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十七段雑記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2016.8.26 (Fri)

枯野瑛 『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? #02』 (スニーカー文庫)

「正義は、武力を振るっていい理由にならねぇからだ」

すっぱりと切って捨てる。

「その逆。武力を振るう理由を正当化するために掲げられるのが正義だ。

相手を殴りたい理由は必ず別にある。必ずだ。

奪いたいから。貶めたいから。侮りたいから。気に食わないから。消したいから。ストレス解消したいから。あるいはそいつらの組み合わせ」

軽く手を振って、古い詩でも吟じるように、語る。

「しかしそれを認めたくはない。どうせなら、後ろめたい気持ちなどなく、気持ちよく全力で相手をブン殴りたい。

そういう時に、自分や味方を騙すため、正義という名の旗を担ぎ出す。

どいつもこいつも無自覚のままそれをやるから、本気で正義を信じる者同士が互いを全力でブン殴って戦争が起きる。そういうもんなんだよ、昔から」

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クトリ,アイセア,ネフレンの三人が15番浮遊島での〈六番目の獣〉(ティメレ)との決戦に向かって半月.待つ身となったヴィレムは,次代の妖精兵であるティアットを,11番浮遊島へと連れて行く.そこでヴィレムは,決戦敗北の報を受ける.

人類が滅亡して数百年後,唯一生き残った「人間」の教官と,戦うために創造された妖精少女たちの物語.やっぱりタイトルから中身が想像しにくい,硬派なファンタジー.一度滅んだ世界の脆弱さがすごくよく出ているのが良い.空中に浮かび,ちょっと間違えたらあっという間に崩壊しそうな世界.そんな世界において,唯一の人間であるヴィレムの視点がとても良い.自らも不安と疑念に揺れ動かされながらも,元勇者としての,また唯一の大人としての厳しく優しい視点.というか,徹底して大人視点の物語なんだな.世界の状況を知っている大人が語ることで,世界が絶望的であることがより鮮明になっているし,大人の目から見た子供たちは,考えてることがわかりやすかったり,逆にまったく読めなかったりする.とても良いと思います.じっくり続きを追っていきたい.

2016.8.24 (Wed)

日日日 『狂乱家族日記 拾四さつめ』 (ファミ通文庫)

狂乱家族日記 拾四さつめ (ファミ通文庫)

狂乱家族日記 拾四さつめ (ファミ通文庫)

ひたすら、言葉を投げかける。

「きみは、わかってほしいの? わかってほしくないの? 他人に理解されたいから、ぼくらは言葉を並べる。だけど、その言葉が、『わかるわけない』じゃ誰もきみを理解しようと努力なんてしてくれない、拒絶してるのはきみじゃないか!」

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莫大な懸賞金が掛けられた凶華たち狂乱家族に大日本帝国の追手が迫る.千年に渡る「家族」の因縁をめぐる,ラストエピソード突入のシリーズ14巻(21冊め).「家族」であることの意味が結末に直接活かされるのは良いと思う.破壊神SYGNUSSの持つ「自死」の能力と,「家族」の関係がそういう風に結びつくのかー,と.まあしかし,ただでさえ登場人物が多い上に6年ほど積んでいたので,細かいところは何が何やらではあったのだけど.冒頭一章を,ここまでの登場人物ほぼ全員登場した上でほぼまるまるシリーズのおさらいに費やしているのはありがたいけど,なんか変な感じ.「天冥の標」みたいな年表と人物一覧があると良かったかもしれない.

