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かまくらブックフェスタ ブログ

2016-10-12

第6回かまくらブックフェスタ、無事終了しました。

ふだんさまざまなイベントでもご一緒させていただいている版元のみなさん、京都大阪、さらには、博多から、大切な本や冊子とともに参加くださったみなさんのご協力を得て、ブックフェスタ、今年も無事に終えることができました。
秋の長雨が続くなかでの開催でしたが、例年に負けないほど多くの来場者をお迎えすることができました。お客さまにはご不自由をおかけしましたが、会場となった「garden & spaceくるくる」では、窓の向こうにしっとり雨にぬれた庭の草木が見えて、いかにも本に似つかわしい風景でした。
毎年この会場で会うのが恒例となっている方々、初めて訪れてくださった方々、会場のあちらこちらで楽しげな本談義が続いているのを見ると、今年も開催できたことの喜びがわいてきます。
1日目のトークイベントは、西日本新聞社出版部の末崎光裕さんと忘羊社の藤村興晴さんの対談。出版流通の現場の声、版元の抱える悩みなどを率直に話してくださいました。とは言っても、決して暗く深刻ぶった雰囲気にならないのは、おふたりの持ち味。九州で始まった、新しい出版流通のシステムを作る試みを、ずっと応援していきたいと思います。そして、本は、たんなる商品ではなく、人と人を結びつけ、人の心や社会のあり方も変えていくような可能性を秘めた存在であり、そのことを決して軽んじてはならないと改めて思いました。
2日目は、平出隆さん、郡淳一郎さん、扉野良人さんの鼎談。お三方とも、口調は静かでしたが、ひと言ひと言を、これ以上ないくらい大切に語ってくださいました。冒頭で平出さんは、via wwalnutsを立ち上げたとき、手紙のような本という造本を実現するために費やした時間を「命がけの設計だった」と表現なさっていました。ふだん穏やかな平出さんが口にされたこの言葉の激しさと重さを、改めて思います。書物とは、それほど真剣に向き合うべきものなのだと、ご自身の人生をかけて教えてくださっているように思いました。会場の席に回された、お三方の蔵書を手にとっておられる聴衆の皆さんの、書物を慈しむような横顔も強く印象に残っています。

ご来場いただいた皆さま、ほんとうにありがとうございました。


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1日目トークイベント「本屋がなくなったら、困るじゃないか」

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2日目トークイベント前、打ち合わせ中の平出隆さんと扉野良人さん

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2016-10-06

出展社のご紹介:ブックスモブロ、MODERATO ROASTING COFFEE、港の人

明後日にせまった「かまくらブックフェスタ」、地元鎌倉からの参加メンバーをご紹介します。

まずはブックスモブロ。ふだんからお世話になっている、古書店です。先月、5周年を迎えたとのことですが、毎年初夏に鎌倉で催される「ブックカーニバル」を中心になって盛り上げてくださっています。古書のほか、新刊本、各地のミニコミ誌などもていねいにセレクトされていて、心地の良いお店です。
ことしは、デザイン書、写真集、リトルプレスや絵本など幅広いジャンルの古書を持ってきてくださるとのこと。芹沢けい介全集やクロッキー全集などもサンプルを持ってきてくださるそう(購入は全巻揃いのみ、とのことでちょっと勇気がいりますが)。また、今月末から、モブロ店内で開催予定の「蔵書票展」にあわせて、蔵書票の作品集もあるとのことですので、これも楽しみです。
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そして、モデラート・ロースティング・コーヒーは、港の人の事務所近くにあって愛用させていただいているコーヒー焙煎店。
会場でコーヒーを淹れ、カレーライスパン販売してくださる予定です。ご来場の皆さんには、くつろいでいただきながら、ゆっくり本を選んでいただければと思っています。

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そして、港の人は、新刊を皆さんにぜひ見ていただきたいと思っています。空中線書局の間美奈子さんに装幀をしていただいた、鎌倉在住の文芸批評家、新保祐司さんの若き日の著作の復刊『鬼火』、好評いただいている斉藤斎藤さんの『渡辺のわたし 新装版』角川春樹の最新句集、真っ黒なクロス装に芙蓉の花の模様を押した中上健次への挽歌『健次はまだか』、そして、四月と十月文庫の最新刊、ライター遠藤哲夫さん『理解フノー』など、いろんな顔をした本たちですが、どれも大切な港の人の子どもたちです。どうぞよろしくお願いします。

