小川一水 『天冥の標 I メニー・メニー・シープ』 (ハヤカワ文庫JA)

「できることはあったし、今からでもある。僕らは行動しなきゃいけない。泣いたり悔やんだりするのは今やることじゃない」
「……お前、強くなったな」
「まあ、とっくに泣いたんだけどね」

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西暦 2803 年,惑星ハーブ C に作られた植民地メニー・メニー・シープは入植から間もなく 300 周年を迎えようとしていた.しかし臨時総督ユレイン三世は植民船シェパード号の発電炉不調を理由に植民地全域に配電制限などの弾圧を加え,不穏な空気が濃くなりつつあった.そんなある日.セナーセー市に原因不明の謎の疫病が流行しているという報せが医師のカドムのもとに届く.
全 10 巻刊行予定の「天冥の標」導入巻.緩やかな衰退に向かいつつあるらしい植民惑星の上.メニー・メニー・シープに住まう人類,異生物,アンドロイド.希望を捨てないすべての人々が協力し,様々な困難に遭いながら一丸となって難局を乗り越えてゆく.という小川一水らしい話で締めるかと思いきや,ラストで「ちょ、おいィ!?」となった.私って読者の鑑じゃね.表層的な流れの裏に大小いくつもの謎を思わせぶりに隠して進む物語は現状まったく底が知れない.1/10 だから当たり前っちゃ当たり前だが.壮大さと地に足ついた生活感(って言い方でいいのか)が両立した申し分のないプロローグだと思う.完結は先だろうけど期待も高まる.刊行済みの 2 巻もなるたけ早く読みたいと思います.