キラリ☆ふじみで創る芝居「グランド・フィナーレ」プレビュー公演


2月7日(土)に、富士見市民文化会館キラリ☆ふじみマルチホールで、

キラリ☆ふじみで創る芝居「グランド・フィナーレ
(原作:阿部和重、脚本:岩井秀人、演出:富永まい)

を見た。

この7日は、プレビュー(チラシ表記では、プレヴュー)で、2月10日(火)が初日である。

以下は、あくまでも、プレビュー公演の雑感なので、初日以降に、変更等があるかも知れない。


東武東上線の鶴瀬という駅は、三芳町へ行くには西口からになるが、「グランド・フィナーレ」の会場である富士見市民文化会館は、東口側になる。鶴瀬には思ったより早く着いたので、喫茶店で本を読んで時間をつぶし(読んでいたのは、中川右介「十一代目團十郎と六代目歌右衛門幻冬舎新書で、この本はすでに読了したが大変に面白い)、その後、鶴瀬駅からはタクシーに乗った。タクシー料金は、800円だった。

キラリ☆ふじみに着くと、時刻はまだ開場前で、このお芝居を見るらしいひとがすでに20人くらいはいたし、受付も出てはいたが、本当にここでこれから演劇公演があるのかしら?みたいな閑散としたよそよそしさに気おくれしてしまい、さて、どうしましょ、って感じ(苦笑)。外は夕暮れているし、なんたって、ものが「グランド・フィナーレ」だからなぁ…、大丈夫かな?と思いつつ、10分ぐらいして開場になったので、ドキドキしながら、なかに入る。

入口で、チラシの束といっしょに、配役・出演者のプロフィールなどが載った紙が配布され、プログラムの販売はなし。

原作の文庫本のほか、台本が売られていたので、台本を買う。台本は、上演台本(ただし、観劇後に拾い読みしたら、じっさいのセリフとはちがうところもある)と、それ以前の段階の脚本との合本で一冊になっていて、500円。

おどろいたことに、「グランド・フィナーレ」のチラシは、この台本のブックカバーになるように作られていたのである。こりゃ、すげーや。


7日のマルチホール(http://www.city.fujimi.saitama.jp/culture/seat/multi_seat2.html)は、固定座席だけを使っていて、客席に入ると、一部ブロックの椅子にはロープを張って着席不可にしてあった。チケットの売れ行きによって、開放する座席を調節していたのかも知れない。でもさ、椅子があるのだからどこに座ったっていいじゃないか、けちなことをするなぁ、とも思う。

ついでに書くと、案内係の女性が、なんだか門番みたいで、劇場の係員というスマートさに欠けるのが、いかにもお役所な公共ホールという印象。この案内係さんは、上演中もずっと前方端の座席に待機していたのだが、ごそごそ動いて耳障りな音を頻繁に立てるので、いくら公共ホールとはいえ、劇場の係員としてどんな訓練を受けているのかとの疑問が生じた。


7日は、午後6時開演。上演時間は、約100分(途中休憩なし)。

終演後、5分の間をとって、この日はアフタートークがあり、これが終わったのが8時20分くらいだった。


グランド・フィナーレ」のキャストは、以下のよう。赤字の3人が子役(いずれも小学生の子が演じている)である。

佐藤: 松田洋治
サトウ/サトーズ: 村島智之
山田(佐藤に演出を頼む男)/サトーズ: 夏目慎也(東京デスロック)
小林(佐藤が娘のプレゼントを託した男)/サトーズ: 柏木俊彦
森(東京に住む佐藤の友人 男)/サトーズ: 白神馨之
荒木(東京に住む佐藤の友人 女)/サトーズ: 上田遥
サオリ(佐藤の妻)/サトーズ: 大本淳
デパートガール/サチ/サトーズ: 田中夢(遊園地再生事業団)

あみこ: 竹内萌佳
まやこ: 谷水朋花
ちはる(佐藤の娘): 加成しゅう    



配役を見れば、察しがつくかも知れないが、この芝居の登場人物は、子役を除く全員が、主人公(佐藤)かその分身である。シーンによって、適宜、分身たちが、主人公と関わる他者になって演じ、他者としての出番が終わると、また分身に戻る、といったかたちで進行して行く。

初っ端の、分身・サトーズの登場にはいささか面食らったものの、この手法はなかなか面白い。佐藤の分身たちが、佐藤の心の内を吐露するとともに、佐藤と関わる他者をも兼ねるというやり方は、舞台の上で演じられることを佐藤の内面世界(それは記憶や回想だったり、伝聞や想像も含めて)としてえがくことである。いわば、小説でいう一人称形式を演劇的に立体化して見せているのだ。ファンシーなイメージ(は、たしか原作のなかにあった)のセットや道具なども主人公の内面の視覚化といえるし、子役たちの扮装もしかりであろう。

それでいて、何度か、いかにもリアルなセリフのやりとり(友だちが自殺したという女・荒木との会話などは、とくにそう)が挿入されるので、この劇空間が、主人公の妄想や空想だけではない、救いようのない現実と地続きだという緊張感を呼び起こす。主人公の内面世界と現実とが錯綜するようなシーンは、舞台らしい見ごたえがある。

役名が原作とは異なっていたりはするが、原作のエッセンス、核となるエピソードを、とても上手く舞台化していると思った。また、この芝居は、一部が、本格的ではないが、音楽劇仕立てにもなっている。


後半、というか、台本を見ると終盤になるが・・・佐藤と妻とちはるのシーンで、佐藤を分身のサトウが演じて、セリフ(声)だけ下手で佐藤本人がしゃべるというところがあったが、私には、このシーンがとても印象深い。


子役の3人のうち、竹内萌佳さんが6年生、谷水朋花さんと加成しゅうさんが5年生。

谷水朋花さんは、コピスみよしオリジナルミュージカル「カーソル」
 (→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20070827/p1)
に出演していたとあったので、帰ってからさっそく「カーソル」のプログラムとチラシを確認した。(プログラムのスナップ写真にも写っていた)


終演後のアフタートークは、富永まい×岩井秀人×生田萬の3氏。

普段は大劇場の商業演劇を見ている身には、この芝居の脚本家も演出家も、今回の「グランド・フィナーレ」ではじめて目にする名前だった。もちろん、「ハイバイ」とは何なのかさっぱり知らない。

さすがに生田萬という名前ぐらいは知っていたが、はじめて顔を見た。もっと切れ者ふうな人物かと思っていたので、あまりに普通のおじさんっぽい見た目と、アフタートークでの大ボケぶりには、本当にこの方、演劇人として名を成したひとなのかと、にわかには信じがたい気分がした(稽古場ではどうなのかは、もちろん窺い知れないけれど)。
そもそも、「グランド・フィナーレ」という小説の読み方からして、変だよねぇ。

生田萬氏のインタビューを見つけて読んでみたが、
http://www.wonderlands.jp/interview/007/01.html
キラリ☆ふじみの芸術監督というのは、公募していたのか…。


帰りは、キラリ☆ふじみ発、鶴瀬駅行きの直通バス(170円)が、8時半に出たので、それに乗った。芝居だけ見て帰ったお客さんもいたようで、私もそうしようかな、という誘惑にちょっと駆られたが、夜だし、どこに行けば上手くタクシーを拾えるかも分からないので、土地鑑のない場所で無謀な行動は控えた。


あと2回、観劇の予定。

[追記] 本公演(2/14夜、2/15)観劇後の雑文は、
 →
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20090218/p3

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関連の過去ログ(抜粋)。プレビュー観劇後に、補記、修正あり。
 http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20090205/p3
 http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20081119/p2