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2016-10-05

トークイベント「著者自身による造本」、そして「生存のための造本」

9日には、平出隆さん、編集者の郡淳一郎さん、文筆家の扉野良人さんによるトークイベントがおこなわれます。平出隆さんが毎年トークをおこなってくださることは、多くのお客さまに喜んでいただくという目的をこえて、かまくらブックフェスタというイベント、そして主催する私たちを支えてくれる、大きな柱になっています。
昨年は、郡さんと「本の美しさとはなにか」と題した対談でした。郡さんが編み、『アイデア』誌で発表された「オルタナ出版史」3部作は、普通の「出版史」では無視されているアウトサイダーも含めて、数多くの出版物や出版人をていねいに紹介していますが、そのトップに取り上げられているのが「宮武外骨」であり、最後におかれているのが「平出隆」です。このことには、郡さんの深い意図がこめられています。
宮武外骨は、オルタナ出版史では、「自由民権運動の反骨精神と、著者・編集者・出版者が分離する以前の「操觚者」の気概を生涯貫いた」と説明されています。では、平出隆は?と第3部のページをめくってみれば、そこには平出さんのこんな文章が、大きな字で引用されています。

詩は、しかし、どんな意味でも時代のあたらしさの表現ではない。それは現実の反映であるよりも、そこへの反撥であり、拒否であり、貫通である。



昨年に引き続き郡さんと対話したい、とは、平出さんのご希望でした。そこに、郡さんに負けないくらい、詩書はじめさまざまな書物への深い知識と鋭い感受性をお持ちの扉野さんに加わっていただくことが決まり、その後、このテーマにかんする討議が重ねられています。
平出さんの手がけた造本がどのようなものなのか、書物の奥に分け入ってその秘密を見極めたい、他の似た例も見ながら考えていきたいというのが、最初の衝動でしたが、ブックフェスタ開催が近づいた今、出演の3人の間では「生存のための造本」というキーワードが共有されています。
生存のための造本とは、どういう意味なのか。そのヒントは、上の平出さんの文章にある「反撥」「拒否」「貫通」という言葉にありそうです。僧侶でもある扉野さんは、書物を通した宗教と民衆との関わりという視点も、提示してくださることと思います。

そして、今回、郡さん、扉野さんが、貴重な蔵書のなかから、このテーマにかかわる本を持参していただくことになっています。
郡さんは、寿岳文章1936年刊、50部限定の私家本『書物』や、1952年刊の高橋正敏『紙と製本』(これは著者自身によるガリ版書物だそうです)など、扉野さんは、ご自身のお寺、徳正寺の門外不出本、親鸞『三帖和讃』写本や、建築家白井晟一装釘の神西清訳『チェーホフ戯曲集』などをお持ちいただく予定です。
平出さんも、第一詩集旅籠屋』、そしてvia wwalnutsの『雷滴』特装本など持参くださいます。
書物は手に取って向き合うもの、という3人のお考えから、計15冊の書物を、会場の皆様ご自身の手と目で直接確かめていただく場にしたいと考えています。
今回のトークは、五官で書物を感受する、ほんとうに貴重な機会となることと思います。とは言っても、書物マニアのための趣味の時間には、決してならないでしょう。「生存のための造本」は、「書物」への問いであり、同時に「生存」、つまり、生きること、生きのびていくこと、への問いでもあるのだと思います。
ご来場をお待ちしております。

平出隆さんは、もちろん、「via wwalnuts社」としてもご参加くださいます。
扉野良人さんも「りいぶる・とふん」として会場で販売くださいます。10月15日に京都で催されるポエトリー・リーディングにあわせて新しく制作した詩の冊子『百年のわたくし』を、本番に先駆けて、ブックフェスタで販売してくださるほか、扉野さんが同人でもある『四月と十月』の最新号、バックナンバー、もちろん「りいぶる・とふん」のこれまでの刊行物も並べてくださいます。

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2016-10-04

出展者ご紹介:編集工房ノア+ぽかん編集室

毎年大阪から、味わい深い本や冊子を運んできてくださる「編集工房ノア+ぽかん編集室」。毎年、ブックフェスタ会場では、『ぽかん』を編集・発行しておられる真治さんが、ご自身の作った本はもちろん、ふだんから社主の涸沢さんと親しくされているという編集工房ノアの本も、にこやかに、そして深い思いをこめて販売しておられます。
また、毎年ブックフェスタに合わせて新しい冊子を作ってきてくださるのも、主催者にとっては嬉しく、ありがたいこと。「ことしはフランス装に挑戦しました」と事前に聞いてはいましたが、送ってくださった写真を拝見して、実物を手にとるのがとても楽しみになりました。
下手な前置きはこれくらいにして、真治さんからのメッセージと写真をお届けします。

