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2018-07-11 不倫マンガあと5つ紹介

不倫マンガあと5つ紹介


 「週刊プレイボーイ」(2018年6月18日号)で「不倫マンガ」を紹介したことは、Twitterでお知らせしたけど、そのときに他に5つほど作品を紹介したんだが、のらなかった。つうか、他の人とカブった(そして編集部の「不倫」の定義にも合わないものがあった)。

 そこであと5つほど不倫マンガをぼく流で紹介しておきたい。



 不倫マンガの楽しみ方はおおざっぱにいえば、ふた通り。

 一つ目は、「やったらダメ」っていうタブーを乗り越えて、それでもしちゃうという背徳感いっぱいのエロさを味わえる。同じタブーでも、近親相姦タブーとかよりはずっと身近でずっとリアル。黙っとけばわからないし。そのシチュエーションのリアルなエロさを楽しむ。

 二つ目は、それはあくまで妄想であって、実際にやっちゃったら、そしてバレちゃったら、夫婦が壊れ、家族が壊れ、人生が壊れたりするから、そういうホラーとして楽しむ。


こやまゆかり・草壁エリザ『ホリデイラブ 〜夫婦間恋愛』

ホリデイラブ 〜夫婦間恋愛〜 (1) いまあげた二つ目の方、「不倫の怖さ」の代表格は、こやまゆかり原作・草壁エリザ作画『ホリデイラブ 〜夫婦間恋愛』(講談社)

 ゼネコンに勤めている夫・純平(32歳)が、そこの派遣社員・里奈と不倫しちゃうという筋で、発覚してから派遣社員の女性のダンナ・井筒に純平が怒鳴り上げられ、罵られるシーンがもうね(下図)。心がささくれ立つっつうか。

f:id:kamiyakenkyujo:20180711223221p:image*1


 「この腐りきった汚い男が!!」

というちょっと生真面目な、ストレートすぎる、いやもうちょっとひねろうよ……みたいな不自然なまっすぐさが井筒の酷薄さをよく表現している。


 不倫したら、その怒りの主要な部分がどこに向くか。パートナーに向くか、不倫相手に向くかっていうことだけど、井筒が印象的なのは、不倫相手の純平に向けられるからなんだよね。マンガではけっこう珍しい。

 不倫で壊れる家族のリアルにまで立ち入った、不倫マンガの巨峰・『スイート10』を描いた、こやまゆかりの原作だけあって、不倫がもたらす代償、家族がどう壊れていくかをえぐるように描いていくんだよね。

 えっ? そんなもの見たくない?

 うん。そういう人、少なくないと思うんだけど、他方でそのリアルさが見たいっていう人も多いんだよねえ。例えば「ホラーなんて見たくない」って常識的には思うけど、ああいうものを見たがるのと同じなわけ。


黒沢R『金魚妻』

金魚妻 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) 一つ目の方、不倫のエロさの代表格は、黒沢R『金魚妻』(集英社)だ。

 不倫は、そこで壊れる家庭や夫婦のことを考えなくて、刹那に楽しむことだけできればこんなドキドキするシチュエーションはない。そこだけを短編として見事に切り取る。

 1巻の中にある短編「見舞妻」で、息子の担任教師を車ではねちゃった元ヤン妻が、見舞いに通っているうちに、近くにきて欲しいとか、おっぱいを見せて欲しいとか、小さな要求を「どこまで許されるか?」みたいなゲームをやっているような感覚でお互いにやっているうちにセックスに至ってしまう、っていうだらしなさが、たまらんわ。

 そして何よりもこの作品はグラフィックの美しさ、エロさに魅了される。

 同じく1巻に載っている「弁当妻」は、自分の妻を後輩とセックスさせることで興奮するという、いわゆる「寝取られ(NTR)もの」だけど、この話の肝は何と言っても寝取られる方の妻のショートカットの「健全さ」だと思う。背徳感がいやます。


米代添『あげくの果てのカノン

あげくの果てのカノン 1 (ビッグコミックス) ちょっと珍しい不倫マンガといえば、SF不倫の設定をからめた、米代添『あげくの果てのカノン』(小学館)だろう。

 クラゲに似たエイリアンとたたかう特殊部隊の一員・境宗介は、妻帯者であるにもかかわらず、高校時代からストーカー気味に境を偏愛している主人公・高月かのんと密会するようになる。