2016.8.22 (Mon)

小川一水 『天冥の標IX ヒトであるヒトとないヒトと PART1』 (ハヤカワ文庫JA)

「俺たちはまだ、大きなことを見落としているよ。それが事態をここまで複雑にしているんだ。ユレイン……君とこういう話ができるのは、はっきり言って心強い。君は誰も知らなかった植民地の実像を、ずっと前から目にしてきた。何か見当はつかないか? この大きな植民地で、今、西暦二八〇四年のこのときに、すべてが始まったみたいな――いや、すべての終わりが始まったみたいな混乱が起きているのは、なぜだろう?」

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カドムたち一行は宇宙船シェパード号に向かって出発する.ホモ・サピエンス《海の一統》(アンチョークス)《恋人たち》(ラバーズ)《救世群》(プラクティス),ダダー,ミスン.サブタイトルにある通り,ここまでで登場したすべてのヒトとヒトでないヒトが集い,おそらく「終わりの始まり」になるのであろう,シリーズ九巻の前篇.結末の予感がありつつも,どことなく語りがユーモラスなのが良い感じ.でこぼこチームのロードムービー・オン・準惑星,みたいな雰囲気がある.さらにここにきて唐突に登場する528億8000万隻(!)の宇宙艦隊や,新たなる宇宙生物に驚く.宇宙ヤバイ,まじでヤバイ,という感じで楽しゅうございました.続きをお待ちしております.

2016.8.16 (Tue)

織守きょうや 『黒野葉月は鳥籠で眠らない』 (講談社)

黒野葉月は鳥籠で眠らない

黒野葉月は鳥籠で眠らない

「ただ、覚えておけばいいよ。絶対に欲しいものが決まっている人間が、どれだけ強くて、」

怖いものかを。

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26歳の新米弁護士・木村が関わることになった,表題作を含む四つの事件を描く連作短編.タイトルからはわかりにくいけど,エンターテイメントとリアルのバランスが取れた,良いリーガルミステリだと思う.ロンドン出身の現役弁護士兼業小説家という作者自身のプロフィールがいちばんリアリティが薄いという.

主人公と,第二の主役とも言える先輩のバックグラウンドがわずかにしか描かれず,大きな物語らしいものがないことと,登場人物が全員揃って非常に頭が良いのが特徴といえるかな.読むひとによって長所にも短所にもなりそうな,独特の雰囲気を持っている.後半のふたつの短編,「三橋春人は花束を捨てない」と,「小田切惣太は永遠を誓わない」が特に良かった.それぞれ,あるどんでん返しが用意されているのだけど,印象が正反対.「絶対に欲しいものが決まっている人間が,どれだけ強くて,怖いものか」という台詞が,この作品全体を貫くテーマ,というか物語だったのかもしれないね,ということを読み終わってから思ったことです.

2016.8.15 (Mon)

ツカサ 『銃皇無尽のファフニール XII ダークネス・ディザスター』 (講談社ラノベ文庫)

『上昇していたバハムート周辺の気温が再び下降――けれどバハムートの体表面温度は上がり続けています。外殻が膨張……いえ、変形して――』

もう間近に迫ったバハムートの異常は俺の目にもはっきりと映っている。

バハムートの体の各所が膨れ、奇妙な突起物がいくつも出現する。

「あれは……角?」

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地球上の四カ所に直径三百キロの黒いドーム――不可知領域が出現した.その中から現れたのは,はるか昔に退けたはずの五番目の災厄,“恒生”のバハムート.熱を喰らうバハムートに対抗するのは,ユグドラシルの記憶から構築された抗体兵器(カウンター・ウエポン)たる“機竜(デウス・ドラゴン)”,マルドゥーク.

今回のテーマは「艦隊戦」とのことで,巨大ドラゴンと戦艦との戦いに多くのページが割かれる.人間対ドラゴン,地球対宇宙,現実対虚構.スケールを変えつつ,異能力とかも使うけれど,なんだかんだと本質は怪獣小説だと思うんだよね.しかし相変わらず,というかいよいよストーリーとハーレムとの乖離が大きくなってきたなあ.ハーレム描写はどんどん取ってつけたようになっていく一方で,女の子はどんどん増えていくこのちぐはぐさは何なんだろう.おすべきポイントがどっかずれている気がしてならない.