平出隆 展示と講演

かまくらブックフェスタは今年で7回目となりますが、2011年、港の人がおずおずと第1回目をスタートさせたときから、詩人の平出隆さんトークをお願いしています。初回のトークでは、その前年、2010年に創刊された《via wwalnuts叢書》についてお話を伺いました。郵便と書物という取り合わせの興味深さ、封筒・切手・消印とともにある書物の美しさにも惹かれましたが、それ以前に、そのプロジェクトにこめられた、本をつくる、本を刊行するということそのものへの問いかけは、出版社として切実な問題でもありました。
第3回から前回までは、トークのお相手を迎えながら、さまざまな角度から本についての対談、鼎談が繰り広げられましたが、今回は、改めて平出さんご自身にじっくりと語っていただく時間を持ちたいと思います。《via wwalnuts叢書》の7年間、並行しておこなわれてきた《crystal cage叢書》《BOOK ARCHIT》の試みなどについて、成果とこれからの展開についてお話ししていただきます。
また、トークと同じ会場で、《private print postcardシリーズ》の展示をおこないます。昨年秋、トロントでおこなわれた«AIRPOST POETRY» 展後の、新しい「葉書」の写真展となります。
展示と講演合わせて、平出隆さんの最新の書物論を体験してください。

どちらも10月8日(日曜)のみの開催。場所は、ブックフェスタ会場より徒歩1分にある「由比ガ浜公会堂」です。

講演 空中の本へ
14時半〜16時(14時開場)
入場料1000円
定員50名(要予約)

展示 葉書の箱/叢書の箱 TH_AIRPOST 2017
11時〜13時半・16時〜17時
入場無料

ブックスモブロ

かまくらブックフェスタ、地元から人気の古書店ブックスモブロが参加です。コンパクトで居心地のいい店内に、ジャンルさまざまな古書、リトルプレスやグッズたちが、これまた居心地よさそうに並んでいる魅力的なお店。毎年初夏の「ブックカーニバル in カマクラ」では中心となって運営している、地元の本好きにとって頼もしい存在でもあります。
当日は、ブックフェスタ会場とモブロの店舗とハシゴでどうぞ!

今年で3回目の出店となります。
鎌倉は大町で古書店を営んでいるブックスモブロと申します。
毎年楽しみな「かまくらブックフェスタ」。
本を作る出版社が直接手売りする機会って本当に少ない貴重なイベントです。
そんな中、文学から絵本まで多種な古本を持っていきますので、
ちょっとした箸休め気分でご覧になってください。
開催中はお店も営業してますので、併せて遊びにいらしてください。

出展者ご紹介:羽鳥書店

「さりげなく参加」なんて、とんでもない。羽鳥書店の存在は、毎年このブックフェスタを支えてくださってます。
今年は「はとり文庫」の久しぶりの新刊を持ってきてくださるそうです。

毎年さりげなく参加させてもらっています、羽鳥書店です。2009年の創業以来、現在68点を刊行していますが、当社の「はとり文庫」というシリーズをご存知でしょうか? 最初に製作したのは、2011年、高知在住のデザイナー梅原真さんと、グラフィックデザイナー原研哉さんの対談を収録した『梅原デザインはまっすぐだ!』(はとり文庫001)でした。同時期に出した第2弾は、いまや人気の画家・池田学さんと、日本画家・三瀬夏之介さんの、これまた対談本『現代アートの行方』(002)でした。

この文庫シリーズは、いわゆる「文庫」とは違い、書店の文庫棚には並びません。「文庫サイズ」というだけです。基本的に同じフォーマットで表紙の絵柄と色が内容にそくして変化します(デザインは原研哉さん)。コンセプトとしては、羽鳥書店の単行本から付随的に生まれ出た「副読本」と位置づけて、その親本となる単行本と一緒に棚に並べてもらうことを想定しています。

ですので、001の親本には梅原真『ニッポンの風景をつくりなおせ── 一次産業×デザイン=風景』があり、002には、池田学『池田学画集1』と三瀬夏之介『冬の夏』があるのです。いずれも、親本の刊行記念でおこなったトークイベントが元になりました。当社のような小さな版元はPR誌などのメディアを持たないので、それにかわる小さな出版物をつくりたいとの思いでした。

しかし、ひとつかたちを得ると、不思議とそこからいろいろな展開がはじまるものです。第3弾となったのは、学魔・高山宏先生の『夢十夜を十夜で』(003)でした。こちらも『新人文感覚』全2巻(総頁1912)の副読本として誕生したのですが、大部2冊刊行の間に文庫1冊どうでしょうか?という編集者の無茶ぶりに、高山先生が画期的な漱石論となる書下ろし300枚で応えてくださり、本の厚さも一気に倍増しました。

