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十七段雑記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2017.3.27 (Mon)

赤月カケヤ 『僕の地味な人生がクズ兄貴のせいでエロコメディになっている。 2』 (ガガガ文庫)

「……童貞ってだけで馬鹿にしないでください。体のことをからかうのは、クズのやることですよ」

『クズで上等! だがよ、俺は別に体のことを茶化したわけじゃねえ。包茎とかハゲとか本人がどうしようもないことをからかうのはゲスの所作だ。しかし、童貞は違う! 童貞はあらゆる努力を放棄して自己弁護と自己保身に走った結果だからだ。童貞は個性じゃねえ! 男としての堕落だ!』

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伝説のヤクザである兄の霊に憑かれたことから,地味で根暗な教師の村埜良二の人生は大きく動きはじめた.ある時,学校でも有数の美少女である茜空優妃の秘密を偶然知ってしまった良二は,童貞の分際で彼女の恋愛相談に関わることになる.

日本一の尻を持つ美少女とクソオタ教師のすれ違いの果てにあるもの.ライトノベルGTOという感じのラブコメ第二巻.「伝説のヤクザ」と呼ばれているのに,兄貴が決して万能ではないのはいいと思うのよ.困ったときに現れる女好きのヤクザ兄貴も,見込み違いもあれば失敗もする.根暗で童貞の弟だってちょっとは成長する.そして今回もヤるべきことはちゃんとヤる.「エロコメディ」を名乗っているのは伊達ではない.映像化したものを見てみたい気もするけど,アニメよりは実写向きかもしれない.良いものだと思います.

2017.3.25 (Sat)

枯野瑛 『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? #2』 (スニーカー文庫)

今のティアットの言葉に、嘘はなかった。

どこまでも素直に正直に、彼女は「大嫌い」と口にした。

とても親し気で。

とても好意的で。

とても楽しそうな。そんな、心の底からの「大嫌い」だった。

(僕も――)

思わず、返しそうになる。

(僕も、そんな君のことが大嫌いだよ)

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近づきつつある〈獣〉により,滅びが約束された都市ライエル.フェオドールたちは,町外れの森で,新たに発生した妖精の子供二人を保護した.リンゴ,マシュマロと名付けられた奔放で小さな二人は護翼軍に束の間の穏やかな日々をもたらす.

滅びの近い世界を描く,新シリーズの第二巻.静かに衰退していく街,僅かに見え,そして消えた光.過去の因果がゆっくりと組み合わさっていく,オーソドックスな悲劇を静かに描いている.大きなストーリーを見ればとてもシンプルなんだけど,細部に渡って丁寧な描写がとても良い.ひねくれたところの多いキャラクターたちも本当に良い奴ばかりなんだよな.あまりにも直球なラストも,この丁寧さがあるからこそ,重さを伴ったものになるのだと思う.良いシリーズだと思います.

2017.3.24 (Fri)

北山猛邦 『ダンガンロンパ霧切5』 (星海社FICTIONS)

ダンガンロンパ霧切 5 (星海社FICTIONS)

ダンガンロンパ霧切 5 (星海社FICTIONS)

通常、『アイアンメイデン』といえば、文字通り乙女の姿を模している。形状としては、洋梨にたとえられるだろうか。その中に人が入ると、頭からつま先まで、全身がすっぽり鉄の乙女に包まれることになる。

けれど目の前のそれは、乙女の首から上の部分が存在しなかった。

つまり首なしの『アイアンメイデン』だ

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同時進行する12の密室殺人.犯罪被害者救済委員会による「密室十二宮」の解決編.ついこないだ「ニューダンガンロンパV3」をクリアしたばかりなのでよくわかるのだけど,ストーリーの方は全然関係ないものになっている.トリックの方は,ゲームにトリック協力で参加しているためか,わりとゲームに近いものになっている印象かな.まあ,新本格として好き勝手やっているのではないでしょうか.

2017.3.22 (Wed)

長谷敏司 『ストライクフォール』 (ガガガ文庫)

ストライクフォール (ガガガ文庫)

ストライクフォール (ガガガ文庫)

「これが宇宙か」

角度が変わったせいで、眼下に青い光が見えた。

大気が強い光をゆらめかせ、青い輪郭をぼやかしている。とてつもなく巨大なその球体のことを、彼らはみんなよく知っている。

「地球だ」

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《宇宙の王》を名乗る異邦人がもたらした万能の泥は,地球の歴史を大きく変えた.万能の道具を手にし,戦争を行う意味を失った人類は,擬似戦争としての競技,ストライクフォールをはじめる.

地球近傍を舞台に,ロボット競技のプロリーグにかける青春の物語.16歳でプロリーグデビューを控えた天才の弟と,一歩遅れを取って後を追う兄.読んだひとが揃って『タッチ』だと言ってたのだけど,確かに『タッチ』だった.タッチというかスペースタッチというか,ストレートな物語が長谷先生の独特の文体が妙にハマっている.宇宙でのスピード感やスケールだったり,はじめて軌道上から地球を見た主人公の視点だったり,SFとしての描写はさすが.眩しい.しかし,綺麗に話が終わっているので,ここからどう続けるのかが気になるところ.二巻も買ってあるのでゆっくり読ませていただきます.

2017.3.20 (Mon)

五月猫文 『かくて飛竜は涙を流す The Dragons' Tear』 (講談社ラノベ文庫)

「『惑星の声』ちゅうのは、そう、竜の声と同じ『波動』なんだけど、また違った特徴を持っている。なんというか、ものすごく大規模な雑音(ノイズ)、と言うのが良いかねぇ。この星のどこにいても混ざってくる雑音で、あたかも惑星自体が声を出し続けているようだ、ということでこの名前になった」

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帝国と連邦の間の戦争は終わった.帝国空軍のエースガンナーだったソウタ・カシワギは,連邦の竜騎兵を撃てなかった処分として除隊されることになった.船長と竜騎兵の少女シノに誘われたソウタは,ひとに害をなす竜を退治する〈ドラゴンスレイヤー〉の船に射手として同行することにする.

第5回講談社ラノベ文庫新人賞大賞受賞作.連邦と帝国,その二国に挟まれた公国の戦争と,この世界に存在する飛竜を描くファンタジー.導入のテキストが妙にぎこちなくて不安になったのだけど,飛竜の運用や,戦闘機と飛竜の連携といった描写に差し掛かると,俄然テキストが饒舌になってすらすら読めるようになる.オタクの早口を見ているようというとあれだけど,書きたいことがとてもはっきりしているのは好感が持てる.

資源というはっきりした目的のある戦争に飛竜を絡めた世界は画期的とは言わないけれど,とても丁寧に描いていると思う.竜神,〈黒の竜〉(ノワール),惑星の声といった神秘的なあれこれだったり,逆に飛竜のかわいさだったり.派手さはないけど,ひとつひとつをしっかり,とにかく堅実に描いている印象.それでいて読みやすく,なんだかんだと一気に読んでしまった.良い作品だったと思います.