 境はエイリアンと戦うたびに身体をひどく損傷するが、“修繕”と呼ばれる再生技術によって元に戻る。しかし“修繕”で身体が変化するたびに嗜好、つまり心も少しずつ変わっていってしまう。

 境の妻・初穂は、境に対して、“修繕”で心変わりが進むのは仕方ないよねと言いながら、「……だけどね、勘違いしないで? そんな一時の感情より、『結婚』の方がね、ずうっと重いの。わかってるわよね…?」と諭し、不倫の連絡道具である境のスマホを静かに味噌汁に浸けるのだった。

 境は、初穂のいうことを「正しい」としつつ、自分の気持ちを「誠実に」初穂に伝える。

「だけどもう…違うんだ。勝手なことを言っているのはわかってる。これがおかしいことも…君を傷つけることも……だから君の正しさにはこたえられない。」

 初穂はそれを聴きながら、「宗介の好きだったところ… 誠実に、真摯に考え、言葉を紡いで、真っすぐにそれを、語りかけてくれるところ…その彼が今、目の前にいる。」と絶望する。

 自分が好きだったはずの「誠実さ」という境の美点が、不倫正当化する道具になっちゃっているのである。

 結婚とは「変わらない」ことであり、不倫とは「変化する」ことである。だが、「変わらない」ことがこの場合は「正しい」かもしれないが、「変わらない」ものなどない。だから、「変化する」ということ、つまり不倫こそが「自然」で「誠実」なものだ――あれ……? なんかおかしくねえか?

 おーい。初穂ー。もしもーし。「キミも好きだけど、あの娘を好きな気持ちもホンモノなんだよ!」って、よくある不倫の陳腐な言い訳だから! それ「誠実」でも「真摯」でもなんでもないから! 


NON『ハレ婚。』

ハレ婚。(1) (ヤングマガジンコミックス) 不倫の話は、バレてしまうスリルや裏切りの背徳のような暗さが必ずつきまとうんだけど、「本妻も愛人もみんなハッピー!」みたいな男の都合良さ全開の作品はないかな……と思っていたら、そうだ、あるじゃん、NON『ハレ婚。』(集英社)。

 とある自治体で一夫多妻のハーレムを認める条例ができたという設定で、一夫三妻のとんでもねー家族を描く。

 主人公の小春ははじめ夫の龍之介が嫌いなのに、お金のために結婚してしまい、本当に好きな感情が湧いてくるまでの数巻は話がちょっとドタバタしている。しかし、小春がいったん龍之介を好きになってからは、なんかすごく幸せな、いい家族みたいな話になってるんですけど!?

 描かれているのは小春と龍之介のセックスなんだけど、一夫多妻の下で全ての男女が最終的には嫉妬や排除をせずに、愛と理解のある関係の中で営まれているから、同じセックスを眺めていても、全然違う風景に見える。もうただのセックスじゃない。そこにあるのは、男の身勝手な欲望も全面肯定なのである。

 そしてやっぱり絵柄がきれいでいやらしい。

 いろいろ都合が良すぎるけど、エロいので許す。


板倉梓『間くんは選べない』

間くんは選べない : 1 (アクションコミックス) 不倫は基本的に既婚者でのことだけど、独身の人たちでのいわゆる「二股」も広い意味で不倫と言える。

 既婚者の不倫の「もう飽きてしまった配偶者vs新鮮な愛人」ではなく、独身者の二股は、「どちらを選んだらいいかわからないくらい迷っちゃう!」というジレンマの物語になる。板倉梓『間くんは選べない』(双葉社)はその典型

 取引先の女性か、女子高生か。

 そんなもん選べって言われても…。二股をやってれば絶対に破局が訪れることはわかっている。だから選ばなくちゃ! って主人公の間くんはいつも思うのに選べない。選べないようにホントにうまく書いている。「うわー、こんなに自分を好いてくれる健気な女子高生、捨てられんやろ…」とか「いや、だからと言ってこんなにキレイな女と別れるわけにはいかん」とか読んでいるぼくらが迷いまくりになる。選べないのだ。

 そして、二股を正当化する主人公の理屈のすごさ。そのコと会ってる時は全力に、誠実に愛しているって…お前…いやいやこれこそ不倫・二股の代表的な言い訳。そのダメさがすごいと思う。

*1こやまゆかり原作・草壁エリザ作画『ホリデイラブ 〜夫婦間恋愛』(講談社1巻、kindle版87/195)

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