菅沼誠也 『タイム・スコップ!』 (一迅社文庫)

タイム・スコップ! (一迅社文庫 す 2-1)

タイム・スコップ! (一迅社文庫 す 2-1)

「風が吹けば桶屋は儲かる。一見関係のないようなことが思いも寄らない結果を生むんだよ。たとえばヒトラーの早すぎる死がコーラをソフトドラッグ飲料にすることだって、まあありえないとは言い切れないんじゃないかな」

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不慮の事故によって時間をスコップで「掘る」能力を身につけてしまった女子高生・空堀すずめの奇妙な時間旅行.スラップスティックなバイオ SF でデビューした作者の第二作はやりたい放題の時間 SF.
むちゃくちゃ楽しかったー.あまりに楽しくてひょっとしてこの本は俺のために書かれたんじゃないかと錯覚した.冒頭でヒトラーをあっさりすわ,フランケンシュタインの怪物に○○させるわと,時間・歴史改変にしてもムチャでアホ極まることを,分かりやすい解説と共にさらりとやってのけており,きちんと時間改変 SF していてしかも上手いという.時間 SF には付きものの過ぎ去った時間/やってこなかった時間/もう戻ることのできない「時間」を想う気持ちもしっとりと織り込んでいて,スコップとヘルメットにもきちんと意味を持たせているあたり,よく分かっていると感心することしきり.随所にこれまたしつこいくらいのオタネタを散りばめているのにクドくなりすぎないテキストもいい感じ.分かればニヤリと,分からなければ分からないでそれなりに.理屈と感情とオタネタと,いずれにも偏らないバランスがすげー良かった.
てことで重ねて書くけどむちゃくちゃ楽しかった.次の作品も首を長くしてお待ち申しております.