田口仙年堂 『吉永さん家のガーゴイル2』 (ファミ通文庫)

奇矯なキャラクターを除けば基本はベタな人情ものになるんだろうけど,キャラクターからなにから丁寧に描いていて好感を持てる.しかし百色や梨々,ガーゴイルを差し置いてこの巻でいちばん泣けたのはハミルトンの最後の言葉だったりする.(この巻の)黒幕で同情する余地のぜんぜん無いおっさんが負けて,スカッとする筈の場面なのに.使い古された陳腐な台詞に,単なる台詞のひとつに留まらない重みが宿っていた.良かった.

  • 『ゲーセンUSA ミッドウェイアーケードトレジャーズ』 サクセス ASIN:B000GGFB0M

もともとアメリカで発売されたソフトをメニューのみローカライズしたらしい.収録作品1本1本についてはローカライズされてないのな.折角『PIT FIGHTER』が収録されているのに.マニュアルも味気ない.テンゲンカンバーック.まあ仕方ないか.PS2のコントローラだと『GAUNTLET』が激しく遊びにくい.『PAPERBOY』は初めて触れたけど楽しいね.

穂史賀雅也 『暗闇にヤギを探して』 (MF文庫J)

暗闇にヤギを探して (MF文庫J)

暗闇にヤギを探して (MF文庫J)

第2回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞受賞作.
んー,なんか不思議な雰囲気のあるひとだなぁ.ヤギ,着ぐるみ,風車,白い猫といった一貫性の無い舞台装置に一定以上の理屈をつけず,淡々と物語を描いているのが良い方向にはたらいているのかしら.主人公・ヒロイン・サブヒロインと出てくるキャラクターの行動までも一貫性が無いのはどうみてもマイナスな筈なのに,その舞台の上にあることで地に足つかないふわふわした雰囲気作りに一役買っているように思えた.単にキャラ作りに失敗しているだけで,私が変な風に感情移入して勘違いしているだけの可能性も高いけど,そのときは誤読の自由ってやつでひとつ嘲って流してくれれば.ただラストのぶった切り方はなぁ.
自信を持って薦められるような作品では無いし,手放しで面白いとも好きだとも言えないのだけど,今後も注目したい作家だと思う.この作風が本物なのか,見極めたい.