Kameno external storage

由無し事をたまに綴るブログです。

撮像素子が狭いなら、モザイク合成すればいいじゃない

天体写真に限った話です。一般向けの内容ではありません。撮像素子単位面積あたりの値段で比べると、APS-Cサイズが最もコストパフォーマンスに優れているので、高価なフルサイズデジタルカメラを買うよりAPS-Cサイズでモザイク合成すればよい、というお話です。



APS-Cカメラ, 46フレームをモザイク合成した天の川。各フレームは画角26º×19º, f=50 mm, F=1.4→2.8, 30秒x3枚コンポジット。より高解像度の写真 (6.8 MB) はこちら
デジタルカメラの高感度化により、天体写真撮影はフィルムカメラに比べてずいぶん易しくなりました。フィルムでは数十分以上もかけて撮影していたような写真が、デジタルカメラなら数十秒の露光時間で撮れます。露光時間が短いということは、赤道儀による追尾の誤差も小さく、焦点距離が短ければ追尾すら不要になるということです。天体写真マニアでなくても、天の川や星座の写真なら撮れると思います。

フィルムに比べてデジタルカメラの弱みは、撮像素子のサイズです。一般的な写真フィルムのサイズは24 mm × 36 mm (135フィルムとか35mm判と呼ばれます)です。これと同じサイズの撮像素子を持つデジタルカメラは「フルサイズデジタルカメラ」と呼ばれ、プロカメラマンやマニアが使う高級機種に分類されます。撮像素子が大きいということは、同じ焦点距離のレンズなら画角が広くとれ、画角を同じにするなら長い焦点距離のレンズを使えるということになりますので、画質の高い写真を撮れます。

APS-Cサイズ(16.7 mm × 23.4 mm)の撮像素子はフルサイズに比べると約半分の面積です。従って同じ焦点距離なら画角はフルサイズの約2/3と狭く、同じ画角を得るための焦点距離も約2/3になりますから、単純に画質で考えるとフルサイズに劣ります。しかしコストパフォーマンスを考えると、APS-Cサイズの利点が現れます。

下記の表は、撮像素子面積当りの単価を見積りです。価格として価格.com に載っている、フルサイズカメラ27機種, APS-Cカメラ50機種, フォーサーズカメラ30機種の最安値(全てレンズ無し, ボディのみ, 2015年8月9日調査)を使いました。価格の代表値として平均値でなく中央値を用いたのは、極端に高価な機種に影響されないようにするためです。撮像素子が大きいほど高価になるのは当然として、面積当りの単価で見るとAPS-Cが最もコストパフォーマンスが良いことが分ります。

フォーマット サイズ 面積 最安値 最高値 中央値 面積当り単価 [円/mm^2]
フルサイズ 24 mm × 36 mm 864 mm^2 ¥111000 ¥1077000 ¥268000 310.2
APS-C 16.7 mm × 23.4 mm 391 mm^2 ¥28300 ¥335700 ¥68180 174.5
フォーサーズ 13.0 mm × 17.3 mm 225 mm^2 ¥27740 ¥241000 ¥55830 248.2

従って、APS-Cカメラ2台を使ってフルサイズカメラと同じ画角をカバーできれば、値段は約半分で済むということになります。実際にこれを行なうにはレンズも2つ必要になりますが、フルサイズをカバーするレンズはAPS-Cのレンズより高価ですから、やはりAPS-Cカメラ2台の方がコストパフォーマンスに優れています。

一般のスナップショットではAPS-Cのカメラ2台で画角をカバーするなんて操作は現実的ではないでしょう。しかし対象が静的な天体写真なら難しくありません。カメラが1台だけでも、時分割で複数の写野を撮影してからモザイク合成してもいいです。恒星の点像が参照位置として使える天体写真はモザイク合成も比較的容易で、Photoshopのphotomerge機能やステライメージなどモザイク合成できるソフトウェアは多々あります。

私は今のところ、天体写真撮影用に1台のAPS-Cカメラ (Fujifilm X-M1)しか持っていないので、モザイク合成を行なうには時分割で写野を重ねて行く必要があります。今や製造中止になったX-M1は、中古品が2万円台というお値打ち価格で取引されているので、時間効率を高めるためにカメラの買い増しを検討しています。