨年港の人より第2句集『君に目があり見開かれ』を出してくださった若手俳人。高校生に俳句を教えたり、俳句の雑誌の編集人をつとめたり、俳句講座の講師をしたり活躍中、ど素人にも親切に俳句の楽しさを教えてくださる(でも、本気で俳人になろうとしている人には厳しいらしいです)、おしゃれでかわいい女性です。
そして長嶋有さんは、もちろん芥川賞作家でもありますが、小説家になる前から、ネットや同人誌俳句を書いてきた俳人でもあります。昨年、ふらんす堂より「春のお辞儀」という20年の句作の集大成にしてデビュー句集を刊行されました。何句か引用します。

ポメラニアンすごい不倫の話きく

海にさかなガンジス川に女の子

車はカー馬鹿は馬鹿なり恋は春

英会話ペラペラなので巴里へ行く

としまえん秋という短きものよ


長嶋さんの俳句の世界が垣間見えたでしょうか。俳人の人たちも、おもしろがる、不思議がる、独特な世界。
俳句雑誌「クプラス」第2号では、佐藤さんが聞き手のひとりになって、長嶋さんにインタビューしています。しょっぱなから一同大爆笑の楽しいインタビューですが、そこから、長嶋さんの発言を引用します。

ツイッターで句集(「春のお辞儀」)の感想見てたら、「爆笑」みたいなさ。結局、大ウケ俳人か、褒め言葉が爆笑って…。でもそれはそれで嬉しいわけ。繰り出した言葉が有効に作用したならよかった、と。大きく、俳句って面白いなっていう文化のなかに、自分はいる気がして。俳句だからできる面白さがあるんだ、っていうことの仲間にはなってる。それが、文人俳句みたいに言われるんでも御の字でね。

俳句についての対談というと、想像がつきにくいかもしれませんが、俳句の知識ゼロのかた大歓迎です。俳句で爆笑するという、稀有な体験ができるかもしれませんよ。

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奇しくも同じ黄色い表紙で揃いましたが、長嶋有さんの「春のお辞儀」は表紙が黄色と灰色、ふたつのバージョンがあるそうです。

トークイベント会場は、ブックフェスタ会場から徒歩30秒の由比ヶ浜公会堂です。開場は14時、開演は14時半。入場料は1000円です。おふたりの句集も販売いたします。
ご予約は港の人へご連絡ください。たらば書房、ブックスモブロ、MODERATO ROASTING COFFEEでチケット販売もおこなっています。

長嶋有公式サイト  http://www.n-yu.com
佐藤文香さんブログ「さとうあやかとボク。」  http://satoayakatoboku.blogspot.jp

2015-10-06

出展者ご紹介:MODERATO ROASTING COFFEE


モデラートコーヒーさんは、カフェも併設されているコーヒー焙煎所。港の人の事務所のほど近くにある、港の人御用達のお店です。まちがってもコーヒー通とは言えない私たちに、新鮮な豆のおいしさや、飲み比べてわかる風味の違いなど、コーヒーの楽しみを教えてくれたありがたい存在です。お店はすっきりと清潔で明るく、コーヒーの味もまた、どこか爽やかで、こちらをリラックスさせてくれる穏やかな雰囲気。ブックフェスタの2日間は、お店をお休みにして、会場でコーヒーをふるまってくださることになりました。
会場の庭は秋の風情をたたえています。木々を眺めつつ、本を楽しみつつ、コーヒーでくつろぐ、ゆったりとした時間を過ごしていただければ幸いです。お菓子類も販売予定とのことですので、お楽しみに。

MODERATO ROASTING COFFEE  http://moderato-kamakura.com

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2015-10-05

出展者ご紹介:羽鳥書店


イベント等でご一緒する機会も多い羽鳥書店さん。つい先月にも、表参道山陽堂書店での「本の産直・夏まつり」でお世話になりました。
羽鳥書店さんの創立は2009年。東京大学出版会におられた羽鳥和芳さんを中心に3人でスタートしたそうです。法律関係の専門書をひとつの軸にして、アート文学など幅広い……いえ、幅広いというよりは、ジャンルをまたぐ本、あるいは、新しいジャンルを作り出してしまうような本を出し続けています。
ブックフェスタで羽鳥書店さんのブースを覗くと、強い色づかいのアートブックや、優しい空気で包まれた絵本、シャープな顔つきの文芸書などが、並んでいます。どの本にも、おだやかに読み手を受けとめてくれるような優しさと、「よい本」とは何か、その芯をしっかりと捉えていることから生み出される風格のようなものを感じます。
毎年ブックフェスタに来てくださる営業の糸日谷さんのメールに、「羽鳥書店の本はジャンルもバラバラですが、どれも読むたびにじんわりと新しい魅力が伝わってくるような本という共通点があるような気がします」という一節を見つけたときは、「その通りだと思います!」と、思わず声が出ました。
今回のブックフェスタで販売する本のなかから、おすすめを3冊あげてくださいました。
まずは、羽鳥書店といえばこの本、と思っていらっしゃるかたもいるかもしれませんが、画家・山口晃さんの著書『すゞしろ日記』。羽鳥書店創立時に出した3点のうちのひとつだそうですが、ずっと人気を保っているのですから、すごいです。
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そして、不思議な雰囲気をかもしだしている絵本『パトさん』。「パトさん」の一生を淡々と描いているのですが、あたたかなようでいて、かすかな不穏さもあり、優しさと孤独が一緒に押し寄せてくるような本です。
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もうひとつは『土偶コスモス』。写真が美しく、考古学に詳しくなくても、フォルムの美しさや模様の繊細さ、なんとも言えない表情を見ているだけで時をたつのを忘れてしまうような本です。
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羽鳥書店  http://www.hatorishoten.co.jp