ぽかん編集室は、かまくらブックフェスタにDIY的精神にあふれた別冊を用意していますが、今回も鋭意準備中です。
夏休みの絵日記、ならぬ夏休みの写真日記を作成しました。その名も『と、おもった日記』。
『ぽかん』本誌には、無名の書き手に加えて、山田稔、岩阪恵子、小沢信男など、文学好きなら、「お!」と驚くような方に書いていただいています。これまで作った別冊にも、1名はある程度名の知れた執筆者を混ぜていました。今回の別冊『と、おもった日記』は、無名の書き手で構成しました。5名が12日分、日記を書き、写真を添えました。それぞれが、旅をしたり、仕事をしたり、かき氷を食べたり、ビールを飲んだり、映画を見たり、本を読んだり。
しかし、果たして、どこの誰だかわかんない人の日記を読みたいひとなんているのかなとおもったりもしましたが、出来上がったのを読むと結構おもしろかったりします。
いろんな街に住むつながりのないひとたちの暮らしが1冊の冊子のなかでひとつの記憶になるような、不思議な感覚です。
そして、今回、造本はフランス装に挑戦しました。不器用なので苦しい作業が続きました。友人の営む雑貨店にフランス語で書かれた手紙がたくさん売られていて、それを表紙に使いました。なんて書いているのかわからないのですが、ラブレターであってほしいなとおもいつつ。

編集工房ノアの本は、山田稔天野忠の本はもちろん持っていきますが、今回のおすすめは北村順子『晩夏に』です。
今年のみすずの読書アンケート号で、山田稔さんも挙げていた1冊です。北村さんの文章は風通しがよく、心にしみこんできます。
この、すばらしい短編集を多くの方が読んでくださいますように。


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2016-10-03

トークイベント「本屋がなくなったら、困るじゃないか 鎌倉ぐびぐび会議」

今年もブックフェスタ開催の両日、トークイベントをおこないます。毎年、さまざまなかたに登場いただき、さまざまなテーマでお届けしていますが、今年は初めて、本の流通を取りあげます。
港の人も、版元として日々、書店や取次の皆さんのお世話になっていますが、流通とか業界のシステム全体にたいしては、すっきりしないモヤモヤした気持ちは膨らむ一方。街の本屋さんの苦闘ぶりを目の当たりにして、さらにモヤモヤ。そのモヤモヤにちゃんと向き合えていない自分自身を省みて、もっとモヤモヤ。お恥ずかしいことに、モヤモヤ放置の現状です。
そんななか、九州でこの現状をなんとかしようという独自の動きがあることを知り、そのことを鎌倉で詳しく教えてほしいと、ほとんど衝動的にお願いしました。この厚かましい申し出に快くこたえてくださり、西日本新聞社出版部の末崎光裕さんと忘羊社藤村興晴さんが登場してくださることになりました。
おふたりは、規模でも歴史でもブックフェスタの大先輩「ブックオカ」の立ち上げから関わっておられ、昨年ブックオカでおこなわれた「車座トーク」の進行役でもあります。
この車座トークについては、とにもかくにも『本屋がなくなったら、困るじゃないか 11時間ぐびぐび会議』西日本新聞社刊)を読んでいただきたいです。ブックフェスタ当日は、昨年の車座トーク後のこと、本には載っていないさまざまなことを、お話しいただけるはず。

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『本屋がなくなったら、困るじゃないか 11時間ぐびぐび会議』の前書きにこうあります。

この座談会を開催するに当たり、メンバーの間で一つだけ取り決めたことがある。それは、業界のグチや批判に終始するのではなく、あくまで「未来」のためにこの場を持つのだということだ。それだけは肝に銘じとかんといかんばい、と。

この精神は、かまくらブックフェスタでも、しっかり守りたいと思います。
本の流通の話、というと業界話のように聞こえるかもしれませんが、誰もが通う本屋さんの話であり、誰もが手にする、「この本」の話でもあります。末崎さん、藤村さんのおふたりは、自分たちが話すだけではなく、会場の皆さんの話も聞きたいと、はりきっておられます。舌の回りがよくなる魔法のお薬も、九州からもってきてくださるとか……。書店員や取次、版元のかたはもちろん、本の好きな皆さんに来ていただいて、本の「未来」のための時間をご一緒できたらと思います。
おふたりは、鎌倉の前日7日にも文禄堂高円寺店トークをおこないます。高円寺鎌倉、続けてのご参加をぜひ!
西日本新聞社、忘羊社は、会場で本の販売もおこないます。
西日本新聞社は、港の人で「四月と十月文庫」を出してくださっている画家の牧野伊三夫さんが手掛けている「雲のうえ」の合本『雲のうえ 一号から五号』を出しておられますし、話題の『戦争とおはぎとグリンピース』『カンカンバッチ』も持ってきてくださることでしょう。
忘羊社も、『ボクシングと大東亜』、新刊の『絵描きと画材屋』はじめ、話題作を持ってきてくださることと思います。
博多からの風が鎌倉で吹き荒れるのを、ぜひ目撃ください。