さらに、第4弾となった小野智美編『女川一中生の句 あの日から』(004)は、副読本ではなく、単独の本として刊行した書籍です。本書は、東日本大震災で甚大な被害にあった宮城県女川町の中学生たちが、震災後まもなく国語の授業でよんだ俳句を、朝日新聞記者の編者が丹念にその背景をききとり、まとめたものです。俳句ということからも、決してボリュームのあるものではないため、「文庫」のサイズがとてもふさわしく感じられました。おかげさまでロングセラーとなっています。

あれからしばらくはとり文庫は出ていなかったのですが、今年の夏に久しぶりに第5弾を刊行しました。工藤庸子さんと蓮實重彦さんの対談集『〈淫靡さ〉について』(005)です。こちらは、親本にあたる工藤庸子編『論集 蓮實重彦』のトークイベント収録という点ではコンセプト通りなのですが、対談は2本立てで、しかも工藤さん渾身の書下ろし「『伯爵夫人』論」70枚に、「はじめに」「おわりに」に代えたお二人の充実した文章が入り、このサイズながら、なんとも贅沢な内容となりました。

今回のブックフェスタでは、これらの文庫本と単行本を親子でご覧いただけるように用意します。また、池田&三瀬、工藤&蓮實の贅沢なサイン本も含め、美術書の各種サイン本もみつくろいますので、どうぞこの機会を逃さずお買い求めください。

出展者ご紹介:編集工房ノア+ぽかん編集室

毎年大阪から鎌倉へ、たくさんの良質な本を届けてくださる「編集工房ノア+ぽかん編集室」。
販売を担当するのは「ぽかん編集室」ですが、編集工房ノアの本についてもとても詳しいので、ノアのファンのかたも毎年多く訪れ、会場でノア談義が繰り広げられています。社主、涸沢さんの著書が出た今年は、記念のぽかん別冊も刊行とのこと。関東で編集工房ノアに触れられる貴重な機会をお見逃しなく。
『ぽかん』の最新号、第6号も、ブックフェスタで初お目見えのはず。山田稔、外村彰、岩阪恵子、内堀弘各氏らの書き下ろしの文章が収められています。そして、編集後記までもが味わい深いのです。

2017年9月に編集工房ノア社主、涸沢純平さんの著書『遅れ時計の詩人』が出版されました。港野喜代子、黒瀬勝巳、清水正一、足立巻一天野忠桑島玄二などとの交流や別れが書かれています。涸沢さんは自分で自分の本を出すことにためらいや恥ずかしさがあったかもしれませんが、一読者としては、黒瀬勝巳や清水正一など、すきな詩人についての文章を読めたことを単純に嬉しくおもいます。そして、港野喜代子や天野忠を知らない読者がこの本を読んで、興味を持ち彼らの作品にたどり着いていくのではないかなともおもいます。ためらい、などふっ飛ばすほどの、死者を立たせる一冊と言えるでしょう。
ことしのかまくらブックフェスタには、『遅れ時計の詩人』を持っていきます。未読の方はぜひこの機会にお手にとっていただければとおもいます。(もちろん、登場する作家の本もあわせてどうぞ)

ぽかん編集室は『遅れ時計の詩人』出版記念として、ぽかん別冊『淀川左岸』を作成しました。『遅れ時計〜』が出版されてからおおよそ2週間程度で、えいやとつくりました。

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ノアの時計 山田稔
編集工房ノアのこと 佐久間文子
話すこと、話さないこと 樋口 塊
働く人の詩 真治彩
涸沢さんのグリンプス 扉野良人
ノアの本  畠中理恵子
同じ建物 伊東 琴子
背なかまるめて ひとり死んでゆくのだし  服部 滋
私なりのノア 能邨陽子

関西の人々のつながりが本を生みだす
編集工房ノア探訪記 坪内祐三

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また、ことしの4月に恵文社で開催した「ぽかんのつどい」にあわせて作成したミニブック「ぽかん読者にすすめる5冊」もわずかですが持参します。あと、特別に岩阪恵子さんがご自身で作成されている小冊子『山鳩』の1号と2号を少部数ですが、販売します。興味がある方はぜひどうぞ。
みなさんが楽しみにされている古本販売も継続します。

ことしも、かまくらで会いましょう!

出展者ご紹介:タバブックス

今年初めて参加の出版社を続けてご紹介します。
一昨年の『はたらかないで、たらふく食べたい』、昨年の『かなわない』でヒットを飛ばしつつ、雑誌『仕事文脈』もコンスタントに出し続けて、ぐんぐんと知名度を上げているタバブックス。社会の枠組みからちょっとはずれながら、いきいきと生きる人たちを取りあげていて、世の中を見る目が変わってきそうな本を次々と出しておられます。どの本も、楽しそうな顔をしているのがいいですよね!

