出展者ご紹介:ECRIT(エクリ)

ブックフェスタには第2回から参加していただいているエクリ。今年は、大判の『ロベール・クートラス作品集』を携えて、鎌倉に来てくださいます。この作品集が誕生するまでのことや、遡ってクートラスとの出会いについてなど、すてきな文章を書いてくださいましたので、ご紹介いたします。

今年3月に刊行した『ロベール・クートラス作品集 ある画家の仕事』は上下巻合わせて600頁、掲載作品数約1,500点の大著。重量3.8キロ、定価3万円(税抜)ですから、買上・お持ち帰りと即決しにくいのは確かですが、今回のブックフェスタの機会にゆっくりとお手に取ってご覧いただきたいです。
エクリは主宰の須山と家人が編集と営業、デザイン事務所を開いている次男が造本を担当する家内工業ですが、『ロベール・クートラス作品集 ある画家の仕事』の制作にあたっては、次男がカメラマンとのフランスでの撮影から頁構成、刷りだしまで一貫して携わり、つくりあげました。たくさんの方々の思い、助けに後押しされて刊行にいたったクートラスの世界にお入りください。

エクリの三人が銀座のギャラリーで、はじめてクートラスの作品を目にしたのが2009年。三人ともひと目惚れし、翌2010年、手札サイズのカルト作品を原寸大で70点収めた『僕の夜』を上梓しました。画家の名は日本ではまだほとんど知られていませんでしたが、徐々に版を重ねていきます。
2012年から13年にかけて、フランスのシャルトルで、クートラスの回顧展が開催された際、画家の膨大な仕事に触れることができました。このとき見たグァッシュにとりわけ惹かれ、グァッシュ作品63点掲載の大判作品集『僕のご先祖さま』(SOLD OUT)を昨2015年に出版しています。この2015年に東京の松濤美術館において、日本で初めてのクートラスの大規模な展覧会が開催され、多くの方々が作品の存在を知るようになりました。
本年は静岡県三島のベルナール・ビュフェ美術館で3月から9月初旬まで、油彩を含むさらに多くの作品が展示されました。ほぼ同時代を生きたビュフェは時代の寵児として輝かしい画家人生を送りましたが、一方貧困不遇にあって、画材もままならない中で拾い集めたボール紙やポスターの裏等に描き続けられたクートラスの作品群を併せ見ることができたのは、またとない時間でした。
クートラス展は12月からは京都の大山崎美術館への巡回が決まっています。
そしてもう一冊のクートラス。『ロベール・クートラスの屋根裏展覧会』は、作品集に収められなかった、コルク栓や缶などを使った、ちょっとユーモラスな手遊びの小品を集めています。

ブックフェスタの直前に出来上がる予定の『栃の木と』は文庫本1頁足らずの文章と宇野亜喜良さんの挿画1点からなり、クートラス作品集とは正反対のつくりになります。柳田国男の「遠野物語拾遺」の中で語られた随一の悲しい恋の話です。この話への想いも5年越しになります。