神林長平 『時間蝕』 (ハヤカワ文庫JA)

時間蝕 (ハヤカワ文庫JA)

時間蝕 (ハヤカワ文庫JA)

中編四編を収録した作品集.アイデアはいま読むと多少古めかしく,重い空気と暗い未来像が支配的で,そういう意味ではあまり楽しい作品集ではない.書かれた時期が時期なだけに仕方ないね.冷凍睡眠で永久逃亡する犯罪者とそれを追う永久刑事の「時間」の話「渇眠」酸性雨はタイトルそのまま,酸性雨に煙りコンピュータに統制される街の事件簿.「兎の夢」はパソコンに自分をそのまま吹き込むアイデアも消化不良に見えてしまう.初出が SFイズムかあ.「ここにいるよ」は再読だったけどこのなかではいちばん良かったかな.風変わりな子どもとある星の生命体の別れ.時制の云々があっさり気味なのが多少勿体無いような気がしないでもない.