かまくらブックフェスタ初参加のタバブックスです。2012年のスタート以来21点を刊行、ほぼ全点を販売します。
今年は攻めてる本が続いてます。街の表現者たちの生き様を追った櫛野展正『アウトサイドで生きている』、資本主義が得意じゃない人に向けた生き方指南書、山下陽光『バイトやめる学校』、非正規雇用、無職を渡り歩いた切実な日々の記録、丹野未雪『あたらしい無職』など。人気の植本一子『かなわない』、栗原康『はたらかないで、たらふく食べたい』、すべてのゆかいな仕事人にささげる雑誌『仕事文脈』などなど、ちょっと気になる本を揃えてお待ちしています!

出展者ご紹介:共和国

2014年「樹立」、モットーは「書物で世界をロマン化します」。たったひとりで営んでおられるというのに、既刊本はすでに29点という「共和国」が、鎌倉まで来てくださることになりました。昨年刊行の『燃えるキリン』には、港の人もおおいに刺激を受けました。そして、最新刊は高橋新吉とくれば、自然と背筋がのびます。
共和国の本と、自称「代表兼奴隷」という下平尾直さんに、ぜひ会いに来てください。

今回はじめて参加させていただく共和国という出版社です。ひとりで営んでいるのに「共和国」、株式会社なのに「共和国」、ライバルは「ひかりのくに」と「札幌ら〜めん共和国」です。こちらはもうこんな日本なんか早く脱出したいのですが、なかなかそうもいかないので、本のなかの世界を生きていくことにしました。
最新刊は、「日本最初のダダイスト」である高橋新吉のアンソロジーダダイストの睡眠』です。狂気と正気のあわいを切り裂く稀有な表現をご堪能ください。この本を含むシリーズ《境界の文学》や、平出隆さんも編集者時代にご縁のあった戦後の革命詩人の唯一のアンソロジー『燃えるキリン 黒田喜夫詩文撰』をはじめとする内外の小説・詩書のほか、食をめぐる明晰な考察で小社の本のなかでも大人気の藤原辰史さんの『ナチスのキッチン』『食べること考えること』など、この秋のおすすめタイトルを厳選してお持ちします。ぜひぜひ手にとってご覧ください。購入者特典も考え中です。

出展者ご紹介:映画酒場編集室とその仲間たち

映画好きもお酒好きも、両方好きな人も、世の中にはたくさんいるはず。でも、このふたつが合わさった雑誌となれば、個性のかたまり。そんな『映画横丁』が、仲間たちを引き連れて初参加です。個性的な切り口、豪華な執筆者、ユニークなデザインワーク、とどこをとっても唯一無二なリトルプレスたち、入手困難なバックナンバーも持ってきてくださるそうです。お楽しみに!

《映画酒場編集室》は、エディター&ライターの月永理絵が映画と酒の小雑誌『映画横丁』の編集をしている小さな編集室です。かまくらブックフェスタでは、《映画酒場編集室》で編集・発行をしている冊子のほか、「仲間たち」によるリトルプレスや新聞も販売します。

1、
『映画横丁』(現在、1号〜4号)お酒と映画をテーマにした小雑誌。毎号、ウイスキー、ワイン、ビール、日本酒など様々なお酒をテーマに映画を紹介しています。1号は現在在庫僅少ですが、かまくらブックフェスタでは10部ほど販売予定です。
『映画酒場』(現在、創刊準備号〜2号)月永個人がつくっている小冊子。酒場での会話のように映画を自由に語りたいという思いからつくった冊子で、特に酒の話は出てきません。

2、
『Kinebus(キネバス)』(現在、1号〜8号)タダジュン、たんじあきこ、さかたきよこ、吉田晃、4人のイラストレーターが毎号1つのテーマを決めて、大好きな映画を思い思いに描く映画の新聞。B4サイズ、両面カラー、季刊。映画への個人的な思いや記憶が綴られた文章も読んでいて本当に楽しいのですが、何よりみなさんの絵が本当にすてきなので、読み終わったら額に入れて絵として飾るのもおすすめです。

3、
『大人ごはん』(現在、創刊号、第2号)『映画横丁』と同じ発行元から出版されている食をテーマにした小雑誌。編集長の室谷さんの「食」への熱い思いが伝わってくる楽しい雑誌です。2号は、女優の岸井ゆきのさんほか、橙書店の田尻久子さんのインタヴュー、高山なおみさんらによる料理座談会「武田百合子さんの料理をつくる」」など、本好きにもたまらない内容です。

4、
『漫想新聞』(現在、1号〜6号)およそ年一回、マスダユキと内田るん(本誌デザインは三浦裕一朗)が発行している漫想新聞。「トークセッション:未婚裁判」や「座談会:共学、女子校、どっちが幸せか」など、毎回他にはない個性的なテーマで発行されるおもしろい新聞です。3号には、かまくらブックフェスタの出展者でもある共和国の下平尾さんのインタヴューも掲載されています。