放課後は 第二螺旋階段で

モバイルでは下部のカテゴリ一覧を御覧ください。カテゴリタグによる記事分類整理に力を入れています。ネタバレへの配慮等は基本的にありません。筆者の気の向くままに書き連ねアーカイブするクラシックスタイルのなんでもblog。「どうなるもこうなるも、なるようにしかならないのでは?」

あまりにも先進的すぎたイギリス・ネピア社のエンジン

二階建て水平対向24気筒スリーブバルブガソリンエンジン「Sabre」

Napier Sabre - Wikipedia
 ホーカー・タイフーン戦闘爆撃機に搭載されていましたが、初期はトラブル続出の危ないエンジン。
 でも後期になると、これでもちゃんと動いていたらしい・・・スゴイ。

 コンパクトで高効率とはいえ、高精度が必要な部分が極度に多いスリーブバルブエンジンを軍用に使おうなんて、普通は考えない。でもイギリス人は「セイバー」と「セントーラス」の2種類を作って使ってしまう。

18シリンダー対向36ピストン3クランクシャフト三角形ディーゼルエンジン「Deltic」

Napier Deltic - Wikipedia
 魚雷艇向けに開発され、機関車用として使われたとのこと。
 三角形の各頂点にクランクシャフトがついていて、それらの回転が中央の空間を貫通する一本の出力軸にまとめられる作り。断面図は複雑怪奇。
 サイズと重量の割に大出力だったものの、故障時はメーカーに送り返す以外に修理する術が無かったとか。


 透視図アニメーション。
http://www.wis.co.uk/justin/deltic-engine.html


水平対向12気筒2ストロークディーゼルガスタービン複合エンジン「Nomad

Napier Nomad - Wikipedia
 航空用。ありとあらゆる異端を集めて作られたかのような構成。。


空気視点で見ると

  1. 吸気
  2. 12段軸流タービンで圧縮・高圧をかけられる
  3. 水平対向12気筒2ストディーゼルエンジンで燃焼・クランクシャフト回す→プロペラ回して推力発生
  4. 燃焼しながら掃気される*1
  5. 燃焼しながら掃気されたガスが排気タービンを回す。*2この排気タービンは、2の軸流タービンを駆動し、3のクランクシャフトに回転力を戻す*3
  6. 排気されて推力発生


 だいたいこういう流れになっているようです。
 また、離陸等高出力時には、水・メタノール噴射も行われていたとのこと。(これは2と3の間かな?)

  • 軸流タービンで高圧をかけることで吸気・掃気する。
  • シリンダー内で燃焼している途中で排気ポートを開けてしまっても、そのエネルギーはそれより後の排気タービンで拾われ、クランクシャフトに戻されるので、効率的に問題が無い。

こういう理屈で動いているらしいです。

*1:ポート配置・タイミングからするとこうなるらしいです。

*2:このへんが「ガスタービン」なのでしょうか。

*3:これはターボコンパウンドと同じ。

id:REVさんのこのエントリに対するコメントへのコメント

http://d.hatena.ne.jp/REV/20051024#p7
 ここに掲載されている4種類のエンジンのうち、「三角形エンジン」だけは「魚雷艇/機関車用」のようです。一種類だけ違うの混じってて紛らわしかった。。。


最良の魚雷艇用エンジンを作るために
イギリスは、三角形ディーゼルエンジンを作った。
アメリカは、普通のV12エンジン「マーリン」を3つ繋いで疑似36気筒エンジンを作って使った。
ドイツは、ターボシャフトエンジンを試作した。
 もっとも最初に成功したのはアメリカの方法で、その次の世代になるとターボシャフトエンジンになった。



 「対向ピストン」「複動ピストン」「スリーブバルブ」「航空用ディーゼル」等の変わり種エンジンに興味がある方は、以下の本を読んでみると、とても楽しいと思います。(ぼくは図書館で借りて読んだので、今手元に無くさらに詳しいエントリが書けず残念)
20世紀のエンジン史―スリーブバルブと航空ディーゼルの興亡
Amazon.co.jp: 20世紀のエンジン史―スリーブバルブと航空ディーゼルの興亡

後日追記分

 各エンジンのプロフィールを若干詳しいものに変更しましたが、英語が苦手なので思いっきり間違っているかもしれません。その場合は訂正を入れてもらえると非常に助かります。
 Wikiをざっと読んだ具合だと、初めに「ユンカース Jumo 204/205」という「6シリンダー対向12ピストン直列ディーゼルエンジン」が存在し、これが一応ちゃんと動作して、それを真似してイギリスは「三角形エンジン」を作り、ドイツは4つ繋げて「四角形エンジン」を作ったぽい。

さらに後日追記

 上記の「20世紀のエンジン史」を入手しました。「エンジン好きなら読まないと人生損してる」というくらいに面白い。
 時間が十分にあるのなら他にも何冊か本を用意して、エンジンの話だけで2、3週間ほど毎日連載で書きたいなー。